ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と少数精鋭

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 御岳さんの話を引き継ぐように茜さんがソファの後ろから軽く手を伸ばした。

「襲われた奴から話した方が良いだろ?」

「そうだな。頼んだ」

 頷いた御岳さんに、茜さんは話を始めた。

「私と瑞樹と黒崎が歩いてる時に襲われてな。恐らくかなりヤバい相手だった。一か八か人払いの結界の破壊に全力をかけてなかったら、お陀仏だったと思うぜ」

「多分、不確定要素の光ちゃんと凄く強い御岳さんが居ない瞬間を狙って、先ずは私達から一網打尽にしようとしてたんだと思う。人払いの結界が割れたら直ぐに逃げて行ったし、結構慎重な相手みたい……」

「アイツらはヤバい。二度と会いたくないわ。絶対殺しばっかりやってる奴らだってアレ」

 実際に襲われたらしい三人がそう反応する。茜さんがそんなに言うってことは、実際めっちゃ強いんだろうなぁ。でも、白昼堂々襲ってきたりはしないような相手ではありそうだね。襲われる状況が限られてるって考えれば対策の仕様はありそうな気もする。

「ふむ……情報が無さ過ぎますな。今のところは、五人程度で慎重な相手というくらいしか。それと、殺しには慣れていそうという程度ですかな」

「あー、もうちょい具体的に話すか。まぁ、先ずは……擬装の魔術を破られたことだな」

「ん、逆に今までは破られたことなかったの? 何回も襲われて来たんでしょ?」

 僕の言葉に茜さんは首を振る。

「確かに、今までは何かしらのミスや理由があって擬装の魔術を破られることはあったぜ? だが、単純に相手の力量で破られたことは無かったんだよ。つまり、擬装の魔術をかけて外を歩くのも既に安全じゃなくなっちまったって訳だな」

 茜さんはそう言うと、小さく息を吐いた。

「ぶっちゃけ、一番厄介なのはそれだ。戦えば負けるなんて話よりも、安全だと思ってた道が全部真っ暗になっちまう方が嫌に決まってるだろ?」

「まぁ、確かに……」

 戦えば負けるなんてのは、戦わなければ良いだけではあるかもだしね。それよりも日常全体に大きなリスクがかかってる方が精神的な負担は大きいだろう。

「それと、奴らの戦力だが……数は私達と戦った時は五人に見えた。予備戦力だかが居るかは知らんが、黒崎の気配察知によればあの時は五人だけだったらしい」

「俺の感知より上の隠形を持ってたら知らないけどね。ただ、どっちにしても隠密の技術には長けてそう。戦闘が始まるまでは俺も全然気付けなかったし、人払いの結界も起動するまで気付けなかった」

「うん、いきなり結界に囲まれて……正面から向かって来る人達の方を見たら、幻影だったんだよ」

「アレは黒崎が気付かないとヤバかったかも知れねぇな……」

 幻影……? 幻術とか使って来る相手なんだ。結構、特殊な感じだね。

「それと、転移っぽい術を使って来る奴も居たかな。アレが一番ヒヤッとしたけど、茜が何とかしてくれたから助かった」

「嫌な予感がしたんだよ。それと、転移は転移先に魔術の気配が見えるからな。同時に魔力の弾丸で狙撃されてたから、それで注意を逸らそうって腹だったんだろうが」

「なんにしても、あのまま戦い続けてたら死んでたよね……人払いの結界を壊すって発想が浮かんでなかったらと思うと、ゾッとするよ……」

 瑞樹さんがそう言って身を震わせた。その場面を見てないから現実味が湧かないけど、確かに死の危機を感じるような襲撃だったらしい。もし、判断を誤って居たら……もう、僕は彼らと話すことも出来なかったんだろう。

 そうなっていたら、僕は彼らを蘇生しただろうか。今の僕の考えでは、しないつもりだ。けど、その時になったら……やっぱり、分からないよね。

「……けどまぁ、このくらいだな分かってる情報は」

「幻術使いに、結界を張れる人に、狙撃に、転移に……中々に、バリエーション豊かな相手だね」

「華はねぇけどな。どでかい炎の弾でも撃って来る方が分かりやすくて楽なんだが」

「まぁでも、あんまり暗殺者っぽくはないね……」

 僕が小さく返すと、安堂さんが手を上げた。

「相手の痕跡は残っておりませんでしたか?」

「あぁ、その話を忘れてたな。一切無かったぜ。完璧に隠蔽されてたって感じだな。影堕ちの奴らの適当さを見習った方が良いんじゃねえか、アイツら」

 逆に、影堕ちの徒の方は雑なんだね。それとも、管理局が味方と分かっているから気にしていないだけだろうか。

「……でも、そのくらいなら何とかなりそうね。私達に任せておきなさい」

「そこは力を合わせましょう、だろ? 私らだって魔術士だぜ、あんまり舐めんなよ」

 にやりと笑って炎の鞭を展開すると、紫苑ちゃんは直ぐにそちらに飛びついて行った。茜さんは慌てて炎の鞭をリングに変えてポケットに隠し、紫苑ちゃんから逃げ始めた。

「……治、だったな?」

「へ、はい」

 間の抜けた返事になってしまったが、御岳さんは構わず続けた。

「まだ、こいつらを操ってる敵の司令塔……イギリスから送られて来た奴の正体は、いまいち分かってない。戦闘能力の無い奴って可能性も無くは無いだろうが……まぁ、あの吸血鬼で失敗した以上は、魔術師マジックメーカーが送られて来てるだろうな」

 御岳さんは険しい表情を浮かべて、そう言った。
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