ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能とご学友

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 黒崎さんは少し悩んだ末に口を開いた。

「うーん、問題に行き詰まってる人に答えだけ教えても成長しないみたいなこと?」

「まぁ、それに近いね……例えば、貧困に喘いでる人に食べ物だけをそのまま渡したって一時的な解決にしかならない、みたいな」

 でも、井戸を作って畑を作ってあげたらそれで良いのかって話でもあるし。根本的な知識を教えないと、一番大事なところは停滞したまんまなんじゃないか、とか。例えそこの人達が恵まれることを望んでいたとしても、ただ堕落させるようなやり方は避けるのが恵む側の責任なんじゃないかと思う。

「難しいけど……やっぱり、その人とか状況に合わせてやるしかない、気がする。あんまり、答えになってない気もするけど。でも、焦っていきなり答えを教えるだけって言うのは間違ってると思う」

「そう、かな……」

 状況としては、ただ勉強が分からないんじゃなくて。明日提出の宿題が解けなくて行き詰まってるようなものだ。緊急性はあるし、僕がその立場なら何でも良いからさっさと答えを教えてくれよって思うと思う。だけど、僕は全知全能だ。絶対に提出期限には間に合うように問題の解き方を丁寧に教えることも出来る訳だ。ただ、それは困ってる相手の不安とかの感情を無視してまで優先するべきことなのかって話でもある。
 僕は人間だけど、人並みに生きようとすることの方が神様らしくするより傲慢なんじゃないのかって思うことがある。これも、そうなんじゃないだろうか。

「答えだけ教えるのは甘さで、成長を促すのは優しさだって思うかな。勿論、甘やかされる方が楽で良いって人も沢山居ると思うし……私も結構楽しちゃう方だけどね」

「それでも、甘さより優しさを取る方が良いと思う? 相手が楽したがってても?」

「うん。私はそう思う。教える側も、甘やかす方が楽だしね。でも、相手に嫌がられても相手の為を思ってちゃんと教えるって方が本当の優しさだし、格好良くない? だから、先生とかって凄いと思うよ。嫌がられたり面倒臭がられたりしても、適当にやらずに丁寧に教えてくれるんだし」

「……確かに」

 黒崎さんは先生とかと仲良くなって色々話してる印象があるけど、そういう考えがあったんだ。僕も割と教えて貰ってるのに面倒臭がってしまうところがあったから、改めないとね。

「ありがとう、参考になったよ」

「ふふ、本当? なら良かったけど」

 黒崎さんは教室に着くと、手を振って自分の席に軽い足取りで歩いて行った。僕はぐるぐると黒崎さんとの話をリフレインしながら、とぼとぼ歩いて席に着き、通学用の鞄を机の横に掛けた。

「よう」

「あ、善斗。おはよう。今日も早いね」

「元運動部だからな」

「関係あるかなぁ……?」

 別に、今は帰宅部じゃんか。合気道習ってるから、僕とは一味違うけどさ。でも、最近の僕の放課後の運動量は前の数倍は余裕であると思う。善斗にも負けてないかも知れない。

「それに、最近は体の調子が……こう、どうにも良いんだよ。だから、朝起きて軽く運動してから登校するようにしてる。前みたいに不良に囲まれても、今ならお前を抱えて走れるかもな?」

「あー……良かったね?」

 そうか。そうだった。不良達に絡まれてる女の子を善斗が助けに行った時、僕がエーテル体を一時的に解放したんだった。あの時は威圧感を出させる為だったから、直ぐに元に戻したのに……今も、エーテル体が半分解放されてるような状態になっている。一回解放したから、その感覚を何となく覚えたのかも知れない。若しくは、一度解放したせいで開きやすくなってしまったか。
 とは言え、ちゃんとした運用の仕方を知らなければ異常な身体能力を手にしたりなんてことは無い。体調が良くなって、病気もしづらくなるくらいのものである。多少、身体能力も上がりはするだろうけど……まぁ、うん。気にしなくても良いね。エーテル体だけなら魔術的知識が無くても開いたりすることあるらしいから。

「後は、暇があれば最近は瞑想してるな……なんか、こう……あの日から、なんていうんだ……? その、精神が研ぎ澄まされたみたいな感じがするんだよ」

「へ、へぇ……そっかぁ」

 大丈夫。大丈夫な筈だ。今のところ、見ても特に問題無いし。別に瞑想くらいする人は沢山居るから。全然、モーマンタイだ。うん。多分ね。

「意外と気持ち良いぞ。お前もやったらどうだ? ていうか、最近そう言うのをやってたんだったか?」

「あ、あぁ、うん。僕も、授業と授業の合間に瞑想みたいなことしてるね。うん、偶に……」

 僕は顔を窓の方に向けて視線を逸らした。けど、女友達と話している黒崎さんが目に入って思わず見てしまう。

「……そういえば、黒崎と仲良くなったのか? 最近は良く話してるよな」

 それに気付いたのか、善斗が僕の方を見てそう問いかけて来た。

「へ? まぁ、そうだね……あんまり僕から話しかける勇気は無いけどさ」

「……そうか」

 意味ありげに頷いた善斗に、僕は慌てて首を振った。

「別に、好きとかじゃないからね? その、向こうの気まぐれで話しかけられてるってだけだから」

「ハハッ、そうか」

 おい、その笑いなんだよ。ニヤついてんじゃねえよ。いや、本当に違うからね!? 僕、そういうのあんまり分からずに育って来た人間だからさぁ!!
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