ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と購買

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 授業を乗り越え、昼休みになった僕は購買に向かっていた。別に、僕はいつも友達と食べている訳ではない。一人で居るのも結構好きだし、絵空に関しては大体は弁当を持たされてるから一緒に食べることはそこまで無いしね。

「あぃざす……」

 僕は呪文を唱えながらその場をそそくさと去って行く。購買はいつも沢山の人が並んでいるので、さっさと消えなければならないのだ。丁寧な挨拶をしている暇はない。ユモンの分のパンも買った僕は、購買の近くにある自販機で飲み物を買い、目的地に向けて進み始めた。

「ふん、ふんふん……」

 僕は気持ちよく鼻歌を歌いながら廊下を歩き、それから階段を上って行った。

「あれ、宇尾根? 機嫌良さそうだね」

「んんっ、黒崎さん?」

 僕は思わぬ遭遇に咳き込み、その可憐な顔を覗いた。やっぱり、モデルとか出来たりするのかな。僕のへぼい美的感覚じゃあ、可愛いということは分かってもどのくらいとかまでは判断が付かない。

「すごい、じっと見るじゃん。どういう?」

「あ、あはは、いや、こんなところで会うとはねって言う……」

 しまった。油断していた。なまじ緊張することが減ったせいで、穴の開きそうな視線を送ってしまったかも知れない。

「こんなところって言うほどの場所じゃないと思うけど……なに、見惚れた?」

 冗談めかして笑う黒崎さんに、最早僕も笑うしかなかった。もしかしたら、黒崎さんなりの助け舟だったのかも知れない。

「それで……どしたの? なんでパン持って上行ってるの? 教室で食べない感じ?」

「あー、うん。教室だと人多いし、上になんかベンチみたいなのあるじゃん。あそこで食べようかなって」

 開かずの場所である筈の屋上で食べようとしているなんて言える訳も無く、僕は何とかそう誤魔化すことが出来た。四階にはなんちゃらホールみたいな視聴覚室のでっかい版みたいな奴があるからか、その前の廊下には謎のベンチが数台設置してあるのだ。
 あんまり人が座ってるところは見ないけど、窓から見える景色はそれなりに見晴らしが良くて気分が良いので僕は何回か座ったことがある。

「ふーん、確かにあそこで座って食べるの良さそうかも……」

 黒崎さんはこくこくと頷き、こちらをじっと見た。

「……えっと、どうしたの?」

「ね、私もそこで食べて良い?」

 半ば予想していた言葉がそのままやって来たことで、僕は若干絶望した。見るからに気分屋な黒崎さんのことだから、あそこの謎ベンチでの昼ご飯を想像して自分もそこで食べたくなったんだろう。

「うん、まぁ、そりゃ良いけど……僕だけのベンチじゃないしね。うん。自由だから」

「あっそう? じゃあ、折角だし購買にご飯買いに行くのも付いて来てよ。良い?」

 ぐぬ、この流れで嫌とは流石に言えない……これが、フットインザドアテクニックって奴か。違うか。そうだとしても、黒崎さんはそんなの考えてやってないだろう。黒崎さんは気分屋だけど腹黒いタイプじゃ……いや、案外計算高いタイプだったりするのかな。

「勿論、良いよっ!」

「そ、そっか。ありがと……」

 僕は笑顔で快諾のサムズアップをして、黒崎さんを引かせることに成功した。理由は、黒崎さんの思惑通りに行ってる感じがしてムカついたからである。

「宇尾根って、意外とそういうロケーションとか拘るんだね」

「ん、まぁ、どっちかと言うとね……」

 木人達が生まれる前は、神樹の上でサンドイッチを食べたりするなんてことも良くやってたしね。澄み切った空に浮かぶ星の群れを眺めながらの食事は最高である。

「んー、何食べようかなぁ……あ、私もそれにしよっかな?」

「こっち? 食べたことないの?」

 ピザポテトパンの方を指差されたのでそう聞くと、黒崎さんはこくりと頷いた。

「割と美味しいよ」

「ふーん。じゃ、楽しみにしとこー」

 暖かくないのは少し残念だけど、それでも結構美味しい。僕としては、こっちの塩バターパンの方がおススメではあるんだけど。

『変な場所だな、高校っつーのは』

『ん? まぁ、ユモンの居た世界から見ればそうかもね』

『あぁ。なんつーか、ここで一つの国みたいな雰囲気だぜ』

『確かにね』

 社会の構造を学ぶ為にこういう場所になってるのかも知れない。

『ところで、オレ様はいつになったらそのパンにありつけるんだよ?』

「……あ」

「ん、どうしたの?」

 屋上で食べれないってことは……ユモンに食べさせられないじゃん。そもそも、人が隣に居る状態だし。どうしよう。

「い、いや、何でも無いよ……」

『おいッ! どうすんだよ、お前?』

『だって、しょうがないじゃん! 大丈夫、帰りになんか買うから!』

『コンビニ以上なッ!』

 こいつ、お高く留まりやがって……!

「宇尾根、なんか顔が険しいけど?」

「んっ、何でも無いよ」

 僕がにこりと笑って爽やかにそう返すと、黒崎さんは微妙そうな目でこちらを見ていた。
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