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全知全能と処置
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地面に倒れ伏して、気を失った安堂さんの横で、満足気に笑みを浮かべるユモン。しかし、結界の外では沈黙が満ちていた。
「……負けた。安堂が」
「驚きました、ね……」
唖然とする紫苑ちゃんと、朝熊さん。その二人の様子を気にもせず、ユモンはコンコンと黒色の結界を叩いた。
「おーい、もう出て良いのか? コレ……」
返事の無い二人に、ユモンは仕方なさげに首を振るとぬるりと結界から出て来た。
「あ、貴方……何なの?」
「何って、お前には説明した筈だぜ?」
そっか、紫苑ちゃんには悪魔って話してたよね。
「そう、だけど……ていうか、どうやって私の結界を抜けて来たのよ!?」
「普通にだよ」
「普通にってなに!?」
「結界の構造が分かりゃ、抜けるくらい余裕だぜ? この結界も別に閉じ込めたいって意図の奴じゃねぇだろ? 鍵のかかってない扉くらい開けれんだろうが」
紫苑ちゃんはむむむと唸り……そして、横たわる安堂さんの方をちらりと見ると慌てたようにそちらに駆け寄って行った。
「と、取り敢えず手当てするわよっ! 朝熊ッ!」
「……承知しました」
結界を解除し、安堂さんの方に走って言った二人を横目に僕はユモンの腕を突いた。
「やっぱり、強いじゃんか」
「んぁ? 当たり前だろ」
ユモンはこちらを見ると、何でもないようにそう返した。
「オレ様は向こうでも名の知れた悪魔だったんだぜェ……お前には兎も角、こっちの人間には今んとこ負けるつもりはねぇよ」
「僕だって、普通に戦ったら余裕負けすると思うけどなぁ……」
「普通に戦うって何だよ。普通以外の戦い方があんのかよ」
「そりゃあれだよ、不思議パワーだよ」
僕が言うと、ユモンは胡散臭そうに眉を顰めた。
「出たよ、それ……マジで何なんだよ」
「不思議なパワーだよ」
ユモンは溜息を吐いて、安堂さんの方を見た。意外にも手当ては直ぐに済んでいそうで、もう安堂さんは起き上がっていた。
「意外と怪我とかしてないのかな?」
「模擬戦だぜ? オレ様だって、傷は残さないくらいの配慮は出来るってもんだ」
「……手刀で気絶させてたしね」
「あァ、でもアレも下手な奴がやったら普通に死なせることあるからな。普通に首を強い力でぶっ叩いてんだからよぉ」
た、確かに……めっちゃ怖いじゃん。僕もちょっと憧れてたけど、絶対に止めておこう。
「ただまぁ、オレ様が怪我させる以前に自分から身を危険に晒しちゃ居たけどな。あの、金属を呑み込んだ奴は……まぁ放っておくと体に悪ぃな」
「体に悪いとかで済むんだ……」
「まぁ、ある程度は回収出来るからな。ちゃんと処置できなかった場合だと、繰り返す度に体調が悪化して行って最後には死ぬって感じだろ」
「全然怖いじゃんそれ……」
体に悪いの範疇じゃないだろうが。
「まぁ、メリットも無くはないと思うぜ。多分、能力自体は少しずつ上がるからな」
「そんな命懸けで強くなる必要がある世界じゃないと思うよ。こっちの世界は……」
ある程度強ければ、寧ろ戦いを避けて生きていくことも出来ると思うし。それは向こうの世界でも同じかも知れないけど……いや、魔王が攻めて来るって考えると誰しもがいつかは避けられない戦いをすることになるのかなぁ。
「ほら、処置は終わったわよ」
「あ、お疲れ。安堂さんも大丈夫ですか?」
「えぇ、お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございません」
「いやいや、めっちゃ見応えありましたよ!」
僕が言うと、安堂さんは苦笑して首を振った。
「手加減して頂いていたというのは、分かっておりますので……一撃分だけ、花を譲って貰いましたよ」
「あァ、アレは痛かったな。久しぶりに痛みを感じられたぜェ、マジで」
「そうでございますか……それであれば、光栄ですな」
「ハハッ、楽しかったぜェ」
まぁ、久しぶりの痛みだったのは長き時を魔術書の中で過ごしてたからだろうけどね。痛みどころか何も感じられずに封印されて過ごしてただろうし。
「……はぁ、まさか負けるとは思わなかったわ」
「申し訳ございません……」
「仕方ないわよ。それに、まだ安堂には本気のモードがあるでしょ?」
「いえ、それでも勝てるかどうか……寧ろ、十中八九負けるかと」
紫苑ちゃんはむっと顔を顰めた。
「じゃあ、本気の本気は!」
「アレは実戦段階にすら至っておりませんので……」
安堂さんはそう言いながら、ちらりとこちらに視線を向けた。それに気付いた紫苑ちゃんは口を噤み、溜息を吐いた。
「……と、客人の前でする話じゃなかったわね。先ずは食事の準備と行きましょう」
「お、あのハンバーグだな!? つか、デザートも付けるって言ってたよなァ!?」
「言ったわよ。治も食べるわよね?」
「え、うん。食べます食べます」
高級ハンバーグの誘惑に、僕は迷うこと無くこくこくと頷いた。一応、今日は先に遅くなるかもと伝えて来たので家の晩御飯の心配はない。存分に頂かせて貰おうか。
「……負けた。安堂が」
「驚きました、ね……」
唖然とする紫苑ちゃんと、朝熊さん。その二人の様子を気にもせず、ユモンはコンコンと黒色の結界を叩いた。
「おーい、もう出て良いのか? コレ……」
返事の無い二人に、ユモンは仕方なさげに首を振るとぬるりと結界から出て来た。
「あ、貴方……何なの?」
「何って、お前には説明した筈だぜ?」
そっか、紫苑ちゃんには悪魔って話してたよね。
「そう、だけど……ていうか、どうやって私の結界を抜けて来たのよ!?」
「普通にだよ」
「普通にってなに!?」
「結界の構造が分かりゃ、抜けるくらい余裕だぜ? この結界も別に閉じ込めたいって意図の奴じゃねぇだろ? 鍵のかかってない扉くらい開けれんだろうが」
紫苑ちゃんはむむむと唸り……そして、横たわる安堂さんの方をちらりと見ると慌てたようにそちらに駆け寄って行った。
「と、取り敢えず手当てするわよっ! 朝熊ッ!」
「……承知しました」
結界を解除し、安堂さんの方に走って言った二人を横目に僕はユモンの腕を突いた。
「やっぱり、強いじゃんか」
「んぁ? 当たり前だろ」
ユモンはこちらを見ると、何でもないようにそう返した。
「オレ様は向こうでも名の知れた悪魔だったんだぜェ……お前には兎も角、こっちの人間には今んとこ負けるつもりはねぇよ」
「僕だって、普通に戦ったら余裕負けすると思うけどなぁ……」
「普通に戦うって何だよ。普通以外の戦い方があんのかよ」
「そりゃあれだよ、不思議パワーだよ」
僕が言うと、ユモンは胡散臭そうに眉を顰めた。
「出たよ、それ……マジで何なんだよ」
「不思議なパワーだよ」
ユモンは溜息を吐いて、安堂さんの方を見た。意外にも手当ては直ぐに済んでいそうで、もう安堂さんは起き上がっていた。
「意外と怪我とかしてないのかな?」
「模擬戦だぜ? オレ様だって、傷は残さないくらいの配慮は出来るってもんだ」
「……手刀で気絶させてたしね」
「あァ、でもアレも下手な奴がやったら普通に死なせることあるからな。普通に首を強い力でぶっ叩いてんだからよぉ」
た、確かに……めっちゃ怖いじゃん。僕もちょっと憧れてたけど、絶対に止めておこう。
「ただまぁ、オレ様が怪我させる以前に自分から身を危険に晒しちゃ居たけどな。あの、金属を呑み込んだ奴は……まぁ放っておくと体に悪ぃな」
「体に悪いとかで済むんだ……」
「まぁ、ある程度は回収出来るからな。ちゃんと処置できなかった場合だと、繰り返す度に体調が悪化して行って最後には死ぬって感じだろ」
「全然怖いじゃんそれ……」
体に悪いの範疇じゃないだろうが。
「まぁ、メリットも無くはないと思うぜ。多分、能力自体は少しずつ上がるからな」
「そんな命懸けで強くなる必要がある世界じゃないと思うよ。こっちの世界は……」
ある程度強ければ、寧ろ戦いを避けて生きていくことも出来ると思うし。それは向こうの世界でも同じかも知れないけど……いや、魔王が攻めて来るって考えると誰しもがいつかは避けられない戦いをすることになるのかなぁ。
「ほら、処置は終わったわよ」
「あ、お疲れ。安堂さんも大丈夫ですか?」
「えぇ、お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございません」
「いやいや、めっちゃ見応えありましたよ!」
僕が言うと、安堂さんは苦笑して首を振った。
「手加減して頂いていたというのは、分かっておりますので……一撃分だけ、花を譲って貰いましたよ」
「あァ、アレは痛かったな。久しぶりに痛みを感じられたぜェ、マジで」
「そうでございますか……それであれば、光栄ですな」
「ハハッ、楽しかったぜェ」
まぁ、久しぶりの痛みだったのは長き時を魔術書の中で過ごしてたからだろうけどね。痛みどころか何も感じられずに封印されて過ごしてただろうし。
「……はぁ、まさか負けるとは思わなかったわ」
「申し訳ございません……」
「仕方ないわよ。それに、まだ安堂には本気のモードがあるでしょ?」
「いえ、それでも勝てるかどうか……寧ろ、十中八九負けるかと」
紫苑ちゃんはむっと顔を顰めた。
「じゃあ、本気の本気は!」
「アレは実戦段階にすら至っておりませんので……」
安堂さんはそう言いながら、ちらりとこちらに視線を向けた。それに気付いた紫苑ちゃんは口を噤み、溜息を吐いた。
「……と、客人の前でする話じゃなかったわね。先ずは食事の準備と行きましょう」
「お、あのハンバーグだな!? つか、デザートも付けるって言ってたよなァ!?」
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「え、うん。食べます食べます」
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