ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と心配事

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 そうして寅嶋さんの忠告を受けた僕は、教室に戻って周りから何の呼び出しかと問い詰められたり、寝ててワロタと馬鹿にされつつも再びの眠りに就いた。

『呑気に寝てんのは良いけどよ、また襲われんじゃねぇのかよ』

『良いんだよ。正門から出て帰るから』

『それで今日は助かるかも知れねぇけどな……そもそも、正門の方にも監視を置いてる可能性も全然あるぜ? 穏便に済ませたきゃ、アイツの言った通りに警察でも呼んだ方が良いんじゃねえのか?』

『えぇ……?』

 警察なんて呼んだ時点で僕の中ではもう穏便じゃないんだけどな。

『いつかは向き合わないといけない問題だぜェ。アイツ、相当執着してるみたいだからな』

『ね』

 僕は透かさず指輪の中のユモンに賛同した。気持ち悪い奴である。



 それから直ぐに授業が始まり、そしてうつらうつらとしながらも何とか終わった。

「ねぇ、宇尾根!」

「ん……?」

 挨拶の後、直ぐに頭を机に伏せていた僕を叩き起こしたのは黒崎さんだった。

「さっき、ヤンキーに絡まれてたって聞いたけど大丈夫?」

「や、ヤンキーじゃないよ、多分、良い人だから。いや、ヤンキーではあるのか……?」

 髪染めてて完全な校則違反だし、ヤンキーではあるかも知れない。言葉遣いも荒いしね。

「うん、ヤンキーだね」

「ヤンキーじゃん!」

「でも、良い人っぽいよ……?」

「ふーん……」

 黒崎さんが眉を顰めていると、もう一人僕の席の方に誰かが近付いて来るのが見えた。善斗だ。

「おい、大丈夫なのか? 寅嶋に絡まれたって聞いたが……」

「え、うん。まぁ、全然大丈夫」

「本当か、お前」

「怪しいな~?」

 黒崎さんと善斗に同時に詰められた僕は、この二人の並びが新鮮でちょっと面白くなった。

「あはは、大丈夫だって。そんなに心配しなくても……」

 そういえば、黒崎さんにはこのことを伝えておくべきなのだろうか。伝えなければ危険という見方もあるが、伝わってしまったら白山先輩が強硬手段に出始める可能性もある。

「うん、全然大丈夫」

 やっぱり、伝えない方が良いだろう。アイツは、慎重で臆病な性格だと思うから。バレていない限り、変なことはしないと思う。

「……何かあったら言えよ、マジで」

「そうそう。私達、マブダチじゃん?」

 ギャルっぽく言った黒崎さんに、僕は眉を顰めた。本気で心配しているのか居ないのか、微妙なラインである。いや、最初は心配していたけどもう気分が変わったと言うところだろうか。

「分かったよ、ヤバそうになったら連絡する」

「ヤバそうになる前に連絡しろって話なんだが……」

「そうだよー、連絡しないとー!」

「……」

 軽い調子で同調する黒崎さんに、善斗はやりづらそうに眉を顰めた。



 それから、授業を乗り越えて昼休みを迎えた僕は購買で適当に買って屋上にでも向かおうと考えていたのだが、購買でご飯を買った直後を絵空に肩を捕まえられた。

「や、絵空」

「よ、宇尾根!」

 振り返りながら言うと、絵空はにやりと笑いながら言った。

「実は、俺も今日弁当なくてな。どっかで一緒に食おうぜ」

「あー、外のベンチとかで食べる?」

 いや、外だと襲われるかな。無いか。校内でボコボコには流石にされないと思いたい。流石にね。

「よっしゃ、そうと決まれば行こうぜ!」

「なんか、元気だね……」

 いや、お姉ちゃんが体調を取り戻してからはずっとこのくらい元気だったっけ。今まではどこか空元気染みた部分を感じることもあったが、今はちゃんと楽しそうで僕も少し嬉しい気持ちだ。

「んで、話に聞いたんだけどよ……」

「なに?」

「寅嶋に呼び出されたとか、大丈夫だったのか?」

「うん、別に全然大丈夫。心配しなくてもオーライ」

 もう何度も聞かれた質問に、適当に答えつつサムズアップすると、絵空は呆れたように顔を顰めた。

「お前、無意識で人に喧嘩売りそうな性格してるからなぁ……」

「んなことないよ!? 失礼だなぁ、これでも結構人に気を遣って生きて来てるつもりなのに」

 絵空、僕を何だと思ってる? 割と他人の気持ちを慮ってる方だろうが、僕は。

「お前の中で気を遣ってるのと、お前が無意識に喧嘩を売ってるのはまた別だからな……価値観とか、考え方の問題だな。それと、お前は偶に周りが見えなくなって自分の道しか考えてない時があるぞ」

「ぐっ……」

 たしかに、マイペースだとはよく言われるけども。

「ま、それは良い。寅嶋から何の話をされたんだよ?」

「……世間話?」

 僕が答えると、絵空は表情を引き攣らせた。

「んな訳ねぇだろっ!?」

「いやいや、それはだって……ほら、寅嶋さんのプライベートだから」

「……取り敢えず、何かされた訳では無いんだな?」

「うん、寅嶋さんからは別に何も」

 僕が答えると、絵空は溜息を吐いた。

「お前なぁ……あっ」

 絵空は何かを思い出したように立ち止まると、焦ったような表情を浮かべた。

「すまん、ちょっと俺用事があるんだったわ! ここまで来といて悪いが、飯は一緒に食えねぇかも……」

「あ、うん。全然良いよ。またで」

「いや、マジですまん。じゃあな!」

「あいよー」

 そう言って、購買のパンを片手に走り去っていった絵空を見送った僕は、やはり屋上でぼっち飯を嗜むのだった。
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