ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と黒石

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 僕の目の前には、ゴーレムが立っていた。樹皮とその上を埋め尽くす黒い石によって覆われた、中身は土のゴーレムが立っていた。

「出来たぁ……やっと、やっと出来たぁ……」

 全体的に持続力を意識した構造だ。土の肉体はそこら辺から土をかっぱらえば直ぐに再生できるし、樹皮も魔力を消費することで一片でも張り付いたままならば再生できる。石はそこら辺から拾って貼り付ければ元通りである。

「……ふぅ」

 なんとかかんとかゴーレムを作り上げることが出来た。正直、ちょっと詰め込み過ぎてしまったような気がしなくもない。
 折角ならと、僕の魔術の知識も使って最良の物を目指した。けど、そのせいでやり直しが何回も起きて……そして、今である。

 ゴーレム作りなんてもうこりごりだと言う気持ちと、早く次のアイデアを試してみたい気持ちが共存している。とは言え、今日はもう終わらないとダメだ。寝る時間が無くなってしまう。

「一応、その前に動作確認だけして……」

 と言いつつも、完成したものを動かしたいだけである。僕は指先を伸ばしてそこに魔力で人型をした紫色の敵を創り出した。言ってしまえば、魔力だけのゴーレムのようなものである。これは、全知全能によって創り出した。

「行け、叩き潰せ」

 僕が同時に指示を出すと、黒石のゴーレムと魔力のゴーレムはやはり同時に駆け出して行った。そして、黒石のゴーレムが拳を振るうと魔力のゴーレムはそれを避けようとするが、的確にその拳は魔力のゴーレムを捉えた。

「おぉッ!」

 魔力のゴーレムの肉体に穴を開ける黒石のゴーレム。本来、物理的な肉体を持たない魔力のゴーレムには単なる殴打でダメージが入ることは無いのだが……黒石のゴーレムの、全身に取り付けられた黒い石による効果が発動してダメージとなった。
 あのゴーレムに取り付けられた黒い石には、特殊な効果がある。というか、ただの石に術式を刻むことで特殊な効果を発揮するようになっている。その効果とは、魔力を吸収するという単純明快なものだ。
 故に、魔力のみで肉体を構築されている魔力ゴーレムにとっては、あの拳だけで痛撃となってしまう訳である。

 そして、穴の開いた肉体に動揺することも無く魔力のゴーレムは拳を返した。その拳が、黒石のゴーレムの胸部に直撃するが、寧ろ拳の方が破裂して魔力が黒石のゴーレムに吸い取られてしまう。
 そうして片腕を失った魔力のゴーレムに黒石の拳が叩き付けられて、遂に魔力ゴーレムは肉体を保つことが出来ずに崩壊した。

「良いね、良い感じだ」

 相性的にガン有利だったってのもあるが、動きを見ても悪く無いだろう。スピードも、魔力で強化した僕の三倍はある。
 それに、今のでは使わなかったが、黒い石は魔力を十分に籠めれば射出して爆発させることも可能で、遠距離攻撃も搭載している。更に、殴る時に石の魔力を解放することで衝撃時のダメージを強めることも出来る。
 また、体を覆う樹皮はその身に満ちた魔力に応じて耐久性を高め、一応触れているものから生命力を吸い取ることも可能である。使う機会があるかは不明だ。
 中身である土も、魔力を蓄える程に性能を増し、身体能力が向上するようになっている。とは言え、基底の能力を超えて動くと魔力もその分消費してしまうが。
 最後に、コアに関してだが、ラクリオから教わったやり方である三核式を採用している。同じ術式を内包した核が同時に三つ存在し、どれかが砕かれると一つがその核の再構築に集中するようになっている。核の素材は石なので、体に取り付けている石を核の素材として利用できる。この術式の転写システムは死ぬ程最強で、新たに取り付けた石に術式を刻んで黒い石に変えられるのもこの転写のお陰である。

「あ、そうだ。名前付けないとだよね」

 一応仮名は付けてあるけど、ちゃんとした名前はまだだ。んー、何にしようかな。黒い石だから……ブラックストーンの略で、ブラス。どうだね、全知全能クン。

『ブラス、には真鍮等の意味があるので紛らわしいかと』

 そ、そうなんだ……どうしようかな。ラックとかで良いか、もう。

「よし、君の名前はラックだ!」

「……」

 心なしか睨まれているような気もするが、僕は視線を逸らした。さて、と……楽しい時間はそろそろ終わりにしよう。多分、集中状態を解除したらめっちゃ眠いし僕。

「取り敢えず、ゴーレムを引き渡さないとだけど……印を刻んだら召喚出来るみたいなこと言ってたよね」

 ただ、その肝心の印とやらは僕は教えて貰っていない。どうすれば良いんだろうか。取り敢えず、連絡しないとだけど……

「その前に、今何時かな……ぁ?」

 裏世界にゴーレムを置いたまま、一旦僕の部屋の中に帰還して時計を見ると、太い針が数字の五を指していた。五時だ。朝の、五時。

「……寝よ」

 ベッドに入り、目を瞑って集中状態を解除すると一気に疲労と眠気が押し寄せて来て僕は気絶したように意識を失った。
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