ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と疲労人間

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 目を覚ました僕は、凄まじい眠気の中で目覚ましのアラームを鳴らし続けるスマートフォンを死に掛けの如く力のない手で取り、何とかアラームを解除した。それから、数秒の逡巡の末に起き上がり、僕は仕方なしに学校への準備を始めた。

「兄貴、顔死んでない……?」

「死んでる」

 粗方の準備を整えた僕は短く答えて、パンとスープを口にした。この疲れと眠気に、食料を詰め込んでおかなければ寧ろ倒れかねない。

「帰ったら……寝れる」

「まだ家出ても無いよ、お兄ちゃん……」

 ご飯食べる時間の分、寝とけばよかったかなぁ……いや、あのまま二度寝したら二度と起き上がることは無かった筈だ。これで良いんだ。

「いただきます」

「もう食べてるよ……」

 そうだった。頂いてますだね、うん。美味しい。後でもう一回顔洗おうかな。



 ♢



 学校で僕は死にそうな顔をして授業を受けていたので、先日の件もあって色々な憶測が立っているのを耳にした。が、全部右から左へと流れて行ったので覚えてはいなかった。

「おい、治。昼休みだぞ。飯食わないのか?」

「んー……」

 僕はあくびを噛み殺しながら、善斗の声に顔を上げた。

「ねむい」

「……寝るなら、保健室で寝たらどうだ? 今のお前なら、多分ベッド貸して貰えると思うが」

 そう、するかぁ……?

「うん、ちょっと寝てこようかな……」

 そういえば、昨日は逃げて来てしまった上に、警察のお世話になったけど……今日は大丈夫なのかな、僕は。襲ってきたりしないかな。今の僕なら、誰が相手でもワンパンでおねんね出来る自信があるよ。

「おう、そうしろ……ていうか、俺も付いて行く。一応な」

「良いのに」

「良いから、行くぞ」

「たすかるらすかる……」

 僕は立ち上がり、善斗と並んで廊下を歩いて保健室を目指した。が、その途中で絵空とすれ違い、二度見された。

「おい、どうしたお前それ……!?」

「そんなに顔色悪いの、僕……」

 自分でも死にそうな顔してる自信はあるけどさ。でも、体調が悪いって訳でも……あるんだろうか、これ。どっちなんだろう。眠くて疲れてるだけなんだけども。

「やっぱり、昨日なんかあったんじゃねえのかよ」

「無いよ、特に……ただ、色々やってて疲れて、あんまり寝てないってだけよ」

「……本当かよ?」

「本当だってば」

 結果的には、何も無かった。うん。警察さんが助けてくれたし。やっぱり、権力って神だ。暴力を兼ね備えてると、誰も逆らえない。

「取り敢えず、僕は……保健室で寝て来るよ。善斗が、付き添ってくれてる」

「ほーん、じゃあ俺も行く」

 軽いノリで付いてくることになった絵空に僕は軽く感謝を伝えて、一緒に保健室に向かった。

「……ぁ」

 僕はその道中で、こちらをじっと見る男の……白山先輩の姿を発見したが、何もしては来なかった。ただ、暗い目をしていた。

「ん、どうした?」

「いや、何でも無いよ」

 善斗に聞かれるも、僕は首を振る。まだ善斗は気になっていた様子だったが、保健室に着いたので追及されることも無かった。

「すみません、こいつ体調悪いみたいで……ちょっと、昼休みの間だけでも寝かせてやれないっすかね?」

「頼みます」

 僕が何を言うまでも無く、二人が保健室の先生に話を付けている。僕は、ボーっと眠気を覚えているだけだった。

「治君、だよね? ちょっと寝よっか」

「すみません……」

 僕は頭を下げながらも最速でベッドに入り、一応体温計で体調を図られた。僕は眠いと体温が上がるので、結構温かかった。けど、微熱程度だ。

「はぁ、帰りも気を付けろよ? 倒れないようにな……俺が付いていけたら良かったんだけどな、今日はちょっと忙しくてよ」

「俺も、今日はちょっと残らないといけない用事があるな……」

 心配げな二人に僕は笑みを浮かべて手を振った。

「大丈夫だよ、少し寝たら……多分、元気になるから」

 良い友達を持てたことに僕は心の底で感謝して、直ぐに眠りに落ちた。



 ♢



 保健室の先生に揺り起こされて、僕は目を覚ました。

「治君、体調大丈夫そう?」

「はい……大丈夫です」

「辛かったら、先生に連絡するから大丈夫だけど……どうする?」

「いえ、結構マシになったんで……授業受けて来ます」

 本当? と何度も聞かれた僕の顔色はまだ悪かったであろうことが予想されたが、僕は先生の心配を振り切って教室へと戻った。実際、少しはマシになった。本音を言うならまだあと八時間は寝ていたいくらいだが、体調不良ってのとは違うような僕がベッドでサボり続けているというのもどうかと思ったので、真面目に授業に取り組むことにしたのだった。


 そうして、全ての授業を受け終えた僕は無事にその日の学校生活を終えて……帰路に就くことになったのだった。帰れる喜びと、寝れる幸福を噛み締めながら僕は歩く。

『おい、気付いてるよな?』

「へ?」

 そして、背後から頭をガツンと殴られた。

『感謝しろよ? オレ様が軽減してやって……って、おい?』

 軽い衝撃が頭を走り抜ける。僕は、その衝動に身を任せて地面に倒れ伏すのだった。もう、眠いんだって。授業で寝なかっただけ、褒めて欲しいくらいだ。

「……おやすみ」

『おいッ!?』

 どうせ、僕は死なないんだ。一旦、寝せて欲しい。疲れた。
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