ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と土塊の群れ

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 百体くらいは優に居るであろうゴーレムの大群に、三人は感嘆を通り越してドン引きしたような様子だった。

「……そもそも、こんだけの戦力がありゃぁ、逃げながら戦う必要も無いんじゃねぇか?」

「まぁ、そうだよね……そもそも、向こうが逃げるんじゃないかな?」

 た、確かに……!

「さ、作戦を変えようか! ゴーレム達を地面に隠すから、僕らは逃げるフリをして……ゴーレムの群れの中まで引き込んでから戦闘開始にしよう!」

 僕は言いながら、ゴーレムの群れを大地に潜らせて、地中に隠れるように命令した。気配はかなり近付いているが、まだ見られていないことを祈ろう。

「そうだな……ギリギリ、間に合ったってとこか!」

 森の奥の茂みが揺れる。気配を隠す気も無いゴブリンの群れは、雪崩れ込むようにこちらに向かってきた。

「よし、そうと決まればもう少し引き込もうか!」

 アシラが駆けだして、僕らもその後ろを付いて走る。その背を狙って飛来する矢を、ナーシャの展開した魔法陣が防いだ。

「早いね。腕、上がった?」

「最近、魔術のモチベーションが高かったから……治のお陰」

 殆ど反射的に構築された防御用の魔法陣に僕が聞くと、ナーシャはそう答えた。どうやら、僕のお陰らしい。やったぜ。

「グギャッ!」

「追いつかれた……スカウトかッ!」

 ナイフを持ったゴブリンが僕らの走る横の木陰から飛び出して、そのナイフを一番近いアシラに向けて振るった。

「ふッ!」

 アシラは剣を抜くことも無く、見事な身のこなしでナイフを避けながらゴブリンの腕を掴み、前に引っ張りながら足を蹴って転がした。

「そろそろかな、治!」

「了解!」

 僕は足を止め、司令塔の役割を持つゴーレムに命令を下した。すると、ごごごと大地が蠢いて、再び起き上がり始める。

「さぁ、反撃開始だぜ」

 ウィーはそう言いながら足元の石を拾って投げつけ、起き上がったナイフ持ちのゴブリンにぶち当てた。気の籠められた石はゴブリンの頭を容易く貫き、ゴブリンは地面に倒れ伏した。

「よっと……」

 ウィーはそのゴブリンの死体に駆け寄ると、ナイフを拾い上げて土を払い、しげしげと観察した。

「ふぅん?」

 ウィーは眉を顰めてそのナイフを訝しむように見ていたが、それを懐に仕舞うとゴブリンの群れに視線を戻した。

「ま、一先ずはアイツらだな。アシラ、殲滅か?」

「そのつもりだよ」

「うぃっ」

 ウィーが木々の中に紛れて、その場から姿を消した。戦場は既にゴーレムの群れとゴブリンの群れの合戦と化している。だが、優勢なのはゴーレムの群れだった。数でも勝っている上に、一応は僕らの作った術式を仕込まれているゴーレム達は性能もある程度底上げされているので、ゴブリンの攻撃はまともに通っていない。というか、軽い攻撃ではダメージにならない。

「あんなにちゃんとした武器とか持ってるんだね、ゴブリンって……」

 十匹に一匹くらいは金属製の武器を持っているように見える。他は素手か棍棒かみたいな有様だが、そういえばさっき弓も撃たれたよね。

「自分達で金属武器を作れる群れは相当に稀だよ。かなり大規模な群れで、魔族のテコ入れでも入っていないと有り得ないくらいだ。だけど、少なくとも……冒険者の落とした武器や、殺して奪った武器を使ったする程度の知能はある」

「……アレだけ持ってるってことは、殺して奪ったってことかな」

 僕が聞くと、アシラは難しそうに眉を顰めた。

「あのゴブリンの群れは最近現れた群れの筈だ。この森はくまなく冒険者達が探索した筈だから。つまり……いや、話は後にしようか」

 そう言って話を切ったアシラは、剣を抜いて合戦の中に飛び込んだ。僕も黄金の指輪を嵌めた指先を杖代わりのように戦場に向けて、小さく詠唱する。

「『魔尖弾マナピアサー』」

 鋭く先端の尖った錐体の魔力弾を戦場へと放つ。大抵の弾丸よりもずっと速いそれは、弓を構えているゴブリンの頭を正確に貫いた。

「よし、先ずは弓持ちを一体っと……」

「私は、三体」

 僕が満足気に呟くと、隣に立ったナーシャがふんぞり返ってそう言った。確かに、木々の間で蔦に絞殺されている弓持ちのゴブリンが三体居た。

「そんなこと言ったら、僕のゴーレムが殆ど倒してるけどね」

「私だって、広範囲の魔術使ったら全員倒せる」

「いや、広範囲でまともに作用するような術って大体隙があるじゃん。僕が教えたアレもそうだしさ」

「私は熟練の魔術士……その程度の隙、問題にならない」

 僕とナーシャが言い争っていると、アシラがゴブリンを斬り殺しながらこっちを睨んで来た。

「良いから、早く敵を倒して貰っても良いかなッ!」

「い、今やりますね……すみません」

 ちょっと怖かった僕は、冷や汗を垂らしながら再び黄金の指輪を嵌めた指先を伸ばした。今日は、そこにユモンは宿っていなかった。
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