ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と巣穴

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 ウィーの案内を受けた僕らは、森の中を歩いて割と直ぐに巣穴付近に到着した。思っていたよりも近くにあったらしい。

「居るぜ、ゴブリンが。今頃、斥候からの報告を受けて騒ぎになってんだろうな」

 警戒するように巣穴の周辺を巡回しているゴブリンを見て、ウィーがそう口にした。

「じゃあ……行かせるよ。良い?」

「良いよ。頼んだ」

「よし、おれは、どこか別の抜け道から逃げたりしねぇか探って来る」

「うん、お願い」

 僕はそう返して、後ろを付いて来させていたゴーレムの軍団をゴブリンの巣穴の方へと突っ込ませた。周辺を警戒していたゴブリン達は目を丸くして慌てて巣穴の方に逃げて行き、その背をナーシャの放った石の槍に貫かれていた。

「よいしょっと」

 僕もナーシャに倣って追撃しようと、足元に落ちていた石ころを拾って、魔力で覆い、高速で射出した。それはゴブリンの背を貫き、血と臓物を噴き出させて倒れさせた。

「ッ、その魔術……なに?」

「え、これ……? 普通に、圧力で飛ばしただけだよ」

「詠唱、なかった」

「まぁ、ないけどさ……別に単純極まりない構造だし、後で教えるよ?」

 僕が言うと、ナーシャはこくこくと激しく頷いた。

「っと、巣穴に逃げたみたいだね」

「うん、ゴーレムを送り込もう」

 巣穴の周囲のゴブリンから狙っていたゴーレム達が一斉に巣穴の方に群がり、申し訳程度にカモフラージュされた植物の覆いを外して、巣穴である洞窟の中へと入り込んで行った。

「……よし、これで中が見える」

 僕は意識を司令塔のゴーレムに集中させて、彼らの繋がりを利用してその視界を共有した。ただ、まだ未熟な僕は自分の体の視界とゴーレムの視界を同時に見ることが出来ないので、暫くの間は守っていて貰うことになるだろう。

「アシラ、ナーシャ。どっちか、僕のことを見てて貰えるかな? 暫く、ゴーレムの視界に集中するから……こっちに意識を割けなくなる」

「分かった。じゃあ、僕が見ておこう」

「別に、私もやることあんまり無い……一応、抜け道が無いか、使い魔に探らせておく」

 そう言うと、ナーシャは懐から毛むくじゃらの細長い何かを取り出して、それに魔力を込めつつ何かを呟くと、その毛むくじゃらに命が宿ったかのように動き出した。

「ほら、行って。抜け道を探して」

 鳴き声すら無く、毛むくじゃらは意外にも早い速度で地を駆けて行った。

「使い魔……僕も作ろうかなぁ」

「便利。作った方が良い。でも、ゴーレムの扱いが上手いなら……別のやり方の方が良い可能性も、ある」

 使い魔はモノにもよるが、命ある存在と言っても良い。多分、あの毛むくじゃらは生物でも無いし、僕らみたいに感情を持っても居ないと思うけど、一応命というか魂自体はある筈だ。魔力で作り上げた偽の魂だから、ある程度の機能を持ってくれるという程度でしか無いけどね。ゴーレムとの主な違いは、術者との繋がりが核の中の術式由来であるか、魂であるかになってくる。
 けど、僕は感情とかが無いとはいえ、魂を作るのを……若干躊躇してるとこはある。感情が無いなら、僕の中の考え的には作ってもセーフではあるけど、態々踏み出す程のきっかけも無いと言ったところだった。

「取り敢えず、僕はこっちに集中するよ」

 残念ながら、正確な音を聞く機能までは搭載されていないゴーレム達だが、ある程度集中しないと共有がブレる。意識をゴーレム達の方にしっかりと向ける必要があるだろう。





 ♦



 薄暗い洞窟。そこに住みついたゴブリン達の巣穴はそこそこ程度の広さで、かなりの量が居るゴブリンの群れによって、その中は少し手狭になっていた。

「グギャ、グギャギャ……」

 ゴーレム達を操る人間達の報告を受けたゴブリンの一体が巣穴の奥に進み、最奥の空間の前に立つ大柄なゴブリンに何かを話した。すると、大柄なゴブリンは眉を顰めてその空間へと繋がる道を開けた。

「グギャ、グギャ! グギギギャ!」

「ギギャ……?」

 具申するように丁寧に、しかし焦った様子で何かを叫ぶゴブリン。その視線の先に居るのは、細身だが他の個体よりも身長の高いゴブリンだった。玉座の如く作られた石の席には、質の高い鉄製の大きな剣が立てかけられていた。

「グギャ……グギャギャギィ……!」

 その王の如き長身のゴブリンは、石の玉座に立てかけられた鉄の剣を掴み上げ、立ち上がり、何かを目の前のゴブリンに伝えた。

「グ、グギャ!」

 ゴブリンは身を低くして答えると、その場を足早に去って行った。暫くすると、ローブの如き布を身に纏ったゴブリンがやって来た。ゴブリンの王はそのゴブリンを見ると、直ぐに詰め寄った。

「グギャ、グギャギャ……!」

「グキャ……クキャ」

 焦りを露わにする王を目の前に、ローブのゴブリンは冷静に首を振った。

「……グ、グギャ」

 巣穴に騒音が響き始める。阿鼻叫喚が、巣の中に轟く。ゴーレム達が巣穴へと侵攻を開始したのだと、ゴブリンの王は理解した。
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