ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能とゴブリンの群れ

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 巣穴に侵入したゴーレムは、その土の腕を振るって目の前のゴブリンを壁に叩き付けた。目を見開き、体の中で潰れた臓器に血を吐くゴブリンは、何も出来ずそこに倒れる。

「グギャッ、グギャッ!」

「グギャギャ!」

「グギャァッ!」

 その様を見たゴブリン達は、それぞれ武器を持ってゴーレムに立ち向かう。巣穴にはそれなり武具が備えられており、ある程度の戦闘能力を認められているゴブリンならば簡単に武器を持つことが許されていた。

「グギ!?」

 しかし、武器があったところでその土の怪物に適うとは限らなかった。己の胸に突き刺さった鉄の刃を気にした様子も無くゴーレムは腕を振るい、ゴブリンの頭に叩き付けた。地面に倒れ、揺れる頭の中にゴブリンは起き上がれない。

「グギャァッ!」

「グッギィ!」

 それでも、果敢に飛び掛かったゴブリンの斧によってゴーレムの足が崩された。片足を失って膝を突いたゴーレムの頭を、鉄の剣が刎ね飛ばす。

「グギャアアアアアッ!!」

 それでも、腕がまだこちらへと伸ばされるのを見たゴブリンは、恐怖を覚えながらも斧を振り下ろしてゴーレムの体を更に崩壊させた。

「……」

 体の半分以上を崩されたゴーレムはまるでただの土に戻ったかの如く、残りの体も崩れ去り、土の山となって地面に積もった。

「グ、グギャ!」

「グギャァ!」

 焦燥の表情を浮かべながらも、歓喜の声を上げたゴブリン。その視線の先、巣穴の入り口から……更に、ゴーレムが入って来るのが見えた。一体、二体、三体と……次々に、次々に、入り込んで来るのが。

「グギャァァアアッ!」

 あぁ、そうだった。忘れていた。単純なゴブリンの頭は、たった一体のゴーレムを倒したことで舞い上がって忘れていた。仲間の報告では、ゴーレムは無数に……百体近い数が、居たのだった。

「グギャッ、グギャアッ!!」

 そして、気付いても居なかった。ここに立たされた自分達は、時間稼ぎの捨て駒でしかないということに。

「……」

「……」

「グギャアアアッ!?」

 ゴーレム達が、進軍する。駆け出したゴーレムが、逃げようとするゴブリンの背を地面に抑え付けて、その頭を強く握り潰した。

「……」

「……」

 進軍していく、ゴーレム達が。土が崩されて壁となったそれを、簡単に蹴破って進んで行く。穴の開いた地面に落ちても、その程度では彼らの強靭な体は崩れない。

「……」

「……」

 知能は低くとも、言葉を発せずとも、それでもゴーレムは強靭で、堅牢で、止まることは無かった。恐怖を感じることも無く、躊躇も無いからだ。

「グギャァッ! グギャァッ!!」

「グギャッ!」

 罠を超え、妨害を超え、逃げ遅れたゴブリン達を殺しながら、無機質に現れたゴーレム達に、直線の先で集団で待ち構えていたゴブリン達は石を投げつけた。しかし、その程度の投石ではゴーレム達は体の表面が僅かに崩れる程度であり、大したダメージにもならない。

「……」

「グギャァアアアッ!!」

 ゴブリンの集団まで駆けこんで来たゴーレムに、ゴブリンが槍を突き出してその胸を貫く。が、ゴーレムはその程度では止まることも無くそのゴブリンの首をひっつかんでグチャリと簡単に潰した。

「グ、グギャァ……」

「グギャ、グギャア……!」

 焦燥、混乱、今にも恐怖の感情が爆発しそうになっているゴブリン達。しかし、その顔色が変わった。

「グギャ」

 それは、彼らの背後から現れたローブのゴブリンとその左右に立つ大柄なゴブリンを見たことによるものだった。二体の大柄なゴブリンはホブゴブリンと呼ばれる身体能力の高い凶悪なゴブリンであり、そして木製の杖を持っているローブのゴブリンは、メイジと呼ばれるその名に相応しく魔術を行使することが可能だった。
 冷静にゴブリンのメイジが声を掛けると、ゴブリン達は落ち着きを取り戻し、そして陣形を整え直してそれぞれ固まって武器を構えた。

「『――――』」

 ゴブリンメイジが呪文を唱える。火球が浮かび、ゴブリン達の頭上を通り越して先頭のゴーレムに直撃する。

「……」

 が、ゴーレムの体は多少崩れて焦げたかという程度で問題無く動き、ゴーレムはゴブリンの集団へと到達した。

「グギャアアアアッ!!」

「グギャア、グギャア!」

 阿鼻叫喚の声が上がりながらも、振るわれる無数の刃によってゴーレムは引き裂かれ、突き崩され、遂に崩壊する。だが、それでやっと一体だ。この後にも、ゴーレムは百体と並び待っているのだ。

「グギャ……」

 この直線、ゴーレムは並んで通れるのは二体程度だ。この道を使って籠城すれば、耐えられるか……いや、無理だろう。処理の速度が明らかに間に合っていない。ゴブリンメイジは首を振り、ホブゴブリンに何かを伝えると踵を返した。

「グギャ」

 王と同じく、自分もこの巣穴から逃れなければならない。使命の為にと、メイジは杖を固く握って駆け出した。
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