ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能とこちら側

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 悪魔、ユモン・イカダチは相談事務所側に漂い始めている不穏そうな気配に、治とは離れて彼らと共に行動することになっていた。但し、今は光の為の魔石を求めて外に出ていた。

「つーか、前々から思ってたけどよ」

 そして、ユモンと並んで歩いていた茜が、胡乱げな視線を向けながら声を掛ける。

「その服、何なんだよ」

 ユモンが身に纏う、黒を基調に赤の混じった高級感のある服……どこか、異国の貴族のような雰囲気のあるその服装は、ユモン自身の野性的な雰囲気と奇妙にマッチしていた。

「安っぽくもねぇしな。コスプレなんかでもねぇんだろ? どこで買うんだよ、んな服」

「んァ? これか? まぁ、アレだよ。スーパーで買ったんだよ」

「スーパーに売ってるかよんなもんッ!?」

 服をパタパタと引っ張って見せながら言うユモンに、茜は目を剥いて叫んだ。

「あ? スーパーって大体何でも売ってんじゃねぇのか?」

「売ってる訳ねぇだろ……そんな服まではよ」

 呆れたように溜息を吐いた茜。

「おいおい、とんだ厄モノだったりしねぇだろうな。お前……この現代日本で態々そんな服着こんでるなんざ、明らか普通じゃないぜ。言っとくけどな」

「あー、そうなのかァ? クソ、仕方ねェな……今度からは、服を用意しとくか」

「まぁ、普通の服着てても目立つだろうし、そもそも魔術で認識逸らして歩いてるから関係ねぇっちゃねぇが」

「でも、郷に入っては郷に従え、だろ? 治が言ってたぜェ」

 にやりと笑って言ったユモンに、茜はハッと笑った。

「どこから来たのかくらい言ってみろよ?」

「ヒヒッ、ニンゲンってなぁ、秘密が多い方が魅力的に見えんだろ?」

「ハッ、私は裏も表も隠し事もされない方がやりやすくて好きだぜ。ほら、話して良いぞ?」

「オレ様、ニッポンシュッシン。寿司ダイスキ」

 問い詰める茜にユモンがふざけて返すと、茜は愉快そうに笑い声を上げた。

「イカダチっつったな、外人エセ貴族」

「あァ、そうだ」

「ちょっと気に入ったぜ、お前」

「ヒヒッ、そりゃ光栄だな。だが、深入りしすぎないように気を付けた方が良いぜェ? オレ様ァ、秘密も隠し事も多いからよ」

 悪魔の様な笑みを浮かべたユモンに、茜は小さく笑って拳を押し付けた。

「全部暴いた上で、無事に帰ってやるよ」

「おっ、じゃあ力尽くででも暴いてみるかァ?」

「どっちかって言うと、お前がどんな風に戦うのか知る為に力尽くでかかって見たい所だけどな……ま、何となく私より強いだろってのは察してるぜ。どころか、御岳より強いかもな?」

「ハッ、どうだろうなァ? やってみないと、分からねぇぜ?」

 二人が歩く程に、どんどんと人足は減っていく。その様にユモンは僅かに眉を顰めるも、茜は気にした様子も無く進んで行く。

「それに、アイツが……お前のこと信用してっからな。用心棒だのなんだのって話だろ? つまりは、お前もアイツくらいの規格外ってことだ」

「ヘッ、言っとくけどな。治の方が、オレ様より……」

 ユモンの言葉を、茜が手で制して途中で止めた。

「っと、ここからは名前呼ぶのはナシだ。分かったな? エセ貴族」

「あいあい、分かった。気を付けるぜ、不良もどき」

 ユモンが言うと、茜はピシッと青筋を立ててユモンを睨み付けた。

「テメェ、誰が不良もどきだ。コラ」

「じゃあ何て呼べば良いんだよ?」

「……紅、とか」

「それ、殆ど名前と意味変わって無いんじゃねぇのか」

 呆れたように言うユモンに、茜は僅かに顔を赤くし……だが、何かを言い返す前に、眉を顰め、足を止めた。

「おい、気付いてるな?」

「勿論気付いてるぜ、赤女」

 最終的に決まった呼び名に何か言いたげにしていた茜だったが、そんな場合じゃないと真っ赤なリングを懐から取り出した。ぱっと見では腕輪の様にも見えるそれだが、赤く光を解き放つとそれは鞭の形へと変形した。

「思ったより早かったな? 前みたいに、他の奴らから干渉されるのを嫌ったってとこか……」

「認識阻害かけてても気付かれるもんだな。いや、人通りさえ少なけりゃ、通る奴を全員張って見てりゃ分かるか」

 茜とユモンを、幾つもの影が取り囲んでいく。彼らの顔は目出し帽のようなマスクで隠されており、明らかに大手を振って歩けるような者達で無いことは分かっていた。

「よし、左の奥が薄いな……あそこを突破して走り抜けるぞ」

「んァ? 何言ってんだよ。全員ぶちのめした方が、背中を気にする必要も無くなって良いだろ?」

 当然のように正面切って戦う選択をしたユモンに、茜は呆気に取られたが、ふっと笑うと自分の手に拳をパチッと当てた。

「良いぜ、そんなに言うならやってやるよ」

「あァ、鞭で好き放題やっちまえ。オレ様がカバーしてやるよ」

 圧倒的な人数不利にも拘らず好戦的な笑みを浮かべた二人に、顔を隠した者たちは気圧されていた。
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