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全知全能と射手
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ビルを出た二人は、そのまま帰路に就こうと魔石の五つ入った袋を手に歩いていたが……その途中で、飛来した弾丸が茜の後頭部に吸い込まれていく。
「っと、あぶねぇな」
「ッ!」
ユモンがそこに手を翳し、弾丸を素手でパシッと受け止めていた。
「気を付けねェと怪我するぜ? オイ」
「流石に敵の方向も襲撃のタイミングも分かってない中での銃撃は対処出来ねぇよ……まぁ、弾丸くらいなら魔力で強化してる分で耐えられるだろうが」
「警戒してたら避けれんだろ? こう、ビビっと来ねェか?」
「来る時もあるけどな……つか、それより撃って来た奴だよ。もう逃げてんじゃねぇのか?」
茜が言うと、ユモンは当然のように頷いた。
「そうだな。走って逃げて行ってるぜ」
「ちょ、何やってんだ!? 早く追いかけねぇと……ッ!」
銃弾の飛来した方向へと走り出した茜に、ユモンはヒヒッと笑って追いかけた。
「馬鹿、ここら辺でやったら周りの魔術士にも見られんだろ? だから、敢えて一旦逃がすんだよ。ここら辺からちょいと離れて……田宇神の外側に来たくらいで仕留めりゃ安パイって訳だ」
「……考えてやってたのかよ。テメェの感じだと、ふざけてるように聞こえんだよなぁ」
「ヘッ、ちょいとからかったのは否定しねぇけどな」
「おい」
銃弾を放った相手を追っていく二人。しかし、二人はその相手が十分に離れるより前にその相手に追いつき……足を止めてしまった。
「こんにちは。銃弾を放った者は捕まえておきましたよ」
それは、追いかけていた相手が誰かも分からない人間に捕まえられていたからだった。
「あーっと……助かる。が、誰だよ? 実は私と知り合いって訳でも無いよな」
「えぇ、心配なさらずとも初対面ですよ。私は三嶌 礼。どこにでもいる魔術士の一人ですよ。今後とも、よろしくお願いします」
にこりと笑った男……青の僅かに混じった黒髪の男、三嶌礼。髪は後ろに少し長く伸び、細い目はどこか胡散臭さを醸し出している。
「あァ、よろしくな。だが……アンタは誰だ?」
「ですから、私は三嶌礼。単なる魔術士の一人ですよ」
「そうだったな、二度も言わせて悪かった。んで、誰だよ? 俺の聞いたところの魔術士は態々人助けをするような慈悲深い連中じゃないんだが……もしかすると、例外だったりするか?」
「えぇ、例外ですよ……と、言いたいところですが」
三嶌は自分の足元に倒れている男を足で軽く蹴って示した。
「福岡の方に彼らのような者達に襲われている魔術士達が居ると……そして、どうやらそれが今まで不動の存在であった支配者と協力して動いていると。最近では暇で暇で、面白いことも何も無く退屈に殺されそうになっていたものですから……折角なので、見に来たんですよ」
「暇なのかよ」
「暇と言っているでしょう」
堂々と言い返した三嶌に、ユモンは小さく息を吐いた。
「ま、助かったは助かった。別にこのまま捕まえることも出来てたってのは先に言わせといて貰うが、それでも礼はしよう。何が目的だ?」
恩を返す為、というよりも目的を聞き出す為にそう尋ねたユモンに、三嶌は首を振った。
「いえいえ、礼などとはとんでもありませんよ。アレだけの人数をいとも容易く蹴散らした貴方方ですから……初めから、こんな相手程度は簡単に捕らえられることは知っていますとも」
「……どこで見てやがった」
茜が低い声で言うと、三嶌はにやりと笑みを浮かべる。
「ここらの魔術士が集う地の田宇神の辺りでアレだけ派手にやったんですから……誰かが見ているということくらい不自然でも無いでしょう? その一人が私だったと言うだけですよ」
「マジかよ? 気付かなかったぜ、少なくとも人の気配は他にしなかったからな。よっぽど遠くから特殊なやり方で覗き見てたか、何かの機具を通して見てたかのどっちかだな」
ユモンの考察に、三嶌は肯定も否定もせずにただ微笑んでいる。
「……顔も名前も隠さねぇ。だが、それが逆に怪しいくらいだな。尤も、それが本当の顔と名前かは知らねえがな」
「怪しいとは心外ですね? 私は貴方達の手助けをしただけですし、礼も要らないと言ってるんですよ?」
「全く以ってその通りだな。だから困ってるんだよ」
睨み付けるような勢いの茜に、三嶌は溜息を吐いた。
「……仕方ありませんね。お喋りはこのくらいにして私は退散させて貰いましょう。どうやら、お邪魔の様ですから」
「すまねぇな。調べてるならアンタも知ってるだろうが、オレ様達は色々と警戒しないといけない状況なもんでなァ」
「えぇ、存じておりますよ。もう少し、色々と話を聞いてみたかったところですが……深入りしすぎるのも、流石に良く無いでしょうからこのくらいにして私は去りますよ」
「まぁ、捕まえてくれたのは助かった。ありがとな」
最後に茜が感謝を付け加えると三嶌はふっと笑い、踵を返していた足を止めた。
「また会える日を楽しみにしていますよ。困っていれば、いつでも呼んで下さい。気が向いたら助けますから」
「あァ、呼べたら呼ぶかもな」
連絡先も何も受け取っていないユモンはそう返すと、三嶌はその笑みを強めて軽く手を振って今度こそその場を去った。
「……予想以上に面白い案件かもですねぇ、これ」
そして、二人も見えなくなった頃合いで三嶌はそう呟いた。
「紅蓮の娘だけでなく、もう一人の男もあそこまでとは……東京から遥々やって来た甲斐がありますよ。本当に、来て良かった」
晴れやかな声色でそう呟きながら、三嶌は街の彼方へと消えて行った。
「っと、あぶねぇな」
「ッ!」
ユモンがそこに手を翳し、弾丸を素手でパシッと受け止めていた。
「気を付けねェと怪我するぜ? オイ」
「流石に敵の方向も襲撃のタイミングも分かってない中での銃撃は対処出来ねぇよ……まぁ、弾丸くらいなら魔力で強化してる分で耐えられるだろうが」
「警戒してたら避けれんだろ? こう、ビビっと来ねェか?」
「来る時もあるけどな……つか、それより撃って来た奴だよ。もう逃げてんじゃねぇのか?」
茜が言うと、ユモンは当然のように頷いた。
「そうだな。走って逃げて行ってるぜ」
「ちょ、何やってんだ!? 早く追いかけねぇと……ッ!」
銃弾の飛来した方向へと走り出した茜に、ユモンはヒヒッと笑って追いかけた。
「馬鹿、ここら辺でやったら周りの魔術士にも見られんだろ? だから、敢えて一旦逃がすんだよ。ここら辺からちょいと離れて……田宇神の外側に来たくらいで仕留めりゃ安パイって訳だ」
「……考えてやってたのかよ。テメェの感じだと、ふざけてるように聞こえんだよなぁ」
「ヘッ、ちょいとからかったのは否定しねぇけどな」
「おい」
銃弾を放った相手を追っていく二人。しかし、二人はその相手が十分に離れるより前にその相手に追いつき……足を止めてしまった。
「こんにちは。銃弾を放った者は捕まえておきましたよ」
それは、追いかけていた相手が誰かも分からない人間に捕まえられていたからだった。
「あーっと……助かる。が、誰だよ? 実は私と知り合いって訳でも無いよな」
「えぇ、心配なさらずとも初対面ですよ。私は三嶌 礼。どこにでもいる魔術士の一人ですよ。今後とも、よろしくお願いします」
にこりと笑った男……青の僅かに混じった黒髪の男、三嶌礼。髪は後ろに少し長く伸び、細い目はどこか胡散臭さを醸し出している。
「あァ、よろしくな。だが……アンタは誰だ?」
「ですから、私は三嶌礼。単なる魔術士の一人ですよ」
「そうだったな、二度も言わせて悪かった。んで、誰だよ? 俺の聞いたところの魔術士は態々人助けをするような慈悲深い連中じゃないんだが……もしかすると、例外だったりするか?」
「えぇ、例外ですよ……と、言いたいところですが」
三嶌は自分の足元に倒れている男を足で軽く蹴って示した。
「福岡の方に彼らのような者達に襲われている魔術士達が居ると……そして、どうやらそれが今まで不動の存在であった支配者と協力して動いていると。最近では暇で暇で、面白いことも何も無く退屈に殺されそうになっていたものですから……折角なので、見に来たんですよ」
「暇なのかよ」
「暇と言っているでしょう」
堂々と言い返した三嶌に、ユモンは小さく息を吐いた。
「ま、助かったは助かった。別にこのまま捕まえることも出来てたってのは先に言わせといて貰うが、それでも礼はしよう。何が目的だ?」
恩を返す為、というよりも目的を聞き出す為にそう尋ねたユモンに、三嶌は首を振った。
「いえいえ、礼などとはとんでもありませんよ。アレだけの人数をいとも容易く蹴散らした貴方方ですから……初めから、こんな相手程度は簡単に捕らえられることは知っていますとも」
「……どこで見てやがった」
茜が低い声で言うと、三嶌はにやりと笑みを浮かべる。
「ここらの魔術士が集う地の田宇神の辺りでアレだけ派手にやったんですから……誰かが見ているということくらい不自然でも無いでしょう? その一人が私だったと言うだけですよ」
「マジかよ? 気付かなかったぜ、少なくとも人の気配は他にしなかったからな。よっぽど遠くから特殊なやり方で覗き見てたか、何かの機具を通して見てたかのどっちかだな」
ユモンの考察に、三嶌は肯定も否定もせずにただ微笑んでいる。
「……顔も名前も隠さねぇ。だが、それが逆に怪しいくらいだな。尤も、それが本当の顔と名前かは知らねえがな」
「怪しいとは心外ですね? 私は貴方達の手助けをしただけですし、礼も要らないと言ってるんですよ?」
「全く以ってその通りだな。だから困ってるんだよ」
睨み付けるような勢いの茜に、三嶌は溜息を吐いた。
「……仕方ありませんね。お喋りはこのくらいにして私は退散させて貰いましょう。どうやら、お邪魔の様ですから」
「すまねぇな。調べてるならアンタも知ってるだろうが、オレ様達は色々と警戒しないといけない状況なもんでなァ」
「えぇ、存じておりますよ。もう少し、色々と話を聞いてみたかったところですが……深入りしすぎるのも、流石に良く無いでしょうからこのくらいにして私は去りますよ」
「まぁ、捕まえてくれたのは助かった。ありがとな」
最後に茜が感謝を付け加えると三嶌はふっと笑い、踵を返していた足を止めた。
「また会える日を楽しみにしていますよ。困っていれば、いつでも呼んで下さい。気が向いたら助けますから」
「あァ、呼べたら呼ぶかもな」
連絡先も何も受け取っていないユモンはそう返すと、三嶌はその笑みを強めて軽く手を振って今度こそその場を去った。
「……予想以上に面白い案件かもですねぇ、これ」
そして、二人も見えなくなった頃合いで三嶌はそう呟いた。
「紅蓮の娘だけでなく、もう一人の男もあそこまでとは……東京から遥々やって来た甲斐がありますよ。本当に、来て良かった」
晴れやかな声色でそう呟きながら、三嶌は街の彼方へと消えて行った。
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