ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能とそれぞれの考察

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 ゴブリンの巣穴をゴーレムによって隅から隅まで探索し切った僕だったが、結局のところ他の魔道具や秘密の資料なんかは出てくることは無かった。

「どうする? もうちょっと冒険してから帰る?」

「いや、今日の所は一度街に帰ろう。ゴブリンの群れが現れたのは報告すべき事柄だし、それにどうやら普通の群れという訳でもなさそうだったからね……」

「ま、直近で妙ちくりんなことが起きたばっかりだしな」

「もし、魔族の件と関連があったら大変だから……直ぐに報告すべきだと思う」

 三人の言葉に僕は確かにと納得し、頷いた。

「分かったよ。確かに、帰った方が良さそうだね」

「うん。残念だけど、今日の所は帰って報告にしよう。ゴブリンの群れは普通なら報告を受けてからギルドから依頼が出るから……ドリゥグさんなら、報奨を与えてくれるんじゃないかな」

「だな! 金くれたら酒でも飲み行こうぜ!」

「僕は酒は飲まないからね」

 念の為に言っておくと、ウィーは分かって居るんだか居ないんだかぶんぶんと適当に頷いた。

「この魔道具……詳しい人なら通信先を特定できると思う。もう回線を切られてる可能性は高いけど、腕の良い技師ならきっと」

「ふーん……」

 僕はナーシャの言葉に唸りながら、その白魚のような手に乗せられた銀色の貝殻を睨み付けた。

 この貝殻が、魔族と繋がる通信機であるなら……このゴブリンの群れは、どういう意図を持ってやって来たということになるんだろうか。はっきり言って、この程度の魔物の集団で街がどうにかなるとは思えない。

「ねぇ、皆はどう思う? このゴブリンの群れが……何の為に、ここに来たのか」

「……何の為、だろうね」

 アシラは考え込むように顎に手を当てた。因みに、まだ巣穴からは離れていない。念の為に証拠としてゴブリンの素材を袋に纏めているのと、ゴーレム達をそこらに散らばらせて自然に地面に還らせる為であった。この規模でゴーレムを同時に操れるというのは、余り誰彼構わず知られたいことでは無いからだ。

「侵略、って訳でもねーよな。質は悪くなかったかも知れねぇけど、この程度の量じゃ到底おれらの街は……イアビラは突破出来ねぇし」

「このゴブリンの群れだけならそうだけど、他にも同時に並行して集めてるなら無意味って訳でも無い。滅ぼす時に街から人を捕まえて、ここを中心に大繁殖して他の街に侵攻する戦力の一つとするのも有り得る」

「確かにな、裏に魔族が居るなら同時に他にも魔物とかの兵力を用意してて、ゴブリンの群れはその中のただの一つに過ぎないって可能性もあるよな」

 ウィーとナーシャが意見を交わすのを聞いて、僕は頷いた。そうだ、ゴブリンの群れが大きな役割を担っている訳では無くて、ただの数ある兵力の中の一つであるという可能性もあるんだ。

「ゴブリン達の質が良かった。他のゴブリンより頭も良くて、冷静だった。そういうゴブリンを態々使って来たってことは、ある程度彼らに理性を持って遂行させたい目的があったんじゃないかな。後ろに魔族が居るという前提だけど」

 逆に、アシラはゴブリンが何らかの役割を担っているんじゃないかという説を提言した。確かに、こっちも一理ある意見だ。

「まぁ、そうだよな……通信用の魔道具なんて持ってたってことは、少なくとも何か連絡し合う必要はあったってことだもんな」

「ただ、そこまでの大役を担ってたってことは有り得ないと思う。だとしたら、ここまで杜撰に森の中を出歩いて、駆除対象になるようなことはしない筈だから」

「そうだね……難しいね」

 散らばり始めた考察に、アシラが悩まし気に唸った。

「役割はあるけど、大役じゃなくて、侵略が目的だとしても主戦力は有り得ない。それに、恐らくはある程度の知能と通信機での意思疎通が必要になる役割……今の情報はこれくらいだよね」

「だな。ま、ここら辺も纏めてギルドに……ドリゥグに話せば良いだろ!」

「うん。念の為に、話すのはドリゥグさんだけにしておこう。魔族の件に続けて、ゴブリン達が送り込まれて来たと聞いたら……もしかしたら、混乱を生むかも知れない」

 アシラの言葉に、僕は頷いた。

「そうだね、そこら辺の情報の扱いはギルドの方に任せておく方が安心だ」

「ドリゥグの奴なら上手く考えてくれんだろうしな! おれたちは酒でも飲んで方針が決まるのを待っとこうぜ」

「……もし魔族が攻めて来るなら、こちらも備えが必要だと思う」

 ナーシャはそう言って僕の方をじっと見た。

「治は、私に魔術を教える必要があると思う」

「それかよ」

 僕は苦笑しながらそう返し、また今度暇な時にねと勿体振っておいた。
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