俺と召還魔法師と異世界改造

南柱骨太

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第1章:本物の魔女だった?

第1話 召還されちゃったんですか!

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 通常ならば「始まりの街」と呼ばれる場所。
 通常ならばログアウトした宿屋とか町の中央広場へと出るのだが、祐二は3次追加シナリオは初プレイのため、始まりの街の中央噴水広場へとログインするはずだった。
 ここは何? どこかの闘技場?

「あっ、あのっ!」
 左手から声がする。祐二が振り向くと、そこに美女が居た。
 背中くらいまでの緑の黒髪。黒皮製のワンピースっぽい服装に編み上げブーツ。目鼻立ちはすっきりとした、クールな美女である。
「あなたは‥‥ユージ殿で間違いはないか?」
 そう問われ、祐二は「ええ、そうですけど‥‥」と返した。
 祐二はその女性に見覚えがある。見事に中ボスとして祐二が設定した、あの召還魔法師であった。
「何これ? バグ?」
「‥‥やっと、やっと会えた!」
 女性は祐二の胸に飛び込んでくる。が、思わず避けてしまった。
 そのまま勢いづいて地面に転んでしまう女性。
「なぜ逃げるの! ひどい!!」
「いやいや、初対面で抱き付くとか、びっくりするでしょ、普通」
 それよりも祐二は、目の前の女性がひどく感情的なことに驚いていた。

 確かにこのゲームの中のプレイヤー以外のキャラNPCには意思や感情といったものがある。擬似的なものだがそう作られているからだ。なので町人や村人などと良い付き合いをすれば好かれ、逆ににひどい行いをすると、反撃されたり訴えられたり、最悪は捕まったりする。もちろん運営にではなく、NPCの自警団や王国騎士たちにだけれど。
 さらにはこれまでの人生記憶なども持っている。簡単なものだが。
 あと「自分はゲームの中の住人」という意識もあったりするが、それは大っぴらにはしない様子だ。
 プレイヤーが「地球という星にある日本という国の国民」と意識するのと同じように、「コンピュータゲームの世界にあるリットン王国の国民」といった具合に。最初から「ゲームの中」ということに疑問をもたないよう作られているのだから。
 さて、そのNPCである女性はというと。
「だって! だって、やっと会えたのに!」
 地面にへたり込んで、さめざめと泣いていた。
 祐二は、この女性をクールで冷徹な人格に設定したつもりだったのだが、何か変更されたのかと首をひねる。そもそもこの女性の許に飛ばされたのも疑問だ。
「あなたには、私の記憶はないの!?」
 祐二に無い訳がない。自分で設定したのだし。
 とりあえず事情を聞いてみる。
「そ、そうね、いきなり召還されたのだから、あなたも状況がわからないでしょうしね」
 涙を拭い、女性は小さく咳払いをした。
「私が新しい魔法で、あなたをこの世界に召還したの」
「なるほど、召還魔法使いだもんな、そういうことも出来るのか‥‥」
 ある意味納得だが、祐二はさらに質問する。
「しかしプレイヤーを召還するとか、そういう設定はアリなの?」
「あぁ、そこからなのね。ここはあなた達の知っている【ゲームの中】では無いから」


「‥‥‥‥はぁ???」


 あの後、少し混乱したけれど、ここで話す内容ではないとの女性の言葉で、女性の私室に案内された。
 女性はミラと名乗った。平民出身のためにあざなは無いとも。もちろん祐二はそれを知っているが、特には話題にせず自らも大江祐二だと返すのみ。
 大量の書物や魔法用具と思われる物がひしめくように陳列される室内、そんなそう広くもない部屋の中央にある大きなソファに座らされ、お茶を出されて「まずは話を聞いてくれ」と祐二は念押しされる。
「おそらく理解の及ばない部分もあるだろうから、ひと区切りまで説明させて欲しい」
「質問があったら?」
「後でいくらでもさせてあげる」
「わかった、話を聞こう」
 仕事でもよくあった事だ。質問は説明の後。

 そしてミラの口から聞かされたのは驚きの事実。
 ここがゲーム世界ではなく、よく似てはいるが全く違う【異世界】であること。

 延々と説明されたが、大まかな事情としてはこうだ。
●ここは異世界の、魔王の治めるゼファーレ国
●ミラは魔王軍の第7軍“暁の魔法団”の副団長
●幼い頃から「ユージ」という人物を知っていた
●また将来、魔王軍の召還術師として取り立てられることも知っていた
●早くから召還術を鍛え上げ、成長し自分はユージに恋しているのだと悟った
●深く召還術に関わることで、異世界の気配を感じられるようになった
●そして先程、異世界にユージが現れるのを感じ、召還した

「‥‥なるほど?」
 半分は理解したが、もう半分は疑問だらけ。
 なぜ異世界なのに祐二が設定した通りのミラが居るのかとか、ゲームと同じ世界が存在しているのかとか、そりゃもう山盛りに疑問だらけ。
「その疑問には明確に答えられないな。私とて全ての異世界に明るい訳ではない」
 ただ‥‥と続けようとして、ミラは言葉を選ぶ。
「ユージたちの言葉でいう“平行世界”には、そっくりな世界がたくさんあるし、似た世界は干渉し合うものらしい」
「つまり、たまたま俺の作った通りのミラが居て、たまたま俺が召還されたってことか」
「おそらく逆だね。ユージがその【設定】をする際、私という存在の影響を受けたんだ。ただイレギュラーだったのは、私がユージのことを好きだと【設定】したことだろうな」
 そして別の世界ではミラと同じ召還魔法師が居て、そちらでは本来の通りに魔王を敬愛しているのだろうと笑う。
「私は幸運だった。こうして異世界の住人であるユージと会うことができたのだから」
 まっすぐ見詰められ、そう言われると祐二も照れる。

 その後、雑多な確認のための話をして、祐二がこの世界で暮らさなきゃいけないのかとか、あっちでの仕事を放り出さなきゃいけないとか、ちょっと迷っているとミラが何かに気付いたようで慌て始めた。
「すまん、そろそろ制限時間らしい。送り返すぞ」
「えっ? 制限時間?」
「本体のユージがゲームを終えて【ログアウト】するようだ。早く帰さねば次の【ログイン】がいつになるやらわからない」
 帰れるの?と祐二は軽く混乱した。
 ネット小説でよく見る召還では、元の世界に戻れないとかあるのに。
 ミラは魔法を唱え、祐二にねだった。
「また近いうちにゲーム世界に来て。そうすればこちらにまた召還することができる」
 頼んだぞ! そんな叫びと共に祐二は無重力感を味わい、「始まりの街」の中央広場に居た。



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