俺と召還魔法師と異世界改造

南柱骨太

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第1章:本物の魔女だった?

第6話 魔王様と対話ですか!

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「失礼します」と少しばかり不安をにじませたミラが執務室を下がると、執務机の少女は左手の人差し指を立てて魔法を発動した。
 ゲーム内でよくある、魔法発動のキラキラエフェクトが少女を発端に、部屋を覆っていく様が祐二には見えていたのだ。おそらく普通の人には見えないものだろう。
「さて、ユージ殿‥‥‥‥いや、ユージ様、と言った方が良いのかな?」
 男性がそう話し出したので、そちらに目を向けるといつの間にか少女はペンを置き、祐二に目を向けていた。
 王族に多いと言われている漆黒の黒髪。机の向こうで見えないが長いと思われるおかっぱ頭に目立つティアラを冠し、らせん状に捩れた角を後方に伸ばしている。そして服装は金色の多いドレスのようだ。瞳は金色で縦長だった。
 やはりこの少女が魔王様なのか、と祐二は察した。
 すると話している側用らしき男は何者だろう。
「国王ともなると雑用が多くてな、ながらの面談で申し訳ない。あと、我は口が不自由でな、代理の答弁で勘弁して欲しい」
 側用の男はそういうことか、と祐二は納得した。
 同時に不安な顔をしていたらしい祐二に対し、男は話を続ける。
「この場では遠慮は要らん。不服があれば申してみよ」
「その‥‥どうして俺、じゃない私は様付けで呼ばれるのですか?」
 祐二の言葉に、それまで微笑を湛えていた魔王様は破顔する。やはり声は上げないが。
「何を申す、その気になればこの城ごと私を滅することが出来る御仁に、私が謙譲するのも当然じゃろう?」
 ひとしきり笑った後、元の微笑に戻った魔王様は、再度祐二を見据えた。
 いったいどこまで魔王は自分を知っているのだろう、そう祐二が警戒していると、魔王様はとんでもない事を語りだす。
「我々障害者にとっては、ワンダーワールドオンラインの開発者のひとり、大江祐二という御仁は神様と言っていい存在なのだぞ?」
 衝撃発言である。


 20**年に発売されたワンダーワールドオンラインは、それまでのVRバーチャル・リアリティゲームを革新したゲームで有名だった。
 また大江祐二という人物はVR技術を応用し、障害者向けに自治体からの補助金制度を制定させ、ゲーム内で健常者と同等に行動できるシステムを追加したのだそう。
 またVRデバイスを利用し、耳と口に不自由な者に音と声を、目の不自由な者には光を、手足の不自由な者には機械の手足を、それぞれ与えたのだと言う。
 もちろんそういった技術は、色んな研究機関が進めていたが、そこに更なる技術と資金を提供し、実用化に拍車をかけたのは大江祐二と人物に間違いはなかった。

「ごめんなさい、身に覚えがございません」
 そんな事を言われても、戸惑うばかりの祐二であった。
 立ちっ放しも何じゃろう、とソファーを勧められ、お茶とお茶菓子も出されている。上等な紅茶のようで、良い香りが祐二の鼻腔をくすぐっていた。
 魔王様は声もなく笑う。
「そうであろうな、その若さから見るにWWOに関わる前か、関わった直後の時代のようだしな」
 実際に言葉にしているのは側に控えている男性なのだが。
 魔王様が言うには、祐二の時代より30年程後のことらしい。
「ところで‥‥そういった事を知っている魔王様は、ひょっとして‥‥」
「うむ、我は召還者ではなく、転生者だ」

 魔王様の説明は続いた。
 VRデバイスのお陰で、幼い頃から普通に学校に通えたこと。
 規定年齢に達してからはWWOでもさんざん遊んだこと。
(VRゲームは、その刺激性のためR15指定が多い)
 順当な人生を歩み、50代でちょっと早い人生を終えたこと。
 そして気付いたら前の記憶を有したまま、魔王の血筋に生まれていたこと。
「まあ諸々あった訳だが、諸事情あって我が当代の魔王に就任した訳だ」
「あ、あの‥‥そういう話題は外に漏れては大変なのでは?」
 祐二の心配も魔王様は笑い飛ばす。
「なに、情報は漏れないように結界を張っておる」
 どうやら先程の魔法は、そういう結界だったらしい。
 しかし祐二はその不安を、傍らの男性に向けた視線で現す。
「私めの言葉で失礼いたします。陛下の幼少の頃から仕えて20年、この人生は陛下に捧げておりますれば」
 と釈明した。
 その言葉に安心する祐二だが、別のところにも引っかかった。
「‥‥20年?」
「この身体か?」
 確かに少女だ。年齢的に10歳を越え、15に届いているかどうかという外見だった。
 再度男性は魔王様の言葉を代弁する。
「魔王の血筋は他の魔族とは少々違っていてな、成長も老化も倍くらい違うのだ」
 そう言われ、祐二は魔王様のステータスを確認する。確かに年齢欄には17歳とある。つまりは人間でいう13~14歳といった外見である。
「勝手に他人ひとの年齢を見るでない!」
 祐二は叱られた。魔王様も不快そうな表情をしている。
 でも、え、あれ? 祐二は戸惑った。
「メッセージウィンドウは他からは見えないハズなんですが?」
「そうじゃな、そこも説明しておくか」
 代弁しながら男性は少し慌てている。それに対し魔王様は笑顔で返す。
 口角の吊り上った、ニヤリとも言うべき笑顔だ。
「我は特殊な能力があってな、前の世で超能力というべき能力ちからじゃ」


 もう今日何度目かもわからない衝撃を、祐二は受けていた。
 つまり魔王様の説明ではこういうことらしい。

●前世の記憶持ちでいろんな知識を有していること
●魔法とは別に各種超能力を扱えること
●側用人とはテレパシーで意思疎通できること
●この能力と強大な魔力で魔王に即位したこと
●この事情は両親と側用人のオーバルしか知らないこと
●昨日の巨大な魔法を感じ、ミラを監視していたこと
●その会話内容からユージを大江祐二だと判断したこと
●そして今、祐二が魔王の年齢に驚いたことをテレパシーで知ったこと

「‥‥そんなこと、俺に明かして大丈夫なんですか?」
 何か色々と衝撃的過ぎて、祐二も口調の崩れていることに気付いていない。
「構わぬ、祐二殿に信用してもらうには、こちらの手の内を明かしておかねばな」
 魔王様はドヤ顔で、オーバルという側用人に語らせた。
「それで、じゃ」
 話を続け、魔王様は祐二の能力を確認してくる。
「ゲーム内でのメニューが使えると、そういう訳じゃな?」
「全て確認した訳ではないですが、おそらく開発者専用のメニューも使えると思います」
「なるほど、ミラが内緒にしようと思う訳だ。我もその策に賛成じゃ」
 ある程度祐二たちの事情を知っているからか、鼻息も荒く魔王様はそう応じた。
 美少女なのに‥‥ちょっと残念だ。
「WWOは開始から1年経っていないのか‥‥」
 祐二の説明に納得したのか、魔王様はこう続けた。
「では祐二殿には今後、障害者への補助をお願いしたい」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」
 その言葉に祐二は慌てる。それも当然だ。
「俺は一介の技術者に過ぎません! そんな事業展開とか、荷が重過ぎます!」
 祐二は開発陣の中でも底辺に近い下っ端なのだから。
 しかし魔王様は動じない。
「なに、すぐという訳でもない。時間をかけて進めてくれれば良いのじゃ」
 それに、と魔王様も。
「我の居た世界と、祐二殿の世界が同じ訳でもないからな」
「あ‥‥」
 そうか、と祐二も思い当たる。
 ミラの説明にあった「似たような世界は無数に存在するという、平行世界理論。祐二と魔王様が同じ世界に居たとは限らないのだ。しかも何十年という時間差もある。
「なので元の世界に居るという、祐二殿の本体に少しばかりの努力をしてもらえれば、それで良い」
 そう言われれば、祐二も「出来るだけの事はしましょう」とうなずくしかない。
 魔王様は無言で、嬉しそうに笑った。


 その後も色々な情報のすり合わせを行い、あまりミラを待たせるのも何じゃろうと、祐二は退出を勧められた。
「ミラには‥‥隠し事はしたくないのですが‥‥」
 祐二がそう告げると、魔王様は平気な顔で。
「ちゃんと口止めしてくれればかまわん」
 そう返した。良いのかそれで。
「隠し事か‥‥祐二殿にとってミラは大事な相手になったのじゃな」
「ええ、できればずっとこの世界に留まりたい程には」
 キッパリとしたその返事に、魔王様はちょっと黒い笑顔を浮かべる。
「残念じゃな、あわ好くばとか思ったのじゃが‥‥」
 ソファーから立ち上がった祐二は、魔王様のその言葉に慌てる。
 そういうのは止めてください、そう言って逃げた。
「わが国は一夫多妻が認められておるからの~」
 そんなエコーが後ろから聞こえたが、逃げ切るように祐二はドアを開けて閉める。

「ど、どうしたのだユージ?」
 慌てた様子の祐二に、ミラは首をかしげ、祐二は取り繕って笑うしかない。
「取って食われるかと思った‥‥」


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