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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 02-04
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「なに、あれ」
風葉の視線を釘付ける魔法陣は、スペクターの背後。今もなお虹を流動させている、壁の上に刻まれていた。
泉の身長を二回りほど超えている円陣は、どこか精密回路にも似ている幾何学模様の中に、輝く黒色を脈動させている。
露骨なまでに霊力の流れを浮き彫りにする、何かの術式。
それが一体何なのか、辰巳は良く知っていた。
「鎧装展開術式……!?」
色や細部の造りこそ違うが、間違いない。
スペクターは、憑依している泉ごと、本格的な戦闘態勢に入るつもりなのだ。
「――ッ!」
そんな事を許すわけにはいかない。発動する前に、何としても潰す。
即座に突撃すべく、姿勢をかがめる辰巳。だがその一歩が踏み出されるよりも、スペクターの術式が先んじる。
「鎧装ぉぉぅっ! 展開ッ!」
黒が、一帯を蹂躙した。
掛け声を合図に黒い魔法陣から噴出した霊力の余波が、三百六十度余すこと無く突き抜けたのだ。
スペクターの叫びと共に放たれたそれは、日乃栄高校の廊下のみならず、辰巳や風葉の視界までも真っ黒に塗り潰す。
「きゃあ!?」
「むっ!?」
即座に足を止め、防御姿勢に切り替える辰巳。
泉の位置は把握できているとは言え、闇雲に突っ込めばそれこそ相手の思う壺だ。
故に全神経を尖らせ、辰巳は視界が晴れるのをじっと待つ。
光であれ影であれ、鎧装展開術式の目眩ましは、鎧装を呼び出す際の余剰霊力を放射しているに過ぎない。すぐに消えるはずだ。
「くらーいー!?」
それを知らない若干一名が背後でうろたえていたが、辰巳は微動だにしない。
かくして数秒後、真夜中のような黒色は急速に消え始める。
読み通りだった辰巳はまっすぐに、翻弄されるままの風葉は恐る恐ると、偽の夜が開けた廊下の向こうを見やる。
虹色の壁は、消失していた。
泉の姿も、消失していた。
代わりに居たのはただ一匹の、異形としか言いようのない怪物だった。
風葉の視線を釘付ける魔法陣は、スペクターの背後。今もなお虹を流動させている、壁の上に刻まれていた。
泉の身長を二回りほど超えている円陣は、どこか精密回路にも似ている幾何学模様の中に、輝く黒色を脈動させている。
露骨なまでに霊力の流れを浮き彫りにする、何かの術式。
それが一体何なのか、辰巳は良く知っていた。
「鎧装展開術式……!?」
色や細部の造りこそ違うが、間違いない。
スペクターは、憑依している泉ごと、本格的な戦闘態勢に入るつもりなのだ。
「――ッ!」
そんな事を許すわけにはいかない。発動する前に、何としても潰す。
即座に突撃すべく、姿勢をかがめる辰巳。だがその一歩が踏み出されるよりも、スペクターの術式が先んじる。
「鎧装ぉぉぅっ! 展開ッ!」
黒が、一帯を蹂躙した。
掛け声を合図に黒い魔法陣から噴出した霊力の余波が、三百六十度余すこと無く突き抜けたのだ。
スペクターの叫びと共に放たれたそれは、日乃栄高校の廊下のみならず、辰巳や風葉の視界までも真っ黒に塗り潰す。
「きゃあ!?」
「むっ!?」
即座に足を止め、防御姿勢に切り替える辰巳。
泉の位置は把握できているとは言え、闇雲に突っ込めばそれこそ相手の思う壺だ。
故に全神経を尖らせ、辰巳は視界が晴れるのをじっと待つ。
光であれ影であれ、鎧装展開術式の目眩ましは、鎧装を呼び出す際の余剰霊力を放射しているに過ぎない。すぐに消えるはずだ。
「くらーいー!?」
それを知らない若干一名が背後でうろたえていたが、辰巳は微動だにしない。
かくして数秒後、真夜中のような黒色は急速に消え始める。
読み通りだった辰巳はまっすぐに、翻弄されるままの風葉は恐る恐ると、偽の夜が開けた廊下の向こうを見やる。
虹色の壁は、消失していた。
泉の姿も、消失していた。
代わりに居たのはただ一匹の、異形としか言いようのない怪物だった。
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