神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
57 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter02 凪守 02-04

しおりを挟む
「さて、そいじゃ始めますかねー。まずは日乃栄高校の霊地へ現れた敵性魔術師、仮称スペクターへの対策だ」
 言いつつ、巌はブリーフケースから書類を取り出して全員に配る。
 右肩をホチキスで留められたA4のコピー用紙は、巌が言った通りスペクターに関する情報が簡潔にまとめられていた。
「ま、会議ってもそんな堅いもんじゃないからさー。取りあえず、霧宮くんはお茶でも飲みながら気楽に聞き流しててよ」
「あ、はい」
 頷く風葉。議題と書類の内容は大変真面目なのだが、それを配った当人がもしゃもしゃと桜餅をかじっているので、いまいち緊張感に欠けていた。
「さて。まずは一ページ目、先日の会敵時に幻燈結界げんとうけっかいが発動してからの一部始終をまとめてあるワケだが、辰巳、間違いないか?」
「……ああ、おおむねこの通りだ」
 書類を目で追いつつ頷く辰巳。風葉も手元にある書類を見てみると、そこには確かに昨日の戦いの流れが、大まかにだが書き記されていた。
 ファントム4が未確認の高霊力保持者を保護。緊急用の幻燈結界が展開。
 仮称スペクターと会敵。交戦。撃破。
 キクロプス出現。オウガローダー出動。キクロプス、並びに眷属の竜牙兵ドラゴントゥースウォリアーを調伏。
 素人の風葉が見ても間違いない、確かな戦闘記録だ。
 その記録を見ながら、雷蔵は首を捻る。
「ふむ。にしても此奴は訳が分からん行動をしとるのう。一体何がしたいのだ?」
「うん。僕も一晩考えてはみたんだけど、今ひとつまとまらないんだよねー。あ、おかわり貰える?」
 空になった湯飲みを雷蔵に渡しつつ、巌は淡々と推論を並べる。
「どんな行動であれ、根底には必ず理由がある。腹が減ったからメシを食う、眠いから寝る、ヒマだから遊ぶ、とかねー。でもスペクターの行動や言動をいくら洗っても、それが見えて来る気配が無いんだなコレが」
「そのようじゃのう、と。ほれ二杯目」
「おう、あんがとさん」
 注ぎ終わったおかわりを巌に渡しつつ、雷蔵は口を挟む。
「しかしだ。ならば、スペクターにこんな行動を起こさせた元凶、黒幕が居るのでは無いか?」
「うん、そう考えれば取りあえず辻褄は合うよねー。誰かがスペクターに、凪守へケンカを売らせる理由を提供したワケだ。ま、よーするに鉄砲玉だな」
「おおっぴらに騒ぎを起こすワケにはいかないから、か。だが、だとしたらなぜ元凶はそんな回りくどい真似をする? てか、そもそもホントに元凶なんているのか?」
 憮然と言いつつ、辰巳もお茶を一口啜り、すぐさま口を離した。実は結構猫舌気味のようだ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...