58 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 02-05
しおりを挟む
「うんうん、その疑問ももっともだ。と言うわけで資料のページを捲ってくれ」
巌の言葉に従い、ペラリとページを捲る一同。次項にはあの時スペクターが発動した鎧装展開術式、フェンリルの写真と推測データが載っていた。
小さいが、それでも細部が良く分かるその写真に、風葉は首を傾げる。
「これ、いつ撮ったの?」
「ああ、俺の鎧装のバイザーは、霊力センサー意外にも色々機能があるんだ。カメラ機能ももちろんあるさ」
さらりと言ってのける辰巳の隣で、巌はフェンリルの写真をぺちんと弾く。
「コレ、こいつが使ってる鎧装展開術式。良く考えるとおかしいんだよねー。霊力で武具を造る、って言う発想自体は随分昔からある。けど、コイツはいくら何でも常軌を逸してる」
「泉……ええと、私の友達ごと変わったからですか?」
分からない事は未だに多いが、それでも他人事ではない内容に、風葉は怖ず怖ずと疑問を挟む。
「ふふ、確かにそこも特徴的な部分ではあるねー。けど、本質的な問題はそこじゃない。人体の造りを大きく逸脱しているトコさ。ところでおかわりヨロシク」
「飲むペース早いですね」
反射的に突っ込んでしまう風葉。だが巌は気にしない。
「いやーお客さんが居ると緊張しちゃってねー」
「いつもこれくらいだろ」
「そーだっけ? まぁ健康には良いんだからいいじゃん」
「ほれ、駆けつけ三杯」
「お、あんがとさん」
雷蔵から三度目の湯飲みを受け取り、マイペースに説明を再開する巌。
「さて。見た目はどうあれ、鎧装ってのは基本的に武具だ。武具ってのは、つまるところ人間が扱える形をした道具だ。で、その前提を踏まえた上で、もっかい資料を見てみよーか」
そう言って巌が皆の視線を動かした矢先、辰巳がおもむろに口を開いた。
「……断じて武具なんてもんじゃなかったな、アレは。明らかに身体そのものが変質していた」
フェンリルと実際に拳を交えた辰巳は、コメカミを小突きながら昨日の戦いを思い出す。
「どんな魔術師だろうと普通の人間である限り、人間のカタチを大きく変えるような鎧装――手足を増やしたり、尻尾を生やしたりするような鎧装を使う事は出来ない。それが出来るのは、何らかの方法で、普通を止めちまったヤツだけだ」
一瞬、辰巳の瞳から色が消える。
プラスチックのように硬質な眼差しは、戦場に立っていた時と同じ形をしている。
だが、どうしてそんな顔をするのか。
確かめる暇も無く、続く巌の説明が疑問を押し流していく。
巌の言葉に従い、ペラリとページを捲る一同。次項にはあの時スペクターが発動した鎧装展開術式、フェンリルの写真と推測データが載っていた。
小さいが、それでも細部が良く分かるその写真に、風葉は首を傾げる。
「これ、いつ撮ったの?」
「ああ、俺の鎧装のバイザーは、霊力センサー意外にも色々機能があるんだ。カメラ機能ももちろんあるさ」
さらりと言ってのける辰巳の隣で、巌はフェンリルの写真をぺちんと弾く。
「コレ、こいつが使ってる鎧装展開術式。良く考えるとおかしいんだよねー。霊力で武具を造る、って言う発想自体は随分昔からある。けど、コイツはいくら何でも常軌を逸してる」
「泉……ええと、私の友達ごと変わったからですか?」
分からない事は未だに多いが、それでも他人事ではない内容に、風葉は怖ず怖ずと疑問を挟む。
「ふふ、確かにそこも特徴的な部分ではあるねー。けど、本質的な問題はそこじゃない。人体の造りを大きく逸脱しているトコさ。ところでおかわりヨロシク」
「飲むペース早いですね」
反射的に突っ込んでしまう風葉。だが巌は気にしない。
「いやーお客さんが居ると緊張しちゃってねー」
「いつもこれくらいだろ」
「そーだっけ? まぁ健康には良いんだからいいじゃん」
「ほれ、駆けつけ三杯」
「お、あんがとさん」
雷蔵から三度目の湯飲みを受け取り、マイペースに説明を再開する巌。
「さて。見た目はどうあれ、鎧装ってのは基本的に武具だ。武具ってのは、つまるところ人間が扱える形をした道具だ。で、その前提を踏まえた上で、もっかい資料を見てみよーか」
そう言って巌が皆の視線を動かした矢先、辰巳がおもむろに口を開いた。
「……断じて武具なんてもんじゃなかったな、アレは。明らかに身体そのものが変質していた」
フェンリルと実際に拳を交えた辰巳は、コメカミを小突きながら昨日の戦いを思い出す。
「どんな魔術師だろうと普通の人間である限り、人間のカタチを大きく変えるような鎧装――手足を増やしたり、尻尾を生やしたりするような鎧装を使う事は出来ない。それが出来るのは、何らかの方法で、普通を止めちまったヤツだけだ」
一瞬、辰巳の瞳から色が消える。
プラスチックのように硬質な眼差しは、戦場に立っていた時と同じ形をしている。
だが、どうしてそんな顔をするのか。
確かめる暇も無く、続く巌の説明が疑問を押し流していく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
平凡志望なのにスキル【一日一回ガチャ】がSSS級アイテムばかり排出するせいで、学園最強のクール美少女に勘違いされて溺愛される日々が始まった
久遠翠
ファンタジー
平凡こそが至高。そう信じて生きる高校生・神谷湊に発現したスキルは【1日1回ガチャ】。出てくるのは地味なアイテムばかり…と思いきや、時々混じるSSS級の神アイテムが、彼の平凡な日常を木っ端微塵に破壊していく!
ひょんなことから、クラス一の美少女で高嶺の花・月島凛の窮地を救ってしまった湊。正体を隠したはずが、ガチャで手に入れたトンデモアイテムのせいで、次々とボロが出てしまう。
「あなた、一体何者なの…?」
クールな彼女からの疑いと興味は、やがて熱烈なアプローチへと変わり…!?
平凡を愛する男と、彼を最強だと勘違いしたクール美少女、そして秘密を抱えた世話焼き幼馴染が織りなす、勘違い満載の学園ダンジョン・ラブコメ、ここに開幕!
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
◆アルファポリスの24hポイントって?◆「1時間で消滅する数百ptの謎」や「投稿インセンティブ」「読者数/PV早見表」等の考察・所感エッセイ
カワカツ
エッセイ・ノンフィクション
◆24h.ptから算出する「読者(閲覧・PV)数確認早見表」を追加しました。各カテゴリ100人までの読者数を確認可能です。自作品の読者数把握の参考にご利用下さい。※P.15〜P.20に掲載
(2023.9.8時点確認の各カテゴリptより算出)
◆「結局、アルファポリスの24hポイントって何なの!」ってモヤモヤ感を短いエッセイとして書きなぐっていましたが、途中から『24hポイントの仕組み考察』になってしまいました。
◆「せっかく増えた数百ptが1時間足らずで消えてしまってる?!」とか、「24h.ptは分かるけど、結局、何人の読者さんが見てくれてるの?」など、気付いた事や疑問などをつらつら上げています。
婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
僕の前世は日本人で25歳の営業マン。社畜のように働き、過労死。目が覚めれば妹が大好きだった少女漫画のヒロインを苦しめる悪役令息アドルフ・ヴァレンシュタインとして転生していた。しかも彼はヒロインの婚約者で、最終的にメインヒーローによって国を追放されてしまう運命。そこで僕は運命を回避する為に近い将来彼女に婚約解消を告げ、ヒロインとヒーローの仲を取り持つことに決めた――。
※他サイトでも投稿中
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる