56 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 02-03
しおりを挟む
「あ、これはご丁寧に……って、五辻?」
思わず、風葉は辰巳の姿を探す。いつの間にか右手側の長ソファに腰掛けていた辰巳は、先んじて頷く。
「ああ。俺の――保護者、だな」
家族、とは言わない曖昧な返答。風葉も二人の顔を見比べるが、確かに似ているとは言えない。
何か、事情があるのだろう。
「あ、の」
「それはともかくとして辰巳、いつまで僕を待たせる気だい?」
詰まってしまった風葉の言葉を遮るように、今度は左手側のソファに座る男が声を上げた。
男、といってもとにかく若い。少年と言っても良いくらいに若い。間違いなく風葉より三つは下の外見だ。
一応凪守の制服を着てはいるが、サイズがあっていないのか袖の辺りがぶかぶかしている。
シミどころかホクロ一つ見当たらない肌は、白磁、と言うより病的なまでに真っ白い。だがそれがかえって紫色の短い猫っ毛と、大きな金色の瞳を浮き彫りにしている。
鼻梁は当然のように細く高く、その下にある小さな唇は鮮血のように艶やかな赤。
そんな、控えめに言っても美少年と呼んで差し支えない彼は今、尊大に腕と足を組みながら辰巳に流し目を向けていた。
どうにも漂っている奇妙な色気にドギマギする風葉だったが、それを向けられた当の辰巳は大した感慨もなく、軽いため息すらつきながらビニール袋を持ち上げる。
「これだろ、冥」
言いつつ、辰巳はテーブルの上にビニール袋の中身――すなわち、桜餅のパックを置いた。
「……と、言う事は、キミがファントム3?」
目を丸くする風葉。
確かに通信越しに聞こえた声は若そうだったが、それにしてもここまでだとは思わなかったのだ。
「冥・ローウェルだ」
と、端的に名乗った冥は満足そうに桜餅を眺めつつ、しかし手を出そうとはしない。
「食べないのか?」
ビニール袋を折り畳む辰巳に、冥はフンと鼻を鳴らす。
「解ってないな。和菓子は緑茶という相方があってこそ本当の輝きを見せるのだ」
「ああそう。雷蔵さん待ちな」
さした感慨もなく、小さくなったビニール袋をポケットにしまう辰巳。丁度その時、司令室のドアが開いて雷蔵が入ってきた。
「おう、待たせたのう」
左手にポット、右手に急須やら湯飲みと言ったお茶セット一式が乗るお盆を持った雷蔵は、テキパキとお茶の準備をしてから辰巳の隣に腰を下ろす。ちなみにお茶菓子は辰巳の買ってきた桜餅である。
かくして満席となった応接スペースで、巌はお茶を一啜りする。
「なーんか面接みたいだねー」
「それにしちゃ人数多すぎだろ」
まぁねー、と辰巳の指摘を受け流し、巌はソファ脇においてあったブリーフケースへ手を伸ばす。
思わず、風葉は辰巳の姿を探す。いつの間にか右手側の長ソファに腰掛けていた辰巳は、先んじて頷く。
「ああ。俺の――保護者、だな」
家族、とは言わない曖昧な返答。風葉も二人の顔を見比べるが、確かに似ているとは言えない。
何か、事情があるのだろう。
「あ、の」
「それはともかくとして辰巳、いつまで僕を待たせる気だい?」
詰まってしまった風葉の言葉を遮るように、今度は左手側のソファに座る男が声を上げた。
男、といってもとにかく若い。少年と言っても良いくらいに若い。間違いなく風葉より三つは下の外見だ。
一応凪守の制服を着てはいるが、サイズがあっていないのか袖の辺りがぶかぶかしている。
シミどころかホクロ一つ見当たらない肌は、白磁、と言うより病的なまでに真っ白い。だがそれがかえって紫色の短い猫っ毛と、大きな金色の瞳を浮き彫りにしている。
鼻梁は当然のように細く高く、その下にある小さな唇は鮮血のように艶やかな赤。
そんな、控えめに言っても美少年と呼んで差し支えない彼は今、尊大に腕と足を組みながら辰巳に流し目を向けていた。
どうにも漂っている奇妙な色気にドギマギする風葉だったが、それを向けられた当の辰巳は大した感慨もなく、軽いため息すらつきながらビニール袋を持ち上げる。
「これだろ、冥」
言いつつ、辰巳はテーブルの上にビニール袋の中身――すなわち、桜餅のパックを置いた。
「……と、言う事は、キミがファントム3?」
目を丸くする風葉。
確かに通信越しに聞こえた声は若そうだったが、それにしてもここまでだとは思わなかったのだ。
「冥・ローウェルだ」
と、端的に名乗った冥は満足そうに桜餅を眺めつつ、しかし手を出そうとはしない。
「食べないのか?」
ビニール袋を折り畳む辰巳に、冥はフンと鼻を鳴らす。
「解ってないな。和菓子は緑茶という相方があってこそ本当の輝きを見せるのだ」
「ああそう。雷蔵さん待ちな」
さした感慨もなく、小さくなったビニール袋をポケットにしまう辰巳。丁度その時、司令室のドアが開いて雷蔵が入ってきた。
「おう、待たせたのう」
左手にポット、右手に急須やら湯飲みと言ったお茶セット一式が乗るお盆を持った雷蔵は、テキパキとお茶の準備をしてから辰巳の隣に腰を下ろす。ちなみにお茶菓子は辰巳の買ってきた桜餅である。
かくして満席となった応接スペースで、巌はお茶を一啜りする。
「なーんか面接みたいだねー」
「それにしちゃ人数多すぎだろ」
まぁねー、と辰巳の指摘を受け流し、巌はソファ脇においてあったブリーフケースへ手を伸ばす。
0
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる