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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 02-01
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時間は少々さかのぼり、朝六時三十分。日乃栄高校翠明寮、男子棟三○一号室。
この日、辰巳は最悪な気分で目を覚ました。
「……あー」
眠れなかった訳では無い。身体の調子はすこぶる良好、いつも通りのコンディションだ。
だというのに、どうにも調子がおかしい。
理由は辰巳自身、分かりきっている。昨日風葉と話した事柄が、心のどこかで尾を引いているのだ。
そう遠くないうちに、風葉はフェンリルを抜き取られる。その上で、凪守に関わった記憶は全て改竄される。そう珍しくも無い、何かの拍子でこちら側と接点を持った一般人から秘密を守るための措置だ。
だから程なく風葉との関係は、事件が起きる前の顔見知りレベルに戻るだろう。
それからギノアに関するいざこざを終わらせてしまえば、この一件は全て終わりだ。世は全て事も無く、日乃栄高校には平凡な日常が戻ってくる。
だというのに。
「引っかかりがあるのは、何でかね……」
らしくない。
ぐしぐしと寝癖頭をかきながら、取りあえず辰巳はジョギングするために部屋を出た。
いつもの日課だという事もあるが、それ以上にとにかく何か、気晴らしをしたかったのだ。
午前七時三十分。
気分はさっぱり晴れなかった。
「ああもう」
それでも日常生活をこなすべく、辰巳は食堂で黙々と朝食をかきこんだ後、自室に戻って速やかに着替えを済ませる。
気付け代わりに冷蔵庫から牛乳を取り出してガブ飲みし、忘れ物が無いか確認し、さほど必要性を感じない鍵をかけて学校を目指す。
まったくもっていつもと変わらない、五辻辰巳の登校風景。
それを、一人の女生徒が途中で阻んだ。
「……やっほう」
霧宮風葉である。
「……やぁ」
知らず、辰巳は廊下の真ん中で足を止めた。
昨日と同じ事務室が見える窓の脇、昨日と同じ黒髪のポニーテール姿の風葉。
違うのは制服を着ている事と、鞄を提げている事。
それから何よりも、微妙な表情をしている事だろう。
怒っているような、悲しんでいるような。そんな顔だ。
何故そうしているのか。理由は薄々検討はつくが、あえて辰巳は知らぬふりをした。
この日、辰巳は最悪な気分で目を覚ました。
「……あー」
眠れなかった訳では無い。身体の調子はすこぶる良好、いつも通りのコンディションだ。
だというのに、どうにも調子がおかしい。
理由は辰巳自身、分かりきっている。昨日風葉と話した事柄が、心のどこかで尾を引いているのだ。
そう遠くないうちに、風葉はフェンリルを抜き取られる。その上で、凪守に関わった記憶は全て改竄される。そう珍しくも無い、何かの拍子でこちら側と接点を持った一般人から秘密を守るための措置だ。
だから程なく風葉との関係は、事件が起きる前の顔見知りレベルに戻るだろう。
それからギノアに関するいざこざを終わらせてしまえば、この一件は全て終わりだ。世は全て事も無く、日乃栄高校には平凡な日常が戻ってくる。
だというのに。
「引っかかりがあるのは、何でかね……」
らしくない。
ぐしぐしと寝癖頭をかきながら、取りあえず辰巳はジョギングするために部屋を出た。
いつもの日課だという事もあるが、それ以上にとにかく何か、気晴らしをしたかったのだ。
午前七時三十分。
気分はさっぱり晴れなかった。
「ああもう」
それでも日常生活をこなすべく、辰巳は食堂で黙々と朝食をかきこんだ後、自室に戻って速やかに着替えを済ませる。
気付け代わりに冷蔵庫から牛乳を取り出してガブ飲みし、忘れ物が無いか確認し、さほど必要性を感じない鍵をかけて学校を目指す。
まったくもっていつもと変わらない、五辻辰巳の登校風景。
それを、一人の女生徒が途中で阻んだ。
「……やっほう」
霧宮風葉である。
「……やぁ」
知らず、辰巳は廊下の真ん中で足を止めた。
昨日と同じ事務室が見える窓の脇、昨日と同じ黒髪のポニーテール姿の風葉。
違うのは制服を着ている事と、鞄を提げている事。
それから何よりも、微妙な表情をしている事だろう。
怒っているような、悲しんでいるような。そんな顔だ。
何故そうしているのか。理由は薄々検討はつくが、あえて辰巳は知らぬふりをした。
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