神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 03-02

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 このコートに縫われている刺繍――もとい、跳躍術式こそ、フェンリル状態でもないギノアが高高度の跳躍を行えた理由だ。コートの裾から圧縮空気を爆発的に噴出させる事で、任意の方向への大跳躍を可能とするのだ。
「では、こちらの番ですねぇっ!」
 笑みを崩さぬまま、ギノアは跳躍術式を再駆動。
 墨色の空に大きく飛び上がったギノアは、杖の照準を辰巳に向けながら跳躍術式を更に連続駆動させる。
 これにより、ギノアは空中で嵐のごとくデタラメに跳ね回りながら、光弾を矢継ぎ早に連射するという芸当を見せた。
 縦横無尽な動きから放たれる光の雨に、辰巳はいささか目を剥く。
「――ッ!」
 炸裂が、辺りを揺るがした。
「ふぅむ?」
 立ち上る爆煙を見やりながら、優雅に着地するギノア。当然のように十五メートルの距離を保ちながら、ゆっくりと杖を一撫でする。
 着弾はした。爆煙を潜る影を見なかったのがその証拠だ。
 だが、この程度であのファントム4が終わる筈も無い。
 事実、辰巳は晴れ行く煙の中から姿を現した。
「すぅ――」
 両拳を下げながら残心する辰巳は、無傷であった。装甲の欠損すらない。なぜか両拳が微かに煙を噴いていたが、それくらいだ。
 動いた様子は無い。両足は肩幅に開かれたまま、地面をしっかと踏みしめている。
 ならば今、辰巳はどうやって光弾の雨をかいくぐったのか。
 簡単な話だ。辰巳は、高速の連続突きで全ての光弾を打ち落としたのだ。
「ハハハ! 素晴らしい! 素晴らしい技量ですよ! それでこそ潰す甲斐があるというものです!」
「そう褒めるなよ。照れちまうじゃないか」
 言いつつ、辰巳は左腕で口元を覆う。本当に照れ隠しをするように。
 だが、目的はもちろん違う。
「セット! ハンドガン!」
『Roger HandGun Etherealize』
 目には目を、歯には歯を、飛び道具には飛び道具を。
 Eマテリアルからこぼれ落ちる光を掴み取り、そのまままっすぐに突きつける辰巳。
 数秒の動作中に光は霊力武装である自動拳銃へと姿を変え、銃身内部に霊力が満ちる。
 照準、発砲。
 一、二、三。脳天と心臓と腹部をそれぞれ狙った銃弾は、狙い違わずギノアに命中。
 そのまま、空気中に溶けて消えた。
 ギノアのコートに、穴は無い。当然のごとく、脳天にも無い。焦げ目すら無い。
 まったくの無傷であった。
「いやいや! 危ないですねぇ!」
 大げさにコートを払いながら、再び哄笑するギノア。
 銃弾は、僅かなへこみすら作れなかった。どうやら跳躍術式だけでなく、強固な防護術式もあのコートには張り巡らされているらしい。辰巳が今持っている豆鉄砲程度では、何発撃っても結果は同じだろう。
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