神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
108 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 06-05

しおりを挟む
『どんな連中が後ろについてるかは分からない。けど、ソイツはかなりの切れ者のようだね。辰巳との戦闘記録から、それが分かるよ』
「ファントム4、と呼んでやらんと怒るぞ?」
 にやりと笑う冥に、巌もつられて口元を緩める。
『あー。まぁ良いじゃないか、本人いないし』
 言いつつ、巌はファントム4こと辰巳とギノアが交戦したデータを改めて検分する。
『しかしまぁ、人造のRフィールドか。どこの誰かは知らないけど、とんでもない物を造ってくれたもんだね』
「だな。しかしそうなると、その人造Rフィールドを壊しちまうかもしれんフェンリルは、連中からすりゃかえって危険要素なワケだ!」
 脅威を目の前に、しかし利英は歯を剥き出しにして笑う。
『ああ。だから敵はフェンリルを、僕達凪守に排除させようとしたんだ。霧宮くんの友人を人質にとって、あたかもそれが重要であるかのように見せかけてね。更に、別の策も平行していた』
 巌がマウスをクリックすると、立体映像モニタの一つに新たな画像が表示された。
 同日にオウガと戦った一つ目の巨人、キクロプスである。
『それが、このキクロプスだ。これで莫大な霊力を持ち去る――ようなフリをして、ギノアはある仕掛けを日乃栄霊地の近くに施した』
 キクロプスの写真がやや縮小され、隣に霊地の霊力量を示すグラフが表示される。
 パラメータは、ゼロ。現在、まったくのカラになっている日乃栄霊地の現状データだ。
『恐らくその仕掛けによって、日乃栄霊地はたった数分で素寒貧になってしまった。多分オウガとの戦闘中、キクロプスがばらまいた牙バルカンに、何か仕掛けてあったんだろうな』
「……あ!」
 と、そこで呆気に取られたのは風葉だ。
「どうしたんだい?」
「あ、はい、あのその。……ロボットに乗ってた時、何か、変な音を聞いたんですよ。こっちの耳で」
 言いつつ、風葉は未だカムフラージュ中である頭上の犬耳を指差す。
 憑依レベルが低いとはいえ、風葉の犬耳フェンリルは飾りではない。危険な術式の気配を本能レベルで察知し、駆動音を聴覚で捉えていたのである。
 ――後の調査で判明する事だが、キクロプスはオウガとの戦闘中、ばら撒いた牙の中に解析術式を刻んだ物を混ぜていたのだ。風葉がオウガに乗っていた時、気を取られた斜め下の一軒家に着弾したのが、その一つである。
 総数は四。オウガへの掃射に紛れて発射されたそれは、幻燈結界の効力を用いて民家の内部へ透過。ターゲットとなる家は事前に調査されていたようで、近隣住民まで含めて霊的感覚は皆無。故に幻燈結界が途切れた後も、誰にも見えはしなかった。
 かくて近隣住人の霊力を吸収しながら、霊脈の動きを密かに記録しつつ、四つの不発弾は待っていたのだ。
 つい今しがた、×印となって伸長した蜘蛛の巣の先端を。
 術者による、回収を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...