神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
138 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 11-09

しおりを挟む
「…………あ?」
 辰巳は目をむいた。
 今まで潜ったどんな修羅場より、それこそ神影鎧装オーディンを初めて見た時よりも、辰巳は目をむいた。
「正確には、その生き方が嫌いなんだよ。昔の私に似てるから」
 粛々と言い放つ風葉の横顔を、銀色の光が照らし出す。光源は辰巳の左手首に装着されたEマテリアルである。最適化が完了したのだ。
「――、ええい!」
 言い返したい事は色々あるが、まずやらねばならない事がある。
 まっすぐな風葉の双眸から目を逸らし、辰巳は叫んだ。
「――神影鎧装、展開ッ!」
 瞬間。
 爆発にも似た光の洪水が、Rフィールド全体を薙ぎ払った。
 光の彼方に消える敵の姿。暴力的なまでに視界を埋めるその光に、ギノアはようやく我に返る。
「ちい、ぃっ!」
 想定外すぎる状況に流されてしまったが、そもそもオウガの能力開放を見過ごす理由など、あるはずがないのだ。
「やァら、せる、かァッ!」
 構え、踏み込み、刺突。
 風を斬る切っ先、唸りを上げる衝撃波。
 ほぼ同時に襲い来る致命打を、しかし辰巳は既に見切っていた。
「遅、い――っ!?」
 小さなサイドステップ。それで収めるつもりだった回避行動は、しかしニ十メートル以上の距離を一気に跳んだ。
 校舎の上に着地しつつ、辰巳は立体映像モニタを起動。改めて機体の状況を確認すれば、運動性能だけでなくあらゆる能力の向上が見て取れた。
 レックウの接続によってもたらされた制御術式の賜物である。
「成程。やろうと思えば、リバウンダーくらいのジャンプが普通に出来そうだな」
 感心する辰巳、収まっていく余剰霊力の白光。
 その光源を、オーディンは見上げる。
 校舎の中央、時計の真上。そこに立つオウガのいでたちは、今までと全く変わっていた。
 胸。背中。両肩。両手首。両膝。両足首。身体各所に組み込まれたEマテリアルが、今は見えない。
 霊力で編まれた鎧が、そこに接続されているからだ。
 色は銀。とは言っても、オーディンのような純白ではない。やや灰色がかったその輝きは、風葉越しに接続しているフェンリルの影響だろうか。
 ともあれ、オウガは塗り替わった。青一色だった躯体に灯る灰銀色が、新たなコントラストをRフィールドに映し出す。
 直線主体でいかにも武骨なオウガ本体とは対照的に、流麗な曲線主体で構築された灰銀色のプロテクター。身体各所に装着されたそれは、オウガの機体を一回り大きく演出する。
 胸部と頭部は、まだ無い。剥き出しになっているコクピットの上、辰巳は無表情にオーディンを見下ろす。
 ――性能は予想以上に向上している。新たに展開された霊力のプロテクターと、何より拡張された霊力経路の運動性を合わせれば、撤退することは容易だろう。辰巳はそう算段していた。
 そう、撤退だ。辰巳は今、新たにもたらされた能力の全てを、逃走へ注ぎ込むことに決めていた。
 理由は、言うまでもなく風葉の存在だ。いくらフェンリルの同調があるとはいえ、一般人を乗せたまま戦闘に移れるはずがない。どうにかして、それこそフェンリルの力を使ってでも、このRフィールドから撤収しなければならない。
 自分ではなく。風葉の命を、守るために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...