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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 12-08
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「な」
先に驚いたのは辰巳だったか、それともギノアだったか。
どうあれ男どもの反応など意に介さず、灰銀色の格子模様がレツオウガの影の上を走り、刻み、満たす。
風葉の決意、フェンリルの闘争心。確固たる二つの意志を現すかのごとく、術式は瞬く間に組み上がる。
「じゃあ改めて――セット! フェンリルファング!」
高らかに、明朗に、誰も知らない術式の起動を告げる風葉。
『Roger He--Ga-e Emulator Etherealize』
途方も無い無茶ぶりに、それでも電子音声はざりざりと咳き込みつつも応じ――かくて、影に刻まれた術式、フェンリルファングが起動する。
それまで影の枠に収まっていた灰銀色が、瞬く間に拡大する。枷を解かれた獣の如く、赤い大地に異様が迸る。
気付けば元の三倍近い大きさに拡大した影は、しかしレツオウガの形をしていない。
地面を踏みしめる四本の足。ピンと立った三角形の耳。そして、大きく裂けた乱杭歯の並ぶ口。
それは明らかに狼の、風葉が心の中で見た、フェンリルの姿そのものであった。
「な、ぁ!?」
驚愕するギノア。その足元にフェンリルの顎が這い寄り、音もなく牙をむく。
危険。死霊術師としての本能が、主神オーディンの直感が、声高に避けろと叫ぶ。
「ッ!」
すぐさま飛び退るオーディン。一拍遅れて、ぞぶりと影を掠めるフェンリルの牙。
「ちぇ、神話みたいにはいかないか」
そう言ったのは風葉か、それとも憑依したフェンリルなのか。
どうあれラグナロクを終わらせる獣の牙は、役目を終えてすぐさま消失する。
後に残ったのは舞い散る余剰霊力の残光と――雲霞のように噛み千切られた、赤い結界の破れ穴であった。
「Rフィールドを、食った!?」
目を見開く辰巳の驚愕を、押しのけるようにいきなり点灯する立体映像モニタ。
機体の異常を知らせるその内容に、辰巳は更に目を丸くする。
「霊力が、増えてる!?」
「そりゃそうだよ、食べたんだから」
先に驚いたのは辰巳だったか、それともギノアだったか。
どうあれ男どもの反応など意に介さず、灰銀色の格子模様がレツオウガの影の上を走り、刻み、満たす。
風葉の決意、フェンリルの闘争心。確固たる二つの意志を現すかのごとく、術式は瞬く間に組み上がる。
「じゃあ改めて――セット! フェンリルファング!」
高らかに、明朗に、誰も知らない術式の起動を告げる風葉。
『Roger He--Ga-e Emulator Etherealize』
途方も無い無茶ぶりに、それでも電子音声はざりざりと咳き込みつつも応じ――かくて、影に刻まれた術式、フェンリルファングが起動する。
それまで影の枠に収まっていた灰銀色が、瞬く間に拡大する。枷を解かれた獣の如く、赤い大地に異様が迸る。
気付けば元の三倍近い大きさに拡大した影は、しかしレツオウガの形をしていない。
地面を踏みしめる四本の足。ピンと立った三角形の耳。そして、大きく裂けた乱杭歯の並ぶ口。
それは明らかに狼の、風葉が心の中で見た、フェンリルの姿そのものであった。
「な、ぁ!?」
驚愕するギノア。その足元にフェンリルの顎が這い寄り、音もなく牙をむく。
危険。死霊術師としての本能が、主神オーディンの直感が、声高に避けろと叫ぶ。
「ッ!」
すぐさま飛び退るオーディン。一拍遅れて、ぞぶりと影を掠めるフェンリルの牙。
「ちぇ、神話みたいにはいかないか」
そう言ったのは風葉か、それとも憑依したフェンリルなのか。
どうあれラグナロクを終わらせる獣の牙は、役目を終えてすぐさま消失する。
後に残ったのは舞い散る余剰霊力の残光と――雲霞のように噛み千切られた、赤い結界の破れ穴であった。
「Rフィールドを、食った!?」
目を見開く辰巳の驚愕を、押しのけるようにいきなり点灯する立体映像モニタ。
機体の異常を知らせるその内容に、辰巳は更に目を丸くする。
「霊力が、増えてる!?」
「そりゃそうだよ、食べたんだから」
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