何事もバランスが大切

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学校にて

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やっとこ学校に着いた時には遅刻ギリギリ。
「おはよ~」
「はよ…」
「お前らまた遅刻ギリかよw」
席に着くまでに友達からいつものごとく揶揄われる。
どうして学校行く2時間前にはしっかり起きている俺まで、こいつのせいで毎回遅刻と戦わなければいけないのか?
15年間幾度となく疑問に思っている俺だが、多分こいつに面倒見のいい彼女でも出来ない限りは俺の子守りも続くのだろう。

そして席に座ってもこいつは俺の隣。
「こら鞄は机の横にかけて!枕にしない!」
「はいはい。ママ分かったわ」
ニヤニヤ笑いながらこっちを見てくる京平。
まじでムカつくわこいつ。俺の有り難みをいつか思い知れよ!
心の中で毒づきながら授業の用意をする。

今日の一限目は古文。
この時間割はダメでしょ。
寝ちゃうでしょ。

ふと横を見ればもう寝ているこいつ。
ほんと寝てる顔まで綺麗なんてずりーよな。ちょっと口が空いてるのさえ様になってる。
窓際の席の一番端、丁度吹き抜ける風に京平の癖のない黒髪が揺れる。
触れたことがなければ硬そうに見えるその髪が、意外と柔らかいことを俺は知ってる。

あ…口の中に髪の毛入りそう。
思った時には触れていた。

そっと目を開けた瞳が潤んでいて、見たことのない色彩を覗かせる。
こいつってこんなに綺麗なやつだったけ?

触れた髪に温度なんてないはずなのに、やたらと熱く感じた。
いつの間にか俺の指はあいつの口元に触れていたらしい。

その指が口に含まれ舐められた。
口から見えた舌先は真っ赤で、あまりにも美味しそうに俺の指を舐めるから。
一瞬時が止まった気がした。

一体どれくらいの時間が流れたんだろう。
舐めるに飽き足らず甘噛みされて目が覚めた。

何やってくれてんだこいつ??

ばっと手を引っ張ると思ったよりも簡単に離れた指先。
少し残念に思ったのは俺?

睨みつけた京平の顔はいつもより真剣で見たことのない表情だった。

「勝手に触るから、我慢出来なくても仕方ないだろ?」
そっと風に乗って今にも消えそうに伝わる言葉。

あんまり知らない顔ばっか見せるなよ。
どうして良いかわかんねえだろ?

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