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最終話 誰のための
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アルバールがカトリーヌを抱えながら静かな王宮内を歩く。
気に入らないドレスを脱がしたカトリーヌの体を、隊服の上着ですっぽりと隠し、しっかりと両腕に抱えて人からの視線を避けて廊下を移動していた。
腕の中で穏やかな眠りについていたカトリーヌが目を覚ます。
「あのっアルバール様! リリア様とセドリック様は…!」
何よりもリリアが中心のカトリーヌらしく、裸で運ばれている自分の状況よりも、リリアの方が気になるらしい。
「あの二人ならとっくに寝室だ。気になるなら引き返して覗いていくか?」
アルバールがニヤリと笑うとカトリーヌは慌てて首をふった。この言葉だけで、二人がどういう状況か想像できたらしい。
耳のよいアルバールは、隣のリリアの部屋の様子を常に把握していた。
セドリックが、邪魔するなよと言わんばかりに音を立てて寝室に入って行ったが、アルバールに夢中になっていたカトリーヌは気づいていなかった。
その直前まで、わざとらしくリリアと睦み合う振りをして、アルバールを煽っていったセドリックだが、自分の方が本気になってしまったようだった。
流石に寝室に籠った二人を朝まで護衛するのは自分の仕事ではないと、カトリーヌを連れて部屋を出たアルバールは、次に会った時、したり顔で見上げてくるセドリックを想像して唇を噛んだ。
(……セドリックの罠にはまったみたいでしゃくではあるが、お望み通り煽られてやろうではないか)
腕の中にある柔らかい感触に、もう絶対に誰にも触れさせないと心に誓ったアルバールは、カトリーヌの頬にキスをした。
すぐに真っ赤になったカトリーヌは隊服で顔を隠している。
カトリーヌの可愛いらしい行動に思わず笑みがこぼれ、馬車へ向かって歩くスピードも早くなる。
「そういえば……」
少しだけ顔を出したカトリーヌが、腕の中から見上げてじっと見つめている。
「夜会の最中に思い出してしまったのは、この間の図書室でのセドリック様とリリア様です。決して誰か別の男性を思い浮かべていたわけではありませんからっ」
思いがけない告白に、アルバールは目を瞬かせる。
セドリックの策略に二人で嵌ってしまっていた様だと気づいた時、遠くで高笑いが聞こえたような気がした。
◇◇◇
カトリーヌを大事そうに抱えながら、王宮の廊下を足早に歩くアルバールは、周囲を警護する騎士達から見てもとても目立つ状況だったが、鬼気迫る勢いで歩く彼に誰も話しかけることなど出来なかった。
二人の事は、すぐに王宮中の噂になったが、カトリーヌが知るのは登城することができた二日後の事だった。
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「あの二人ならとっくに寝室だ。気になるなら引き返して覗いていくか?」
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その直前まで、わざとらしくリリアと睦み合う振りをして、アルバールを煽っていったセドリックだが、自分の方が本気になってしまったようだった。
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◇◇◇
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