【R18】壁の花は愛されたい

ToRa

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後日談1 セドリックの作戦

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「アルバールがそんな優しいだけの男なわけがないだろう」

 セドリックがニヤリと目を細める。
 薄いロングのキャミソール一枚の姿で寝室のベッドの端に腰を掛け、痛む足を濡れた布で冷やしてもらっているリリアは、不思議そうにコテンと頭を傾けた。

「私にはいつも優しく接して下さいますわ」
「基本的に誰にだって優しいさ。ただ、カトリーヌが関わるとちょっとな……」
 
 リリアの専属侍女という仕事に対して、家の身分が不釣り合いに低いカトリーヌは、王宮の中で理不尽な扱いを受けていた。

 王宮勤めは貴族中心であり、中枢に近ければ近いほど高位貴族の集まりになる。

 愛するリリアには生活を共にする侍女にまで警戒するような苦労はさせたくなかったセドリックは、国外の文化に明るく、政治的に野心がある家でもなく、仕事に真面目に取り組む令嬢を探していた。

 そして、カトリーヌを発見し、リリアの母国であるファタニアに留学経験があるという事を理由にカトリーヌを王太子権限で専属侍女とした。

 異例の大抜擢になってしまったカトリーヌは、可愛らしい顔に豊満な体つきという男性の興味を引く魅力的な女性であった事もあり、セドリックの愛人の重用ではないかと下世話な噂がつきまとうようになった。

 実際に、興味を持った騎士達から、一夜の相手にどうだとしつこく誘われる事も続いたようだった。

 すぐに、カトリーヌの真面目な仕事振りに心を許していたリリアは、日に日にカトリーヌの元気が無くなっていく事を心配し、セドリックに相談をしていた。

 結局、アルバールが護衛するという事になったのだが、リリアの側に男を置きたく無いセドリックは二人に見つからないように護衛するようにアルバールに命じた。

 私情丸出しの無茶な指示だったが、アルバールであればうまくやるだろうと言えば、ため息で了承された。

 カトリーヌにはセドリックの護衛として紹介し、普段は姿を見せていないため、カトリーヌに横柄な態度をとっている者を炙り出す事がでた。

 そんな王宮騎士達は残らずセドリックの名で処罰が下され、また一夜の相手をなどと言った無礼な者は、騎士の素質あらずとされ、騎士の称号を剥奪され外壁警備に飛ばされた。

 報告をしにくるアルバールの怒りはだんだんと大きくなり、カトリーヌの護衛に熱が入っていくのがセドリックには分かっていた。

 処罰に関しては、少々やり過ぎたかという気はするのだが、今は下級貴族だからといって、次期王太子妃であるリリアが大変気に入っている侍女である。

 この先、高位貴族に嫁がせて、側に置くと考える方が普通なのだ。そんな事も分からないなら早めに騎士なぞやめてもらった方がリリアの為でもある、というのがセドリックっの考えだった。
 
 カトリーヌに次第にアルバールが心を寄せていく事にセドリックは気づいたが、昔からなんでもそつなくこなすアルバールは、自分でカトリーヌを手に入れると思っていた。

 優しく、人当たりの良いアルバールは昔からよくモテる。カトリーヌだってアルバールに迫られたら悪い気はしないだろうと考えていた。

 二人がくっつけば、身分の問題も片付きリリアも喜ぶ。そんな事を思い、楽観的に放置していたところ、二人の仲が二年間全く進まない事にセドリックは驚愕し、苛立っていた。

 直接アルバールに言った事もあるが、仕事に打ち込むカトリーヌを邪魔したくないだの、まだ騎士と貴族を怖がっているだのと言い訳をならべ、時期が来たら自分でなんとかするとはぐらかされてしまった。
 
--これは何か作戦を考えなければ。

 二人のために一肌脱ごうと、セドリックは思い立った。
 
ーーまずはカトリーヌだ。

 リリアの事が大好きで、仕事一筋になっていて、騎士達とのトラブルから若干男性不信な気すらある。

 だが、アルバールに対するカトリーヌの態度は柔らかい。アルバールならきっとカトリーヌの男性不信を癒してくれる。

 少し荒療治にはなるが、強制的に恋愛を意識させようと図書室でリリアとのイチャイチャを目撃させ、見事興味を引き出した。

ーーあの時のリリアは可愛かった。私の作戦は大成功だ!
 

 アルバールへの対策に悩んでいた時、扇情的なドレスを着たカトリーヌが夜会に現れ、今日がチャンスでは無いかと思いついた。

 すぐにリリアにも伝えて、なんとか二人きりできないかと画策していたところ、浮かれすぎていたらしい。ダンスの途中でリリアが足をひねるといったハプニングが起こってしまった。

 セドリックは、アルバールが早くカトリーヌを捕まえないからこんな事になるんだと八つ当たりのように控えの間に押しとどめた。
 
 医師の診察が終わった頃、リリアの足の怪我が軽かったこともあり冷静さを取り戻していた。

 青い顔をしてピッチャーのワゴンを押し、控えの間に入っていくカトリーヌを見てニヤリと口角が上がる。

「リリア、少し私に協力してくれないか?」

 このまま、しばらく二人きりにさせようと、リリアに囁くと、目を輝かせたリリアが頷く。

ーー私のリリアは今日もかわいい。

 その後、リリアの足を撫でるだけでは満足出来なくなったセドリックは、リリアを抱えて寝室に移動し、全身余すところなく撫で回したのだった。

 可愛いリリアを堪能し終わった頃、セドリックは、アルバールが退室していく気配を感じていた。
 足音は一人だったため、カトリーヌを抱えていったのだろうと予測する。

ーーカトリーヌが歩けなくなるほどのナニかがあったに違いない。私の作戦は大成功だ!
 
 抑圧が解かれたアルバールの相手をしているだろうカトリーヌを想うと不憫でならないが、明日は「私の仕事を取らないで下さい」と、リリアの世話を奪いとられる事はないだろうと微笑む。


ーー明日、一日中リリアの世話を焼くのは私だ!

 上機嫌なセドリックは、足を冷やしている布を変えながらリリアに微笑みかける。
 
「リリア。明日はカトリーヌは休みだ。一日中ベッドで一緒にいようか」

 そう耳元でそっと囁けば、恥ずかしそうにリリアが小さく頷いた。

ーー今日もリリアが愛しい。

 柔らかな体を抱きしめ、そっとベッドに倒れ込んだ。


 翌日、セドリックによって、抱き潰されたリリアを診察した医師から大目玉をくらうことになり、いつもなら庇ってくれるアルバールとカトリーヌの不在も重なり、安静期間である一週間の接触禁止が言い渡されたのだった。
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