BLエロゲの世界に転生したので、悪役の玩具になることにしました♡

NONAME

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前世の記憶を取り戻し早々にやってきたチャンス。それが王都で開かれる第一王子の誕生日パーティーであった。

流石BLゲームの世界というべきか、ご都合主義のおかげで平和なこの国ではなんと爵位の低い貴族でも、年に一度だけ王城に足を踏み入れることが出来る。
ちなみに、この第一王子は攻略キャラの一人である。

記憶を取り戻してからの数日は、知恵熱に浮かされていた。ようやく現世の知識と人格の折り合いをつけた頃、我が家はこのパーティーの話題で浮き足立った。
何といっても第一王子の誕生日パーティーとは名ばかりで、実のところ同世代の貴族たちが顔を繋ぐための社交場に過ぎない。 
齢十歳の俺も、こればかりは負けていられなかった。

俺が転生したエリオットくんは、上流貴族に逆らえず友人を売っちゃうくらい、爵位も低ければ金もない。転生して、少しぼろいな──と思ったこの屋敷は、そのままガチでボロかった。
何世代も前のご先祖様の功績が国に認められ爵位を賜り建てられた屋敷だが、家系が傾くにつれ改修もままならず、先代たちの生活の残滓をそのままとどめている。しかし家族仲は悪くない。両親はひもじいながらに大変人がいい。つい先日にも父は"親友"に騙され、投資詐欺に巻き込まれたばかりであり、我が家の食卓はずいぶんと寂しいものになっていた。
つまり、都会っ子なら耐えられないほどキツい。幸いにも前世の記憶を取り戻す前の「俺」の知識があるから、正気を保てているに過ぎない。そう表現せざるを得ないほど、前世の俺の価値観から言って即NG。自分で言うのもなんだが、罪のない子供のダミアンが肋骨も捨てるほど骨が浮き出た身体をしているのも、四六時中腹を空かせているのも考えられないことだ。
そんな僕が転生して掲げた目標──ダミアン様に抱かれること! を叶えるためにはまずダミアン様に会わないといけない。
だが、一般的な貴族ですら関わろうともしないオンボロ屋敷の住人に、そんな伝手などあるはずもなかった。 だからこそ、この第一王子のパーティーは、俺にとって千載一遇の好機なのだ!

目標は第一王子──ではなく、もちろんダミアン・クロス様。

彼は主人公の3つ年上だったはずだから、今は13歳だろう。
彼は幼少期、先代辺境伯であった父親の愛情を感じられずに育ち、愛を知らぬ冷徹なサイコパスとなってしまうのだ。俺に言わせたらサイコじゃなくてドSの間違いだろ、と思うけど。

きっと彼は孤独感に苛まれている頃だろう。
だからこそ、俺は彼の都合のいい獲物として現れ、思いきり弄ばれたい──♡♡♡

俺はモブの中でも特にザコ爵位の家柄。
ダミアン様が俺を誘拐しようとしたら、父も母も逆らえはしないだろう。
うん、ごめんねお父様、お母様。このまま真っ当に生きて学園に通うようになっても、主人公を貶めようとモブレされる身の上なので、せめて好きな人の退屈しのぎにさせてください♡

というわけで、パーティーの前の一週間は思いっきり家族に甘えた。無責任な両親ではあるが、悪い人ではないのだ。
「やだこの子不安なのね」なんて慰められながらも、実はこれが俺なりの両親への“選別”だったりする。夫婦仲も悪くないのだから、俺が消えたところできっと俺の弟だか妹だかが生まれることだろう。

そしてお金がないながらに両親に一張羅を用意してもらい、来たる決戦の日、俺は意気揚々とパーティー会場へ殴り込みに行ったのだった。

パーティー会場では、すぐに彼を見つけることが出来た。
何と言っても辺境伯。この国の国境を守るその身分は高く、その一人息子ダミアン・クロス様もまた、王家に近い席に座っていた。
初めて見る攻略キャラの姿に、俺の目が焼かれる。
なんせ、転生してからゲームにすら登場しないモブ顔に囲まれて育った俺にとって、攻略キャラのビジュアルは強すぎる。普通にシャンデリアのせいだけど、本人たちがキラキラ発光しているように見える。
パーティーの主役である第一王子は、王道を行くビジュアルでアイドル顔負けの輝きを放っている。 ダミアン様は言わずもがな。ストーリーで副会長を務めていた伯爵令息や、主人公の幼馴染。並み居る攻略キャラたちは皆、群衆から頭一つ抜けた、子供とは思えない造形美を誇っていた。

その顔立ちをはっきりと拝めるのは――俺の顔を隠す、この瓶底眼鏡のおかげだ。

そう、眼鏡である。 記憶を取り戻す前は2.0はあったはずの視力は、瓶底眼鏡モブの宿命に抗えなかったらしい。知恵熱で寝込んでいる間に、0.1程度まで急降下してしまった。裸眼では全く見えない。そのため両親はなけなしのお金をはたいて眼鏡を買ってくれたのだ。でもそのお陰で遠くもよく見えます。いや、本当に両親には頭が上がらない。
こうして外見までも、ゲーム【LOVE ONE】に登場するエリオットくんのミニチュア版が完成した。

そして現在。俺の視界、その中心に鎮座しているのは大本命の姿――ダミアン・クロス様だ。 会場に足を踏み入れた瞬間、一目見ただけで彼だと理解した。周囲とは発光の次元が違う。熱に浮かされた心地のまま、俺は米粒ほどのサイズにしか見えないダミアン様を、瓶底眼鏡の奥から凝視し続けた。

だが、形式張った退屈な王族の挨拶が終わる頃には、その姿は消えていた。
──やっぱり!
俺は想像通り進んでいることに興奮しながら、人気のない庭園へ脚を向ける。その中にある白い噴水前に足を運ぶ。そこには、案の定"彼"がいた。

「誰だ」

まだ声変わりさえ迎えていない、少年の声。 しかし、そこに含まれた鋭利な殺気には、思わず身を竦めるほどの威圧感があった。
はわっ──。ゾクリと、腰が震える。興奮と緊張で心臓が壊れそうになりながらも、俺は懸命に膝の震えを抑え、彼の前に立った。




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