BLエロゲの世界に転生したので、悪役の玩具になることにしました♡

NONAME

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「あ、あの……迷子になっちゃって……」

瓶底眼鏡越しでも察せられるだろう(あまりの興奮に)涙で潤んだ目に、震える声。貧相な全身を震わせ、必死に訴えかける。
ふふん、どうだ。もっと追い詰めたくなるだろう。
ちなみにこれは演技などではない。前世からの最推しに出会えて、正気を保てる人間がどこにいるというのだろう。
そうして鼻息荒い俺とは裏腹に、俺の目の前のダミアンの表情は徐々に緩む。眼光から棘のある鋭さが鋭さが失せ、代わって、獲物を弄ぶような、少しばかり得意げな声色が紡がれる。
「ふうん、迷子かな。小さいね。いくつなの?」
「え、10歳、です……っ♡」

なんかもう、腰が砕ける寸前だった。

何といっても憧れの人だし。バットエンドでは数え切れないほどお世話になりました♡ 裏垢配信でも、アナニーする気分にするために何度あなたにお世話になったか。そんな理想の彼と会話しているのだから! 感動もひとしおだ。
あまりの興奮に、耳鳴りすらする。腰の疼きが酷くなる。射精も経験したことのない自身のペニスがむずむずと疼いて、誰にも許したことのない腹の底がじんじんと熱を持つ。

「お、お兄さんは、何してたの……?」

俺の声に、ダミアン様は目を細めてじっと俺を見つめた。
その視線にうっかりよだれが口から零れてしまったけど、きっとバレてないと信じた。

「秘密だよ」

ウインクと共に言われた言葉に、僕はもう──もう蕩けてしまった。精通してないけど絶頂したと思う。その先の記憶は、もはや白濁して判然としない。 
機能停止に陥った俺を王宮の使用人のもとまで送り届けると、彼は風のようにどこかへ消えていった。



翌朝。目覚めと共に、俺はベッドの上で頭を抱えた。

「お、おかしいだろ~~!!!!!!」

そんなわけない!と俺が絶叫するのも理解してほしい。
第一王子の誕生日パーティーは、ダミアン・クロス様が初めて趣味のために人を拉致した場所として、ファンの間で知られていたのだ!
俺の完璧な妄想では、昨夜、俺はダミアン様の毒牙の餌食となり、淫らに哀れな性奴に堕ちるはずだったのに!

このころのダミアンは元々、親の愛に飢えていた。
両親に好かれようと必死に剣術や馬術、書物に向かう日々を送ったが、彼の願いが届くことはなかった。
だからこそダミアンは、第一王子の誕生日パーティーというこれ以上ない晴れの舞台を選んだのだ。 人気のない噴水の前で、彼は“都合の良さそうな”貴族の子供を攫った。王宮の客室で拘束し、レイプした。それが彼の初めての性交であった。これほどの蛮行を働けば、今度こそ両親の目は自分を向くはずだと。そんな悲痛な願いを込めた凶行。
しかし、王家の顔に泥を塗るその行為すら、両親はただ金で淡々と揉み消した。
愛も、怒りさえも届かず、後には虚無的な孤独だけが残った。 ―──そうして彼は親からの愛を完全に諦め、寂しさを埋めるように、加虐趣味という名の歪んだ快楽へと傾倒していったのだ。

このダミアン様の過去は別ルートの回想や攻略本のコラムに断片的に記されているに過ぎない。熱心なファンたちが、その欠片を繋ぎ合わせて導き出した推測。 だが、今の俺にとってそれは、彼と繋がれる唯一と言っていい接点だったのだ。

なのに、なんで俺じゃないんだ!!獲物として、これ以上なく俺が最適だと思ったのに! なんで!!!!

「……俺以外のやつを攫ったのかっ!なんで!どうして!!」

そうして子供部屋でぎゃーぎゃー騒いでると、お母さまに叱られた。ぐすん。

「でも……。子供時代のダミアン様、素敵だった」

あの鋭利な瞳を思い出し、俺は一人、熱っぽく溜息を吐いた。
月光を浴びて煌めく銀髪に、透き通ったアクアマリンの瞳。思い返すだけで腰が疼く。あの美しい13歳の少年が、将来あんな鬼畜辺境伯になるなんて想像もつかない。
しかもゲームでは知りえなかった声変り前の声まで聴くことが出来た。生まれてこの方聞いたことのないほど、甘く、美しく、透き通った声。
完全モブの外見の平民にも多い茶髪+光を反射する瓶底眼鏡の俺とは全然違う。本当に。人間としての解像度が違ったぞ。

「ダミアン様に選ばれたのは、いったい誰なんだろう……」

口にすればするほどに悔しくて、胸がぎゅうと締め付けられた。



ダミアン様に抱かれなくても、人生は続く。
パーティーが終われば、また退屈な日常に戻るのだ。

俺はこれまで通り、使い古されてボロボロになった教科書を広げ、貧乏に喘ぎながら勉学に励む日々に戻った。その傍らで、ダミアン様に関する記憶の断片を、忘れる前に一心不乱に書き起こす。――ひそかに、次の好機を狙いながら。
当然だが、モブに過ぎない俺が高位貴族である彼に近づける機会など、学園入学までは年に一度の例のパーティーしかない。唯一の勝機を棒に振った今、これ以上の期待を抱くのは、自分を追い詰めるだけの酷な選択だった。
やっていることは、ゲーム開始後の主人公とダミアン様のイベントシーンを書き写すだけの、徒労に近い作業だ。
思い返しているる光景は、少なくとも六年後の未来の話だ。遠すぎる――あまりにも虚しい。
だが、転生直後で記憶の残っている間の今のうちに、すべてを書き残しておきたかった。前世の年齢で言えば、もうアラサーだ。己の記憶力は期待できない。
しかも、エリオットの集団レイプとダミアンの凌辱バッドエンド以外は周回しなかったせいで、元々のゲームの記憶はあまりに薄く、頼りない。



指折り数えて一年後のパーティーを待つ、そんな寂しい日々を送っていた我が家に、一通の手紙が届いた。
その家紋は、見間違えようもない――辺境伯クロス家の紋章だった。

「エリオット、話がある」

父から重々しく告げられた言葉に、胸が高鳴るのを抑えきれない。

「辺境伯クロス家のご子息であるダミアン様が、お前を行儀見習いとして城に招きたいと仰っている。手間賃は十分すぎるほど頂けるようだが……お前、一体どこでそんなお方との縁を……」

頭を抱える父とは対照的に、俺の心は小躍りしていた。いや、実際にはその場で踊り狂った。まさに有頂天だ!
建前の"行儀見習い"がその実どのような扱いを受けるのか。──顔を真っ青にする両親を尻目に、俺ははしゃぎ倒した。辺境伯の後継者が従者として迎えるには、俺の身分はあまりに低すぎる。つまり、まともな扱いをされるはずがないのだ。
ダミアン様……、ダミアン様……! ああもう、なんてことだ! こんな嬉しいことが待っているのなら、あのパーティーでの空振りも、極上の焦らしプレイとして受け入れられる。

悲嘆に暮れる両親の背後で、俺はこれから訪れるであろう、めくるめく官能の日々に思いを馳せていた。





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