狩人物語

アンジー川橋

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見習いな少女と師匠な男

リュイナの冒険①

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 「……街に戻ろうにも、何か容姿に変化をつければバレないだろうか」
街に向かって足を進めるリュイナ。しかし死んだはずの落ちこぼれに似た奴が突然現れたとなると、ギルドの狩人は驚くだろうから、流石に別人を装うには容姿を変えた方がいいだろう。ちなみにこの半年間録に風呂にも入らず補色とトレーニングを繰り返していたリュイナは、纏うオーラも服装のボロ具合も髪型の変わりようも凄まじいので普通なら気づかれないのだが。
 とは言え、髪の染料も持ってないし、兜を被るかと思っても結局タンクやガンナーでない限りは邪魔なだけである。特に双剣使いのリュイナは、軽快な動きと手数が要求されるため、出来る限りの装備の軽量化が必要である。
「染料は…赤薔薇を使えば作れるし…まぁ、髪色だけ変えていこう。街で素材を売って、お風呂に入ったら改めて変装しようかな」
ということで、早速リュイナは薔薇を潰して染料を作り始めたのだった。

 染料で髪を赤く染めたリュイナは、元々の金髪の面影を思わさないくらい別人になっていた。川の水を鏡に見た自分に、誰だと言うくらいには別人になっていた。
さて、リュイナは街に向かう途中、いくらか鳥を撃ち落として、素材を回収していった。流石にジームの作ったポーチにも入らなくなってきたので急ぎ目に街へ向かった。
 ちなみにこのポーチ、ジームのお古である。遭難中に無くしてしまったので譲ってもらったのだ。
 街に着く頃には日が落ちてきていた。樹海は広すぎて、馬車でも迷えば目的地に着くのに一週間はかかるのだが、そこを迷わず半日で越えてきたリュイナはかなり足が速く、そして樹海に身体が慣れてきたのだろう。

 街の門では検査官がいた。リュイナがかつて憧れていた騎士団団員である。しかし、自分を始末しようとした同期が騎士団に所属しているのだから、憧れも冷めてしまった。今は冒険狩人でも、むしろそっちの方が良いとすら思う。

 騎士団は街の住人からは尊敬の対象だし、給料や国からの待遇も良い。反対に冒険狩人は野蛮で喧嘩ばかりするし、給料も安定しないし国からの援助もないし、ギルドも貧乏である。
 だけどそれは、そこには冒険狩人同士の信頼があり、人間的な感情があるからこそ成り立っている。騎士団からは嫌悪されているが、それでも冒険狩人達の文化がいまだ消えないのは彼らが強いからである。今のリュイナは獣性という潜在能力も含めれば街では最強だろう。しかしジームの修行があっても、まだリュイナには勝てないような実力者が大勢いるのが冒険狩人である。騎士団のように型にハマった戦いではなく、フリーダムな闘いこそが彼らの本質。そこに絶対の実力差はない。だから、今のリュイナは冒険狩人に惹かれているのだ。

 さて、検査官の前に立つ。証明書など持ち合わせていないので、言い訳を考える。
「さて、身分証明は?」
「遭難していたので、証明書は無くしてしまったのでしまいました。お金もありません」
「……まぁいい。その場合は街に入るのに料金が発生する。監視を付けるから、金が入ったらソイツに渡し、証明書を発行してこい。まぁ騎士団に入ってくれとは言わんが、冒険狩人はオススメしないぞ」
「ご安心ください。私、騎士団の給料泥棒にはなりたくありませんので、稼ぐなら自力でやりますから。お金が無いなら実力不足だって認められる冒険狩人の方が有意義だと思いませんか?」
「そういう考え方か……まぁいい。監視は騎士団から派遣するぞ。おい、キャロ! キャロットいるのか!」
 キャロット。聞いた覚えのある名前だ。現れた薄紫の髪の少女は、間違いなく訓練生時代の同期のキャロットであった。
 成績優秀で冷静沈着。その佇まいから女性の交際申し込みが絶えなかった少女である。基本的に他人に興味を示さず、一人でいることが多かった。リュイナの始末を計った同期も優秀だったが、眼中にはなかったらしい。卒業していたのか。ジームは半年とは言っていたが、この半年、恐らくもっと早くに訓練生を卒業していたと考えるとかなりのエリートだ。リュイナは死亡扱いなので当然除籍されている。
 そもそも訓練生は別に強制ではない。彼女ほどならわざわざ面倒な訓練生にならずとも、騎士団に入れたはずだし、検査官になっているのもおかしいのだが。

 「おおいたか。キャロ、この人が入国金を払うまでお前が監視だ。クエストもお前が同行しろよ。いいな、絶対仕事しろよ」
「了解。よろしくお願いします」
「あ、はい」
どうしてここまで念押ししたのだろうか。そんな疑問もありつつ、街に踏み込んだリュイナだった。 
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