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時限爆弾ケーキ

お題に答えて/2

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 今は時限爆弾が作動中のために、この騒動を家に持ち込んだ夫が、歩く17禁を軽く補足する。

「君は仲良しというひとくくりで、大人の話まで同じように扱うので、そちらのようになっているだけではないんですか~?」

 仲良く話をする。
 と、
 大人の情事。

 が同レベル。いくら初の、バイセクシャル複数婚をしている明智家でも、異例の夫。焉貴が話すと、二言目には17禁ワードが登場する始末。

「そう。俺何でも言っちゃうの。俺のペニ◯、手コ◯してボッ◯させて、とかさ」

 焉貴はいつもこうなのだ。しかし、色欲はそこに存在しない。純真無垢で言ってくる。子供の心を持っている大人――ミラクル風雲児なのである。

 麦茶を飲んでいた夫が、高校の数学教師に聞く。

「生徒の前では言わないだろう?」
「それやっちゃったら、教師じゃないでしょ」

 焉貴先生、きちんと仕事をしていた。だが、問題はそこではなかったのだ。颯茄がツッコミ。

「っていうか、聞こえないシステムになってるじゃないですか!」
「そう、この世界は、ガキにはどうやっても、大人の話は聞こえないの~」

 聞かせたくないのなら、聞こえないシステムを開発してしまえ。が、銀河帝国の基本的な考え方で、子供は大人の話を知らないし、大人のそういう場面に出くわしても、何もないことになっているようだ。素晴らしい技術である。

 全員が、焉貴の純真無垢なR17にやられて、ため息をついた。

「じゃあ、セクハラいらない……」

 時間を伸ばしているっぽい感が漂っていたが、とにかく妻は全員の話を聞きたいのである。ささっと気持ちを入れ替えて、

「次、お願いします」

 ケーキがテーブルの上を横滑りした。

 ニコニコのまぶたに隠れていて見えない、ヴァイオレットの邪悪で誘迷ゆうめいな瞳。月のような綺麗な顔。鮮やかで濃いピンク――マゼンダ色の髪は腰まであり、上品に首の後ろでリボンで結ばれている。凛とした澄んだ儚げで丸みのある女性的なのに、しっかり男性の声でゆるゆる~っと話してきた。

「僕は月命るなすのみことと申します~。職業はカエル女装です~」

 進みやしない。時限爆弾を家に持ち込んだだけはある、夫だった。どんな職業だと、妻が心の奥底で思っていると、焉貴からもさすがに待ったの声がかかった。

「ちょちょっ! お前、またわざと失敗してんだけど……」

 ――またわざと失敗。

 危険な香りが思いっきりする月命。そうなると、この時限爆弾ケーキは、破滅への序曲をやはり本当に踏んでいるようだ。明智家、いや首都のある惑星が吹っ飛ぶのだ。

 皇帝陛下から、明智家は全て処罰の対象になるであろう。それなのに、夕霧命は落ち着き払って、まっすぐ質問した。

「それは何だ?」
「俺っちはわかるっすよ」

 人懐っこそうな瞳をしている夫は、うんうんと大きくうなずいた。

 細いシルバーのブレスレットを、ニコニコしている夫の右隣で触っている夫が、のんびりと日向ぼっこみたいに言う。

るなすが変身しちゃったみたいだね」

 ここで普通に対応しては、夫たちに負けなのである。颯茄は平常を装って、話をこっちへ持っていった。

「それはこう言うんじゃないんですか?」
「どのようにですか?」

 本人に聞き返されて、妻は修正を加えた。

「女装ガエル……こっちの方がしっくりくる」
「じゃあ、それ採用しちゃいます!」

 焉貴がハイテンションで、右手をパッと上に向かって上げると、妻はこうしめくくった。

「じゃあ、女装ガエルさんの職業が、月命です!」

 巧妙に入れ替えられた言葉。誰も何も言わず、先へ進もうとする。

「じゃあ、次だ」

 颯茄から一人間を挟んで、鼻声の夫が戸惑い気味に意見してきた。

「……逆だと思うんだが、これを誰も突っ込まないってことは、月の罠なのか?」

 とにかく、絶対に違うのだ、名前と職業が逆になっているのもそうだが、女装ガエルという職は、いくら帝国でもないのである。それなのに、爆発という恐怖心が先に進ませようとするのだ。

 ニコニコ微笑んでいるからこそ、怖さが増す不気味な含み笑いが聞こえてきた。

「うふふふっ」
「怖っ! い、今のはなかったことにしてくれ」

 鼻声の男は両手で肩をさすりながら、プルプルッと首を横に振って逃げようとしが、できなかった。

 この人を人とも思わず、残虐な遊びに酔いしれる中世ヨーロッパの貴族――

 の異名を持つ夫が一気に殺すのではなく、言葉にするのもおぞましい数々の責め苦を味合わせた上で、下から火でルあぶり殺すように、地獄への招待状を送ってきた。

「見逃して差し上げますが、君は僕に、こちらで貸しが十五個です~」
「あとで何されるか……か、考えるのも怖すぎる!」

 颯茄の近くでいつもの悲鳴が上がると、間延びした声が斜め向かいから聞こえてきた。

「ボクの番~?」
「言っちゃってください!」

 焉貴のハイテンションなまだら模様の声が響くと、ケーキがさっと移動した。
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