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妻の夢2
変わった初詣
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私は人間。当たり前のことだ。少し他と違っていると言えば、霊感を持っているところだ。しかしこれが厄介なもので、我ながら愚かだなと思うことがある。それは恋愛がらみのことだ。
手の届かない人を好きになってしまった。相手は神様だったのだ。私は極めつけの不届き者であった。人間と神の恋など、物語の中だけで現実ではあり得ない。本当に雲の上の人だった。
相手が結婚すると聞いてもなお、諦めることができず、我ながらあきれてものが言えないと文字通り閉口した。しかも、相手は私のことを知りもしないし、会ったこともない人だった。人の噂で彼の性格などを聞いただけで好きになったのだ。
我ながらめちゃくちゃな恋の仕方をしたもんだと後悔しながら、十四年の月日が流れた。その間に忘れようと努力をしてみたものの、思い出しては、心に優しい火が灯る幸せを、そっと大切になぞるように求めるを繰り返した。
しかし、神によって奇跡は起きたのだ。結婚したと思っていた相手は独身のままで、私の勘違いだったのだ。ひょんなことから彼も私の存在を知り、恋に落ちたのである。
本当に望んでいたことが叶った時の嬉しさ。あの感動は忘れられない。三年もたった今でも、昨日のことのようによく覚えている。結ばれるまでの十四年の月日は決して平坦な道のりではなく、波乱万丈で、私は幸せすぎて、しばらく涙が止まらなかった。
神様は必ず見ていてくださるのだ。
そんな彼――光命と今日は初詣デートである。今朝、蓮とラブラブになるいい夢を見たと彼に話すと、二人で愛する夫の好きなところを言い合いながら、重複する幸せを噛み締め、互いの愛をも深め合う。そんな我が家にしかできない愛し方をしつつ、神社へと向かった。
その他にもいろいろな話をしたが、眼から鱗があった。神様にも神様がいるらしい。ということは、光命は神様に導かれて、私のところへやってきたのだ。きっとそうだ。
無事に神社へついて、賽銭箱へと向かってゆく。列が少しずつ近づいてくると、光命が言った。
「それでは、私は賽銭箱の向こう側へ立ちましょうか?」
「そうですね。光さんは神様ですからね」
彼は賽銭箱と社の間にスタンバイして、私たちの初詣は他の人と違う形で準備が整った。私は賽銭を投げ入れ、柏手を打ち、向こう側に立ってる光命の前で心をさらけ出し目を閉じる。
「神様、今日は素敵な夢を見せてくださってありがとうございました」
ここまでは何とか真面目にやっていた私たちだったが、二人そろって吹き出し笑い始めた。光命が賽銭箱の向こうから速やかに私のそばへと戻ってくると、妻はお腹を抱えながら笑った。
「何ですか、この出来レースみたいな参拝は。夢の話さっきしたじゃないですか?」
綺麗に晴れ渡る空は冬の装いだったが、私たちの心は陽だまりのように暖かだった。そして、二人で手をつなぎながら、空を仰ぎ見る。
「神様、出会わせてくださったこと、感謝いたします」
別々に過ごしてきた時間は長かったが、いつか二人でいた時間の方が追い越してゆくのだ。
手の届かない人を好きになってしまった。相手は神様だったのだ。私は極めつけの不届き者であった。人間と神の恋など、物語の中だけで現実ではあり得ない。本当に雲の上の人だった。
相手が結婚すると聞いてもなお、諦めることができず、我ながらあきれてものが言えないと文字通り閉口した。しかも、相手は私のことを知りもしないし、会ったこともない人だった。人の噂で彼の性格などを聞いただけで好きになったのだ。
我ながらめちゃくちゃな恋の仕方をしたもんだと後悔しながら、十四年の月日が流れた。その間に忘れようと努力をしてみたものの、思い出しては、心に優しい火が灯る幸せを、そっと大切になぞるように求めるを繰り返した。
しかし、神によって奇跡は起きたのだ。結婚したと思っていた相手は独身のままで、私の勘違いだったのだ。ひょんなことから彼も私の存在を知り、恋に落ちたのである。
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神様は必ず見ていてくださるのだ。
そんな彼――光命と今日は初詣デートである。今朝、蓮とラブラブになるいい夢を見たと彼に話すと、二人で愛する夫の好きなところを言い合いながら、重複する幸せを噛み締め、互いの愛をも深め合う。そんな我が家にしかできない愛し方をしつつ、神社へと向かった。
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無事に神社へついて、賽銭箱へと向かってゆく。列が少しずつ近づいてくると、光命が言った。
「それでは、私は賽銭箱の向こう側へ立ちましょうか?」
「そうですね。光さんは神様ですからね」
彼は賽銭箱と社の間にスタンバイして、私たちの初詣は他の人と違う形で準備が整った。私は賽銭を投げ入れ、柏手を打ち、向こう側に立ってる光命の前で心をさらけ出し目を閉じる。
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