80 / 967
後ろから抱きしめて!
Case7
しおりを挟む
武術の体験ができて少し浮かれ始めた妻は、正面を向いてまた右に左にステップを踏み、ダンスをしばらくしていたが、目を閉じた。
「後ろから抱きしめて!」
「イェーイ!」
何をしてくるのか。颯茄はそれを考えると、ワクワクするというよりもドキドキに襲われるのだった。足音が近づいてくる。それは少し早歩きのようで、頭の中で候補を絞り始めるが、一番最初のゲームを思い出した。絞りすぎて、正解を見逃したことを。
プルプルとかぶりを振って、硬くなった頭を柔らかくする。誰がくるのか。耳をすましていると、足音が止まった。体の右側だけに腕が巻きついたかと思うと、フワッと体が浮いた。
「っ!」
思わずびっくりして、目を開けようとしたが、静かにまぶたを閉じたまま、颯茄は考える。今、床はどっちになるのか。重力のかかる方向を見極めると、どうやら背中にあるようだった。ということは――
お姫様抱っこされている!
誰だ、こんなことをするのは。颯茄は焦る思考を何とか落ち着かせ、今までの夫たちを上げる。
貴増参、蓮、光命、焉貴、夕霧命、張飛。
となると、残りは――
月命、孔明、明引呼、独健だ。
「残り三十秒!」
そこで、颯茄はこのゲームを違う視点で見ることを思いついた。それは、どうやったら妻に気づいてもらえるかが勝利への道だ。つまり、目立つことをすればいい。
そんな考え方をするのは、残りの中で、月命と孔明だ。そうなると――
「孔明さん!」
「正解!」
ふんわりと春風が吹いたみたいな声が聞こえると同時に、颯茄はまぶたを開けた。凛々しい眉をした孔明がこっちを見下ろしている。
「くるくるくる~!」
颯茄をお姫様抱っこしたまま、孔明はその場で回り始めた。
「いやいや、何で遊んでるんですか?」
妻は無事に床に降ろされ、
「ふふっ」
春風みたいに微笑む孔明は、颯茄の前に回り込んでくると、紫のタキシードを着ていた。漆黒の長い髪が艶やかさを匂い立たせていた。
「それでは、誓いの言葉を……」
いつも凛々しい眉は、男らしさを精一杯表現するようにキリッとして、孔明の声色から柔らかいものは消え去った。
「俺はお前のことが好き。お前は俺のことが好き。神様がめぐり合わせてくれたことは、どんな策にも敵わない。それでも……」
孔明はふんわりとして雰囲気に戻った。
「ボクは颯ちゃんが笑顔でいることがとっても嬉しい。これからも笑顔で生きていこう」
「相変わらずわかりづらいというか、策が張られている」
「ふふっ」
「でも、そういうところも好きです」
颯茄は口づけを受けると、エキゾチックな香の匂いが体の内側へ入り込んで、愛撫するようだった。
孔明が離れたところへ、
「理由は何すか?」
「これはちょっと難しかったんですけど、結局、この最終目的って、私にどうやってわかってもらうかですよね? だから、目立つことをした方がわかりやすくなるわけです。そんな理論と可能性で測ってくるのは、光さんと焉貴さんに孔明さんと月さんの四人しかいないわけです。光さんと焉貴さんはもう終わってます。そうすると、孔明さんか月さん。お姫様抱っこは、私はされたら嬉しいしと思う。つまり成功することを選んだから、孔明さんってわけです」
颯茄が説明を終わると、ずれてしまったベールを孔明が優しく直した。
「後ろから抱きしめて!」
「イェーイ!」
何をしてくるのか。颯茄はそれを考えると、ワクワクするというよりもドキドキに襲われるのだった。足音が近づいてくる。それは少し早歩きのようで、頭の中で候補を絞り始めるが、一番最初のゲームを思い出した。絞りすぎて、正解を見逃したことを。
プルプルとかぶりを振って、硬くなった頭を柔らかくする。誰がくるのか。耳をすましていると、足音が止まった。体の右側だけに腕が巻きついたかと思うと、フワッと体が浮いた。
「っ!」
思わずびっくりして、目を開けようとしたが、静かにまぶたを閉じたまま、颯茄は考える。今、床はどっちになるのか。重力のかかる方向を見極めると、どうやら背中にあるようだった。ということは――
お姫様抱っこされている!
誰だ、こんなことをするのは。颯茄は焦る思考を何とか落ち着かせ、今までの夫たちを上げる。
貴増参、蓮、光命、焉貴、夕霧命、張飛。
となると、残りは――
月命、孔明、明引呼、独健だ。
「残り三十秒!」
そこで、颯茄はこのゲームを違う視点で見ることを思いついた。それは、どうやったら妻に気づいてもらえるかが勝利への道だ。つまり、目立つことをすればいい。
そんな考え方をするのは、残りの中で、月命と孔明だ。そうなると――
「孔明さん!」
「正解!」
ふんわりと春風が吹いたみたいな声が聞こえると同時に、颯茄はまぶたを開けた。凛々しい眉をした孔明がこっちを見下ろしている。
「くるくるくる~!」
颯茄をお姫様抱っこしたまま、孔明はその場で回り始めた。
「いやいや、何で遊んでるんですか?」
妻は無事に床に降ろされ、
「ふふっ」
春風みたいに微笑む孔明は、颯茄の前に回り込んでくると、紫のタキシードを着ていた。漆黒の長い髪が艶やかさを匂い立たせていた。
「それでは、誓いの言葉を……」
いつも凛々しい眉は、男らしさを精一杯表現するようにキリッとして、孔明の声色から柔らかいものは消え去った。
「俺はお前のことが好き。お前は俺のことが好き。神様がめぐり合わせてくれたことは、どんな策にも敵わない。それでも……」
孔明はふんわりとして雰囲気に戻った。
「ボクは颯ちゃんが笑顔でいることがとっても嬉しい。これからも笑顔で生きていこう」
「相変わらずわかりづらいというか、策が張られている」
「ふふっ」
「でも、そういうところも好きです」
颯茄は口づけを受けると、エキゾチックな香の匂いが体の内側へ入り込んで、愛撫するようだった。
孔明が離れたところへ、
「理由は何すか?」
「これはちょっと難しかったんですけど、結局、この最終目的って、私にどうやってわかってもらうかですよね? だから、目立つことをした方がわかりやすくなるわけです。そんな理論と可能性で測ってくるのは、光さんと焉貴さんに孔明さんと月さんの四人しかいないわけです。光さんと焉貴さんはもう終わってます。そうすると、孔明さんか月さん。お姫様抱っこは、私はされたら嬉しいしと思う。つまり成功することを選んだから、孔明さんってわけです」
颯茄が説明を終わると、ずれてしまったベールを孔明が優しく直した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる