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リレーするキスのパズルピース
魔法と結婚/8
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クエスチョン五。
「古い親友の焉貴は?」
「あれとは、何をしても何を話しても楽しかった」
さっきまで超不機嫌だった、蓮の顔がほのかに微笑んだ。あの山吹色の髪と黄緑色の瞳を持つ男。あの男とは交わる性質などない。
だが、いつも超不機嫌な蓮が、子供に帰ったように無邪気にはしゃぎ、声を出して大笑いするほど楽しい時間を過ごせるのだ。それは、あの男が教師であり、自分の本当の年齢が八歳だからかもしれなかった。
そして、独健から質問が追加される。
「それで、どうして、こうなったんだ?」
「気づいたら、そうなっていた」
もう何度言ったかわからない言葉。独健は少し戸惑い気味に返事をしたが、
「……そうか」
あのカーキ色のくせ毛と優しさの満ちあふれたブラウンの瞳を持つ男と自分の関係をふと思い出した。それと、蓮と焉貴は似ているのかもしれないと判断した。
「友達から恋愛に発展した、で合ってるのか? 俺もそうだから、そうなのかもしれないな」
蓮は身じろぎひとつせず、言葉は何一つ発しなかった。
「…………」
独健は気にすることなく、質問を続ける。
クエスチョン六。
「じゃあ、夕霧は?」
「子供の関係で知ってはいた」
ひまわり色の短髪はウンウンと何度もうなずく。
「いわゆる、パパ友ってやつだな?」
「……………………」
お互いの家に行ったこともあるだろう。五歳の子供が遊びに行くのなら、親はついていかなくてはいけない。蓮の鋭利なスミレ色の瞳はたじろぎもせず、綺麗な唇も動かない。
独健はあちこちの床を眺めて考える、今目の前にいる男の心の内を。
(この間は何だ? さっきと違う気がする。どういう意味で話してこないんだ? ……肯定してるってことだな、きっと)
パパ友なのはわかった。だが、結婚している、いや愛する夫になっている。当然そこまでの経緯があるはずだ。独健も気になって聞いてみた。
「それで、どうして、こうなったんだ?」
「……………………」
だがしかし、どこまでも続く沈黙がやってきた。感覚ではないが、非凡であるがゆえのはみ出した独特の感性で、蓮は全てを図っているようで、恋愛感情が自分の頬を過ぎてゆく、風のように感じているのだ。
風の正体をきちんと説明しろと言われているようなものなのだ。蓮にとって、相手への想いを言葉に変換するのは。
対する独健は、そんなことが起きているとは知らず、ノーリアクション、返事なしの種類がわからない。それでも、懸命に考える。この男との距離を縮めたいと真摯に願って。
(いやいや、今度の間は何だ? 質問を俺がした。ここも肯定か? いや、違う。イエスノーの質問じゃないから……。……考え中か? きっと、そうだな)
五分ほど経過。やがて、蓮の人々を魅了してやまない、奥行きがあり少し低めの声が、ある人の名前をつぶやいた。
「光……」
一粒の砂という言葉でも、独健は必死にすくった。
「光がどうした?」
「光が好きだったからだ」
言葉が不十分すぎて、独健の白地に金糸の刺繍が施された制服の袖口がパッと上がった。
「ちょっと待った! それじゃ、ふたつの意味があるんだ」
「ん?」
蓮の中では完璧だった言葉。そのはずだったが、止められたので、不思議そうな顔をした。独健はきちんと説明する。
「お前が光を好きなのか、と、光が夕霧を好きなのかの、ふたつがあるだろう?」
「……………………」
ひねくれで態度はでかいが、基本的に夕霧命と同じで、真面目な蓮。しかも、素直ではないが、正直者。そのため、相手の言葉にはきちんと返事を返したい。
だから、考えるのだ。ただ、それが断りもなく、ゴーイングマイウェイでどこまでも続くので、まわりが困ってしまうだけなのだ。
どちらかというと、光命のように瞬発力のある独健。この短い会話の中でも、蓮の沈黙の種類がつかめてきた。
(ちょっとわかってきた。今は考え中だ)
一分経過。
「光が好きだったから、賛成したのもある」
愛する夫が小さい頃から想っていた相手。他の配偶者の賛成があれば、結婚しようとするだろう。だが、矛盾が出てきた。蓮の気持ちは、いつどうやって変わったかである。独健も当然そこを突っ込んだ。
「ってことは、お前にも、夕霧に気持ちがあったってことになるよな?」
「気づいたら、そうなっていた」
そして、独健は最後の人にたどり着いた。
クエスチョン七。
「そうか。じゃあ、光は?」
「…………」
蓮は何も言わず、晴れ渡る青空の下で、心地よい風に吹かれたような、子供のように無邪気に微笑んだ。口の両端を上に上げ、さっき感じたキスの温もりを脳裏で宝物のように大切になぞる。
「古い親友の焉貴は?」
「あれとは、何をしても何を話しても楽しかった」
さっきまで超不機嫌だった、蓮の顔がほのかに微笑んだ。あの山吹色の髪と黄緑色の瞳を持つ男。あの男とは交わる性質などない。
だが、いつも超不機嫌な蓮が、子供に帰ったように無邪気にはしゃぎ、声を出して大笑いするほど楽しい時間を過ごせるのだ。それは、あの男が教師であり、自分の本当の年齢が八歳だからかもしれなかった。
そして、独健から質問が追加される。
「それで、どうして、こうなったんだ?」
「気づいたら、そうなっていた」
もう何度言ったかわからない言葉。独健は少し戸惑い気味に返事をしたが、
「……そうか」
あのカーキ色のくせ毛と優しさの満ちあふれたブラウンの瞳を持つ男と自分の関係をふと思い出した。それと、蓮と焉貴は似ているのかもしれないと判断した。
「友達から恋愛に発展した、で合ってるのか? 俺もそうだから、そうなのかもしれないな」
蓮は身じろぎひとつせず、言葉は何一つ発しなかった。
「…………」
独健は気にすることなく、質問を続ける。
クエスチョン六。
「じゃあ、夕霧は?」
「子供の関係で知ってはいた」
ひまわり色の短髪はウンウンと何度もうなずく。
「いわゆる、パパ友ってやつだな?」
「……………………」
お互いの家に行ったこともあるだろう。五歳の子供が遊びに行くのなら、親はついていかなくてはいけない。蓮の鋭利なスミレ色の瞳はたじろぎもせず、綺麗な唇も動かない。
独健はあちこちの床を眺めて考える、今目の前にいる男の心の内を。
(この間は何だ? さっきと違う気がする。どういう意味で話してこないんだ? ……肯定してるってことだな、きっと)
パパ友なのはわかった。だが、結婚している、いや愛する夫になっている。当然そこまでの経緯があるはずだ。独健も気になって聞いてみた。
「それで、どうして、こうなったんだ?」
「……………………」
だがしかし、どこまでも続く沈黙がやってきた。感覚ではないが、非凡であるがゆえのはみ出した独特の感性で、蓮は全てを図っているようで、恋愛感情が自分の頬を過ぎてゆく、風のように感じているのだ。
風の正体をきちんと説明しろと言われているようなものなのだ。蓮にとって、相手への想いを言葉に変換するのは。
対する独健は、そんなことが起きているとは知らず、ノーリアクション、返事なしの種類がわからない。それでも、懸命に考える。この男との距離を縮めたいと真摯に願って。
(いやいや、今度の間は何だ? 質問を俺がした。ここも肯定か? いや、違う。イエスノーの質問じゃないから……。……考え中か? きっと、そうだな)
五分ほど経過。やがて、蓮の人々を魅了してやまない、奥行きがあり少し低めの声が、ある人の名前をつぶやいた。
「光……」
一粒の砂という言葉でも、独健は必死にすくった。
「光がどうした?」
「光が好きだったからだ」
言葉が不十分すぎて、独健の白地に金糸の刺繍が施された制服の袖口がパッと上がった。
「ちょっと待った! それじゃ、ふたつの意味があるんだ」
「ん?」
蓮の中では完璧だった言葉。そのはずだったが、止められたので、不思議そうな顔をした。独健はきちんと説明する。
「お前が光を好きなのか、と、光が夕霧を好きなのかの、ふたつがあるだろう?」
「……………………」
ひねくれで態度はでかいが、基本的に夕霧命と同じで、真面目な蓮。しかも、素直ではないが、正直者。そのため、相手の言葉にはきちんと返事を返したい。
だから、考えるのだ。ただ、それが断りもなく、ゴーイングマイウェイでどこまでも続くので、まわりが困ってしまうだけなのだ。
どちらかというと、光命のように瞬発力のある独健。この短い会話の中でも、蓮の沈黙の種類がつかめてきた。
(ちょっとわかってきた。今は考え中だ)
一分経過。
「光が好きだったから、賛成したのもある」
愛する夫が小さい頃から想っていた相手。他の配偶者の賛成があれば、結婚しようとするだろう。だが、矛盾が出てきた。蓮の気持ちは、いつどうやって変わったかである。独健も当然そこを突っ込んだ。
「ってことは、お前にも、夕霧に気持ちがあったってことになるよな?」
「気づいたら、そうなっていた」
そして、独健は最後の人にたどり着いた。
クエスチョン七。
「そうか。じゃあ、光は?」
「…………」
蓮は何も言わず、晴れ渡る青空の下で、心地よい風に吹かれたような、子供のように無邪気に微笑んだ。口の両端を上に上げ、さっき感じたキスの温もりを脳裏で宝物のように大切になぞる。
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