明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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最後の恋は神さまとでした

王子の思考回路が好きで/6

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 コウの前で、横顔を見せている澄藍に一言忠告が入った。

「今回は肉体のお前に合ってないやつを入れたからな。違いがよくわかるんだろう。理論を学ぶためにしてやったことだぞ」
「あぁ、ありがとう」
「光命と基本的に同じだ。感情は抜きにして、事実から可能性を導き出して、言動を起こす」
「そうか」

 さっきまであんなにバタバタと動き回っていたのに、静かに椅子に座って、リアクションもほとんどない澄藍。

「もう違ってる。今日までのお前は、やる気という何の理論もない感情で突っ走っていたのに、お礼だけ言うようになった。事実を事実としてただ捉えてる証拠だ」
「そんなところまで、影響が出てた?」
「今までの好きな食べ物は何だった?」
「フライドポテト、ステーキ、フライドチキン」

 ジャンクフードのオンパレード。

「だろう? これからは和食になるぞ」
「そう」

 澄藍の返事は合理主義者らしく、とても短いものへと変わっていた。

「じゃあ、よろしくやれよ」

 コウは霧のように消え去り、それさえも数字化された頭の中を、澄藍は感動し続けていた。

    *

 寝ても起きても、澄藍は青の王子のことばかり。

(光命の世界はとても綺麗だ。数字で全て成り立ってて、曖昧なもの不透明なものがなくて美しい)

 絵ではなくて、実写化したら、この王子はどんな血色で、どんな肌の質感で、どんな声色で、話しかけてくるのかを、澄藍は想像する。

(実際はどんな人なんだろう? 貴族的な雰囲気で、優雅な王子様みたいだ、キャラクターのイラストは。こう、一緒に舞踏会でダンスを踊って、いつまでも微笑んでいて……。白馬に乗った王子様……)

 乗馬というハイソな趣味を持ち合わせている神が、デパートへ行くために使っている乗り物は、黒塗りのリムジン。

 そんな神世をのぞくことはできないが、澄藍は背後にいる気配を感じる。フリーターから一気に会社役員へと職を変えた配偶者。子供のいない自分たちでは余るほどの収入を得るようになった。

 それでも、幸せと言えるかどうかは疑問だったが、彼女はどこまでも誠実でいようと思っていた。

(光命はただの憧れだね。芸能人を好きでいるみたいな感覚。でも、思考回路が美しいのは真実だ)

 配偶者が眠りについたのを、寝室のドアがパタンとしまったことで確認して、澄藍は誰にも、神にさえも聞こえないようにつぶやく。

「だって……。私は結婚してるし、それより何より神様だから、恋愛対象にはならない。ううん、振り向いてももらえないよ」

 日付が変わっても、青の王子と過ごす時間は終わらず、舞踏会でダンスを踊るような気分で、ふわりふわりと毎日が過ぎてゆく。

    *

 数日後。冷蔵庫を開けたまま、澄藍は首を傾げた。

「本当だ。油物を見るだけで気持ち悪い。あんなに好きだったのに、こんなに変わるんだ。焼き魚とか和菓子じゃないと食べられないや……」

 着替えようとすると、コウがカウンターキッチンにふと現れた。

「どうだ?」
「座ってるだけで、頭がクラクラするんだよね。どうしたのかな?」

 船に乗っているみたいになって、日常生活がまともに送れないくらいになっていた。コウは理由をもう一度説明する。

「それは、肉体と魂が合ってないからだ。どんな感じだ?」
「自分の内側から、二つの声が聞こえてくる」
「何て言ってる?」
「出ていきたい、と、出ていけ」
「完全に、魂と肉体がお互いを主張し合ってるな」
「でも、しょうがないね」

 聞き分けのいい澄藍はクローゼットを開けて、外出着に着替え始める。コウは薄暗い部屋の中で、神々しい光を発していた。

「そうだ」彼はうなずいて、「肉体を入れ替えるのは、神様がしてることだからな。人間のお前に選択権はないぞ」

「そうだね。よし、これはこれで事実。起きてしまったことは変わらないから、受け止めるだけ。とにかく、好きな食べ物を買ってこよう」

 澄藍は着替えを終えてバッグを肩からかけ、玄関へ向かってゆく。見事なまでに感情を抜きにして、理論的に生き出した。
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