明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
373 / 967
最後の恋は神さまとでした

もっと自由に羽ばたけ/4

しおりを挟む
 だからこそ、目の前にいる猥褻な高校教師が適任なのだ。孔明は年の差を感じない男に春風みたいに微笑む。

「三百億年生きてる焉貴はぴったりだったんだね」
「そういうことね」

 田舎を出て、十年近く経つ。都会へ行きたいという気持ちは、今こうして身を結び、子供三人と妻、そして、愛する男がふたりいる。

 大きく運命は変わり――いやまだ序曲で、これからいろいろ続いてゆくのだ。長い間生きてきた焉貴はそう直感した。

 孔明が焉貴に瞬間移動をかける。よほどの仲にならないと、タブーとされている行為だったが、縁側にまだ戻り、孔明は焉貴を膝枕した。

 ふたりで話す時はいつもこの格好だった。焉貴は凛々しい眉をしている孔明を見上げるのが好きだった。

「お前、好きな男と結婚しないの――?」

 張飛の名前どころか、素振りさえ見せていなかった。孔明は焉貴を見下ろすと、綺麗な頬に山吹色のボブ髪を淫らにかかっている。

「いつから知ってたの?」
「初めに会った時から」

 孔明は指先で焉貴の髪を耳にかけ、あの高級ホテルでタクシーに乗ろうとした時のことを、何ひとつもれずに脳裏に並べた。

「その時のいつから?」
「俺の誘いにお前が承諾した時から」

 鳥が羽を休めるように、焉貴は横に向きになって背を丸め目をそっと閉じる。

「どうして、そう思ったの?」

 この男の頭の重さを膝でいつまでも感じていたい。自分と出会った時から今までの記憶がつまっているこの重さが、やけに愛おしくのだ。

 まぶたは開かれ、いつもよりも真摯な黄緑色の瞳がまっすぐ見上げてきた。

「だってそうでしょ? お前最初行かないって言ってたのに、急に行くって言い出した。何かそこに考えがある。だから、他に男がいるになるでしょ?」

 理論派なのに、無意識の直感で途中の説明をすっ飛ばす、自分と違った頭のよさを見せる男の言葉を聞いて、孔明は春風みたいに穏やかに微笑んだ。

「ふふっ。焉貴らしい。しかも、途中で理論端折ってる」

 孔明は思う。あのあと、自分が焉貴に同性愛について質問をあれこれしていたのだ。頭のいい人間なら、同性愛について悩んでいるのだろうと気づく。

 質問をするのは、相手から情報を得るための基本だが、自身の思惑が相手にバレてしまうものでもあるのだ。

 薄い服の上から、焉貴が孔明の足をそっとなでる。

「いいでしょ? お前に話してるんだから」

 今は教師ではなく、ひとりの男として話をしているのだ。ついれこれないなら、置いてゆく。いやこの男はついてこれるのだ。

 さっきから自分の膝をなでていた、結婚指輪をしている手をふざけたように、孔明は軽くつかんだ。

「ボクに好きな人がいるって知っても、ボクを好きでいてくれたの?」
「それって関係すんの? 自分が好きなのは変わんないよね?」

 この男は誰かの心を傷つけない世界でずっと生きてきた。そんな澄んだ世界で、本当に大切なものを見失わない術を知っている。

「そうだね」
「じゃあ、いいじゃん」

 そして、焉貴本人も知らないうちに、いつの間にか罠になっていて、孔明はチェックメイトされた。

「ただ、無理にとは言わないけど?」

 男の香りが思いっきりする顔をしたまま、結婚指輪をした手で捕まえられてしまった。張飛よりも先に、焉貴が孔明の心の中へ入り込んだ。

「うん、いいよ……」

 孔明は視線をそらして、小さな声でうなずく。

 紅朱凛のことは今でも愛している。その気持ちは変わらない。罪悪感がないと言えば嘘になるが、そもそも罪悪感などという概念も言葉も存在しない世界だ。
 
 自分の人を愛する気持ちはゲイなのか、バイセクシャルなのか。そんな区別もないのかもしれない。差別もないのだから、普通のことなのかもしれない。今は誰もしていないが、未来では普通のこと。

 この男のように、素直に好きは好きだと言えたら、そこにどんな素敵な世界が広がっていて、新しい価値観を手に入れられる機会がめぐってくるのだ――

 考えている途中で、焉貴のわざと低くした声が割って入ってきた。

「お前、恥ずかしがり屋だよね?」
「もう~!」

 孔明は頬が火照り、思わず焉貴の手をポイっと遠くへ投げた。大先生だの、帝国一の頭脳を持っているなどと言われているが、それは外ゆきの顔で、三百億年も生きている男からすれば、プレイベートは子供と一緒だった。

「そんなお前に聞きたいことあんの」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...