517 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
ダーツの軌跡/11
しおりを挟む
キスができそうな距離まで迫って、ようやく執事から聞き返された『約束?』に、優雅で芯のある声で酔わせるように今応えた。
「えぇ、約束です」
主人はとうとう執事を追い詰めた。
こちらで、あなたは私の望むままになるという可能性が98.79%――
うなずかない時には、別の方法を取りましょうか。
崇剛の束ねた紺の長い髪が肩から下へ落ち、絶妙な距離――触れるか触れないかで執事の頬にかかった。悪寒が背中にゾクゾクと走った涼介はうっかりうなずいてしまった。
「わ、わかった……!」
順調に策が進んでいる崇剛は優雅に微笑んだ。そうして、神父らしいアイテムを使って、涼介に言うことを聞かせる条件を一気に増やした。
「それでは、旧約聖書、出エジプト記、モーセの十戒と称して、私の言うことは十個先まで必ず聞いてください。よろしいですか?」
「わ、わかった」
主人の息がかかるほどの至近距離で、涼介の返事は投げやりになっていた。それでも、崇剛は動くこともせず、十個で涼介を懺悔させる罠を組み立てた。
要求を飲んでしまった涼介の斜め後ろにある、部屋の片隅――バースペースへ、崇剛の冷静な視線は送られ、ひとつ目の命令が下される。
「それではまず、あちらの丸椅子をひとつこちらへ持ってきてください」
「椅子……?」
キスされそうな位置で、未だ拘束されている涼介は拍子抜けした。それでも、ちょっとでも動けば唇が触れ合ってしまうのは、目に見えている。
主人の髪の間から見えるものを不思議そうに眺めていたが、崇剛がやっと涼介から身を引いた。
「っ……」
優雅に元の位置へ座り直し、乱れた髪を神経質な手で背中へ落とし、策略家は次の命令を下す。
「廊下側の壁へ椅子を置いてください」
「わかった」
崇剛によって崩されてしまった体を起こし、涼介はソファーからさっと立ち上がった。
執事が背を向けて歩き出した、その隙に、主人はサングリアの入ったワイングラスと、チーズスティックパイをさしてあるロングカクテルグラスを、ダガーをつかむように中指と人差し指で隣り合うようにくっつけた。
罠という迷路を歩かされている涼介にはさっぱりで、何に使うのかわからないながらも、背の高い丸椅子に手をかけた。
「こうか?」
男らしい大きな手で椅子を軽々と持ち上げ、廊下側の壁へアーミーブーツのかかとを鳴らしながら歩いてゆく。そこでさらに細かい命令が、崇剛から出された。
「椅子の背もたれを壁につけて、そちらへ座ってください」
「んっ!」
涼介は椅子を床に下ろし、壁と向き合うようにそれを間にして立った。男らしく両足の内側を使って、椅子を壁際へぴったりと寄せた。
執事の背後――死角で、崇剛はソファーからそっと立ち上がり、壁の近くにあったローチェストの上へ、サングリアのグラスとチーズスティックパイの入ったロングカクテルグラスを密かに移動する。
「はぁ……」
懺悔させられるのは目に見ている。涼介はため息を吐きながら椅子へ座った。これで、策略的な主人よりも、正直な執事の背丈が意図的に低くなった。
ロングブーツのかかとをエレガントに鳴らして、崇剛は涼介に近づき、半径五十センチ以内に入った。そうして、優雅に微笑みながらこんな言葉を口にする。
「私をあなたの中へ入れてもよろしいですか――?」
わざと単語ふたつを抜かした。突然の言葉で、涼介は椅子に座ったまま、不思議そうな顔をしていたが、
「何をだ? お前を俺に……入れる? それって、お前、まさか……!」
主人の体が、執事の中へ入る――。涼介の中で、この方程式ができ上がり、BL罠にまっしぐらだった。主人はさらに執事に追い討ちをかける。
「私自身――です」
「えぇ、約束です」
主人はとうとう執事を追い詰めた。
こちらで、あなたは私の望むままになるという可能性が98.79%――
うなずかない時には、別の方法を取りましょうか。
崇剛の束ねた紺の長い髪が肩から下へ落ち、絶妙な距離――触れるか触れないかで執事の頬にかかった。悪寒が背中にゾクゾクと走った涼介はうっかりうなずいてしまった。
「わ、わかった……!」
順調に策が進んでいる崇剛は優雅に微笑んだ。そうして、神父らしいアイテムを使って、涼介に言うことを聞かせる条件を一気に増やした。
「それでは、旧約聖書、出エジプト記、モーセの十戒と称して、私の言うことは十個先まで必ず聞いてください。よろしいですか?」
「わ、わかった」
主人の息がかかるほどの至近距離で、涼介の返事は投げやりになっていた。それでも、崇剛は動くこともせず、十個で涼介を懺悔させる罠を組み立てた。
要求を飲んでしまった涼介の斜め後ろにある、部屋の片隅――バースペースへ、崇剛の冷静な視線は送られ、ひとつ目の命令が下される。
「それではまず、あちらの丸椅子をひとつこちらへ持ってきてください」
「椅子……?」
キスされそうな位置で、未だ拘束されている涼介は拍子抜けした。それでも、ちょっとでも動けば唇が触れ合ってしまうのは、目に見えている。
主人の髪の間から見えるものを不思議そうに眺めていたが、崇剛がやっと涼介から身を引いた。
「っ……」
優雅に元の位置へ座り直し、乱れた髪を神経質な手で背中へ落とし、策略家は次の命令を下す。
「廊下側の壁へ椅子を置いてください」
「わかった」
崇剛によって崩されてしまった体を起こし、涼介はソファーからさっと立ち上がった。
執事が背を向けて歩き出した、その隙に、主人はサングリアの入ったワイングラスと、チーズスティックパイをさしてあるロングカクテルグラスを、ダガーをつかむように中指と人差し指で隣り合うようにくっつけた。
罠という迷路を歩かされている涼介にはさっぱりで、何に使うのかわからないながらも、背の高い丸椅子に手をかけた。
「こうか?」
男らしい大きな手で椅子を軽々と持ち上げ、廊下側の壁へアーミーブーツのかかとを鳴らしながら歩いてゆく。そこでさらに細かい命令が、崇剛から出された。
「椅子の背もたれを壁につけて、そちらへ座ってください」
「んっ!」
涼介は椅子を床に下ろし、壁と向き合うようにそれを間にして立った。男らしく両足の内側を使って、椅子を壁際へぴったりと寄せた。
執事の背後――死角で、崇剛はソファーからそっと立ち上がり、壁の近くにあったローチェストの上へ、サングリアのグラスとチーズスティックパイの入ったロングカクテルグラスを密かに移動する。
「はぁ……」
懺悔させられるのは目に見ている。涼介はため息を吐きながら椅子へ座った。これで、策略的な主人よりも、正直な執事の背丈が意図的に低くなった。
ロングブーツのかかとをエレガントに鳴らして、崇剛は涼介に近づき、半径五十センチ以内に入った。そうして、優雅に微笑みながらこんな言葉を口にする。
「私をあなたの中へ入れてもよろしいですか――?」
わざと単語ふたつを抜かした。突然の言葉で、涼介は椅子に座ったまま、不思議そうな顔をしていたが、
「何をだ? お前を俺に……入れる? それって、お前、まさか……!」
主人の体が、執事の中へ入る――。涼介の中で、この方程式ができ上がり、BL罠にまっしぐらだった。主人はさらに執事に追い討ちをかける。
「私自身――です」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
黒騎士団の娼婦
星森 永羽
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる