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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Disturbed information/14
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ひとつはとろみのついた液体――ジンが入ったショットグラス。もうひとつはチェイサーのミドルグラスだった。
国立は右肘をカウンターにつき、左腕を気だるくもたれかからせる。ミニシガリロの煙を吸ったまま、ショットグラスを手に取った。
口から落ちてゆく、冷やされた酒に葉巻の香りが混ざり合い、別々に飲むよりも何倍もの芳醇な味わいに、国立は心地よさを覚え、思わず目を閉じた。
(ポンベイ サファイアは、パンチがあるがまろやかさはねぇ。エキュベルはタンガレーと違って濃厚だ。ダヒドフの癖の強い香りのいい葉巻にも負けねぇ。シンクロ率、百パーだろ)
墓場の聖霊寮で溜まりに溜まったストレスが消されていくというものだ。
「いらっしゃい」
バーテンダーの声が響くと、カウンターの反対側に若い男女のカップルが座った。ショットグラスを傾け、アルコール度数四十二以上もある、冷えたジンを噛みしめるように飲む。
グラスを立派な一枚板のカウンターに置いて、カップルを鋭いブルーグレーの瞳の端に映した。
(人を愛す……か)
涼介しか知らないと思っている、崇剛がひた隠しにしてきた事実が、国立の脳裏に浮かんだ。綺麗に並べられたモルトの瓶を珍しくぼんやり眺める。
(瑠璃お嬢のこと、崇剛が心に思い浮かべねえ理由はふたつだ――)
中心街を見下ろす高台にある、祓いの館。人々のほとんどは奇異な目で見ているのが実情だった。心霊刑事も用がない限りは訪れない。そこに住む主人の恋愛事情など知らないはずだった。
(惚れた相手を邪さんからガードして、もうひとつは……困らせねえことだろ?)
少し高めの椅子の上で、国立のジーパンの足は余裕で組み替えられ、飲んだジンがやけに身に染みる。
(オレとやっこさんは、セイムなポジションだからよ……。シンクロしやがる)
聖霊寮に後輩がきて、出しそびれたものを、ジーパンのポケットから無造作に取り出した。それは白く小さな人型をした紙だった。
(最初に聞いたモンが、れってな。運命っつうのは残酷だ。神さまはずいぶんしけたことしてきやがる)
ミニシガリロの灰をトントンと指で落とすようにするのではなく、灰皿の縁になすりつけるように綺麗に削ぎ落として、葉巻を再びくわえた。
(どよ、霊界が縦社会だってわかってねえのか? 崇剛の野郎。誰が誰の守護してると思ってやがんだ?)
聖霊寮の応接セットにくるたびに、自分を論破してゆく男。隙がなく頭が切れて、中性的で老若男女誰もが見惚れるほどの男。
そんな男がミスを犯しているのかと思うと、国立は鼻でふっと笑った。
(冷静な判断ができてねぇな。恋 煩いってか? やっこさんらしくねぇな)
カウンターに乗っていた小さな紙切れをも持ち上げ、国立が息を吹きかけると、それはキラキラと光り、不思議なことに跡形もなくなった。
紺の長い髪とそれを縛るリボン。寒気を覚えるほどの冷たい水色の瞳。神経質な指先と線の細い体。あの男が脳裏で、優雅に微笑んだかと思うと、不意に消えてまた現れる。
しばらくそんな考え事をしていた国立は、ミニシガリロを口にくわえた時、あの芳醇な香りが体の内へ入ってこなかった。ウェスタンスタイルの男はあきれた顔をする。
「消えてやがる……」
タバコと違って葉巻は放置すると、火が勝手に消えてしまうのだった。ジェットライターでミニシガリロの先端で炎色が再登場すると、国立は青白い煙を吹かし始めた。
ジンのショットを噛みしめて飲みながら、バーテンダーのジョークに時々付き合い、ふと一人きりの時間になると、あの聖霊師の男を思い出す。
そんなふうに過ごし、心霊刑事の口からチェックの声がかかったのは、約三時間後だった。
国立は右肘をカウンターにつき、左腕を気だるくもたれかからせる。ミニシガリロの煙を吸ったまま、ショットグラスを手に取った。
口から落ちてゆく、冷やされた酒に葉巻の香りが混ざり合い、別々に飲むよりも何倍もの芳醇な味わいに、国立は心地よさを覚え、思わず目を閉じた。
(ポンベイ サファイアは、パンチがあるがまろやかさはねぇ。エキュベルはタンガレーと違って濃厚だ。ダヒドフの癖の強い香りのいい葉巻にも負けねぇ。シンクロ率、百パーだろ)
墓場の聖霊寮で溜まりに溜まったストレスが消されていくというものだ。
「いらっしゃい」
バーテンダーの声が響くと、カウンターの反対側に若い男女のカップルが座った。ショットグラスを傾け、アルコール度数四十二以上もある、冷えたジンを噛みしめるように飲む。
グラスを立派な一枚板のカウンターに置いて、カップルを鋭いブルーグレーの瞳の端に映した。
(人を愛す……か)
涼介しか知らないと思っている、崇剛がひた隠しにしてきた事実が、国立の脳裏に浮かんだ。綺麗に並べられたモルトの瓶を珍しくぼんやり眺める。
(瑠璃お嬢のこと、崇剛が心に思い浮かべねえ理由はふたつだ――)
中心街を見下ろす高台にある、祓いの館。人々のほとんどは奇異な目で見ているのが実情だった。心霊刑事も用がない限りは訪れない。そこに住む主人の恋愛事情など知らないはずだった。
(惚れた相手を邪さんからガードして、もうひとつは……困らせねえことだろ?)
少し高めの椅子の上で、国立のジーパンの足は余裕で組み替えられ、飲んだジンがやけに身に染みる。
(オレとやっこさんは、セイムなポジションだからよ……。シンクロしやがる)
聖霊寮に後輩がきて、出しそびれたものを、ジーパンのポケットから無造作に取り出した。それは白く小さな人型をした紙だった。
(最初に聞いたモンが、れってな。運命っつうのは残酷だ。神さまはずいぶんしけたことしてきやがる)
ミニシガリロの灰をトントンと指で落とすようにするのではなく、灰皿の縁になすりつけるように綺麗に削ぎ落として、葉巻を再びくわえた。
(どよ、霊界が縦社会だってわかってねえのか? 崇剛の野郎。誰が誰の守護してると思ってやがんだ?)
聖霊寮の応接セットにくるたびに、自分を論破してゆく男。隙がなく頭が切れて、中性的で老若男女誰もが見惚れるほどの男。
そんな男がミスを犯しているのかと思うと、国立は鼻でふっと笑った。
(冷静な判断ができてねぇな。恋 煩いってか? やっこさんらしくねぇな)
カウンターに乗っていた小さな紙切れをも持ち上げ、国立が息を吹きかけると、それはキラキラと光り、不思議なことに跡形もなくなった。
紺の長い髪とそれを縛るリボン。寒気を覚えるほどの冷たい水色の瞳。神経質な指先と線の細い体。あの男が脳裏で、優雅に微笑んだかと思うと、不意に消えてまた現れる。
しばらくそんな考え事をしていた国立は、ミニシガリロを口にくわえた時、あの芳醇な香りが体の内へ入ってこなかった。ウェスタンスタイルの男はあきれた顔をする。
「消えてやがる……」
タバコと違って葉巻は放置すると、火が勝手に消えてしまうのだった。ジェットライターでミニシガリロの先端で炎色が再登場すると、国立は青白い煙を吹かし始めた。
ジンのショットを噛みしめて飲みながら、バーテンダーのジョークに時々付き合い、ふと一人きりの時間になると、あの聖霊師の男を思い出す。
そんなふうに過ごし、心霊刑事の口からチェックの声がかかったのは、約三時間後だった。
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