明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

主人は執事をアグレッシブに叱りたい/4

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 怪我の心配をしている執事の隣で、崇剛はティーカップをソーサーへ戻し、優雅な笑みを絶やさなかった。

(わかりやすい人ですね、涼介も。私が予測した通りの質問をしてきますね)

 ロングブーツの細い足を軽く組み、膨大なデータが流れっぱなしの冷静な頭脳の持ち主は、わざと別の言い回しをして真の回答をさけた。

「盲目……もしくは、呪縛……それとも、拘束かもしれませんね」
(冷静な判断を下せず、心が彼女に縛り付けられ、今はダガーが使えないという身の不自由。ですから、嘘は言っていません)

 そうして、策略家は執事を同時に罠へと誘い込んだ。

(ですが、涼介には勘違いしていただきます)

 自分が使ったことのない単語が並べられて、涼介は初め戸惑い、崇剛の顔をまじまじと見つめた。

「盲目、呪縛、拘束……?」

 執事は心の中で、わかりやすく言い換えてみる。

(目が見えない? 縛りつける、動けない……? 目隠し……自由を奪う……!?)

 崇剛の右手に巻きつけられている包帯がふと目に入り、毎日のようにBL妄想をさせられている執事は、策略的な主人の思惑通り色欲だらけの世界へと引きずり込まれた。

(ひも状のもの……結ぶ、縛る!? 俺の体の自由を奪う!!)

 涼介はテーブルの上に放り投げたメモを横目て見て、思わず息を飲む。

(懺悔させられるのは、目に見えてる……)

 無残にも主人の罠にかかりにいくことはない――。誰だってそう思うのが当たり前だ。

 涼介もそうだった。このわかり切っている災難から何とか逃げ切ろうとした。顔は動かさず、視界の端で崇剛の傷をうかがいながら、通常の人レベルで記憶をたどり、細心の注意を払った。

(この間のダーツの時――。崇剛は頭がいい。だから、同じことはしてこない!)

 同じ屋根の下で暮らしているのに、執事は主人の思考回路が過去に重きが置かれていると理解していなかった。

 策略的な主人は真正面の壁一面に広がる、神世を思わせる青を基調にした抽象的な絵画を眺めている。

 涼介は素直で正直という傾向がある。
 従って、以前使った同じ罠を、私が仕掛けてこないと判断しているという可能性が92.34%――
 ですから、同じ罠を使いましょう。
 
 懺悔をさせることが既に決定している、執事の裏をかく作戦に主人は入った。

 涼介は私のように、きちんと記憶はしていません。
 ですから、覚えている可能性の一番高い日。
 すなわち、今から一番近い日付で、罠を仕掛けた日……。
 四月十八日、月曜日、二十時二十分二十一秒以降。
 ダーツをした時と同じ方法を使いましょう。

 ソファーに座っている執事を頬で感じる。あの夜も椅子に腰掛けさせた涼介。壁ドンが使えないのは、主人は当然わかっていた。

 ですが、そちらのままでは、涼介に避けられてしまうという可能性が95.67%――
 ですから、以下のようにします。

 全てを記憶する頭脳の持ち主は、彼の特徴を存分に発揮する罠を思いついたのだった。水色の瞳はついっと細められる。

 ひとつひとつの罠と事実を、バラバラにして、順番を組み直します。
 あちらの日の罠と事実の順番は、以下の通りです。

 感情は抜きにして、ダーツの夜に仕掛けた策と手に入れた情報を箇条書きにして、頭の中に並べた。

 一.涼介に質問をさせる。
 二.涼介に懺悔させる。
 三.涼介から情報を入手する。
 四.涼介が冷静に返答できないように、私が彼に近づく。
 五.罠を発動させるために、涼介をうなずかせる。
 六.私の言うことを、涼介に聞かせる。
 七.涼介に私の言葉を勘違いさせる。
 八.壁ドンをする。
 九.髪を束ねているリボンを解く。
 十.涼介の視界の自由を奪う。
 十一.部屋にあるものを使い、涼介を勘違いさせる。
 十二.私の吐息交じりの声に、涼介は戸惑っているように見えた。
 十三.涼介が私に暴言を吐いてくる。

 最後の項目は、崇剛の中では百パーセントに近い確率で発生する事例だ。主人は密かに期待する。執事が今日は何と言ってくるのかと。
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