565 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
主人は執事をアグレッシブに叱りたい/6
しおりを挟む
主人は執事に逃げられないように、さらに涼介にほうへ体をねじり、ロングブーツの右膝をソファーの上へ立てて乗せた。
左足は床の上にまだしっかりと落としたまま、わざと苦しそうな顔で悩ましげに、崇剛はこんな言葉を言ってのけた。
「もう待てませんので、よろしいですか?」
七.涼介に私の言葉を勘違いさせる――
別のことが待てないのです。
近づいてきそうな主人をさけるために、涼介は崇剛を注意深く正面から見ようとする。体を左にねじって、ソファーの膝掛けに背をそらせるようにもたれかかった。
「な、何をだ?」
警戒していたつもりだったが、涼介の心臓はバクバクと早鐘を打ち出した。主人の言葉をこんな解釈にしてしまったばかりに。
(ど、どうして、その、発情しましたみたいな言い方をしてるんだ?)
上半身だけ仰向けに倒れているようになっている涼介を前にして、崇剛は心の中で密かにくすくす笑った。
私の望んだ通りに動きますね、涼介は。
ソファーへ横向きに、自身で倒れています。
こうして、主人と執事の会話が絶妙にずれたまま――いや涼介だけが同性同士の大人の話に勘違いしたまま話は進んでゆく。
執事の左足がソファーの奥でつっかえ、崇剛の右膝は涼介の両足奥――体近くへと差し込まれた。待てないものが何なのか、そっと打ち明ける。
「私の身と心です」
さらに、七をもう一度です。
身も心も危険であるという可能性が87.56%から上がり、92.67%――
冷静な水色の視界の端には窓枠が映っていた。
涼介の思考回路は完全にやられていた。崇剛が何の話をしているのか知らないどころか、最初の言葉が何だったのかさえ覚えていなかったのだ。
「そ、それって……!」
涼介は言葉をつまらせ、驚愕に表情は染まった。
(瑠璃様に断られたショックで男に走った!?)
策略的な主人の手口で、BL妄想の深みへと堕とされて、涼介は崇剛の特徴を忘れ、あり得ない結論に到達してしまった。
血でにじんでいる包帯を、崇剛は涼介のベルトへと伸ばし、わざと手前で止めた。
「私の右手がこれ以上待てません」
恥ずかしいという感情をも、策士は冷静な頭脳で抑え込んだ。
さらに、七をもう一度です。
右側に危険があるのです。
すなわち、ソファーの背もたれで、あることが起きてしまったのです。
服を脱がされそうなニュアンスを思いっきり突きつけられ、涼介は右の手のひらを崇剛の前へ押し出した。
「いや、待て!」
男の操を守りたい執事は頑なに拒んだ。相手が自分でなくてもいいだろうと。
崇剛は涼介の腕を左手で軽々とよけ、そのひらを肘掛けの部分に乗せ、執事の上に上半身を乗り出した。
「従っていただけないのでしたら、こちらのまましますよ」
四.涼介が冷静に返答できないように、私が彼に近づく――
強制的に従っていただきます。
冷静な水色の瞳が、純粋なベビーブルーのそれを、上から完全に見下ろす形となった。
涼介はどこへにもずれることも、起き上がることができない体勢に、崇剛によって持っていかれた。さらにBL妄想という奈落の底へ転落したのだった。
「す、する?」
(男同士で、するってことか!?)
春の穏やかな日差しの中で、執事は一人夜色となる。
決して優しい人間ではない、策略的な主人は徹底的なまでに、罠を完璧なものへと変えてゆく。
キスができそうな位置まで、崇剛は涼介に顔を近づけた。主人の遊線が螺旋を描く優雅で独特な声の響きで、こんな意味深な言葉が男ふたりだけの部屋に忍び込んだ。
「えぇ、縛りつけたいのです」
四.涼介が冷静に返答できないように、私が彼に近づく――
五.罠を発動させるために、涼介をうなずかせる――
六.私の言うことを、涼介に聞かせる――
九.髪を束ねているリボンを解く――の四つ同時です。
はずれてしまったので、あるものを縛り直したいのです。
ふたりの斜め上で、風に揺れるカーテンは真ん中のあたりで、縄状のものが波を打つようにひらひらと舞っていた。
左足は床の上にまだしっかりと落としたまま、わざと苦しそうな顔で悩ましげに、崇剛はこんな言葉を言ってのけた。
「もう待てませんので、よろしいですか?」
七.涼介に私の言葉を勘違いさせる――
別のことが待てないのです。
近づいてきそうな主人をさけるために、涼介は崇剛を注意深く正面から見ようとする。体を左にねじって、ソファーの膝掛けに背をそらせるようにもたれかかった。
「な、何をだ?」
警戒していたつもりだったが、涼介の心臓はバクバクと早鐘を打ち出した。主人の言葉をこんな解釈にしてしまったばかりに。
(ど、どうして、その、発情しましたみたいな言い方をしてるんだ?)
上半身だけ仰向けに倒れているようになっている涼介を前にして、崇剛は心の中で密かにくすくす笑った。
私の望んだ通りに動きますね、涼介は。
ソファーへ横向きに、自身で倒れています。
こうして、主人と執事の会話が絶妙にずれたまま――いや涼介だけが同性同士の大人の話に勘違いしたまま話は進んでゆく。
執事の左足がソファーの奥でつっかえ、崇剛の右膝は涼介の両足奥――体近くへと差し込まれた。待てないものが何なのか、そっと打ち明ける。
「私の身と心です」
さらに、七をもう一度です。
身も心も危険であるという可能性が87.56%から上がり、92.67%――
冷静な水色の視界の端には窓枠が映っていた。
涼介の思考回路は完全にやられていた。崇剛が何の話をしているのか知らないどころか、最初の言葉が何だったのかさえ覚えていなかったのだ。
「そ、それって……!」
涼介は言葉をつまらせ、驚愕に表情は染まった。
(瑠璃様に断られたショックで男に走った!?)
策略的な主人の手口で、BL妄想の深みへと堕とされて、涼介は崇剛の特徴を忘れ、あり得ない結論に到達してしまった。
血でにじんでいる包帯を、崇剛は涼介のベルトへと伸ばし、わざと手前で止めた。
「私の右手がこれ以上待てません」
恥ずかしいという感情をも、策士は冷静な頭脳で抑え込んだ。
さらに、七をもう一度です。
右側に危険があるのです。
すなわち、ソファーの背もたれで、あることが起きてしまったのです。
服を脱がされそうなニュアンスを思いっきり突きつけられ、涼介は右の手のひらを崇剛の前へ押し出した。
「いや、待て!」
男の操を守りたい執事は頑なに拒んだ。相手が自分でなくてもいいだろうと。
崇剛は涼介の腕を左手で軽々とよけ、そのひらを肘掛けの部分に乗せ、執事の上に上半身を乗り出した。
「従っていただけないのでしたら、こちらのまましますよ」
四.涼介が冷静に返答できないように、私が彼に近づく――
強制的に従っていただきます。
冷静な水色の瞳が、純粋なベビーブルーのそれを、上から完全に見下ろす形となった。
涼介はどこへにもずれることも、起き上がることができない体勢に、崇剛によって持っていかれた。さらにBL妄想という奈落の底へ転落したのだった。
「す、する?」
(男同士で、するってことか!?)
春の穏やかな日差しの中で、執事は一人夜色となる。
決して優しい人間ではない、策略的な主人は徹底的なまでに、罠を完璧なものへと変えてゆく。
キスができそうな位置まで、崇剛は涼介に顔を近づけた。主人の遊線が螺旋を描く優雅で独特な声の響きで、こんな意味深な言葉が男ふたりだけの部屋に忍び込んだ。
「えぇ、縛りつけたいのです」
四.涼介が冷静に返答できないように、私が彼に近づく――
五.罠を発動させるために、涼介をうなずかせる――
六.私の言うことを、涼介に聞かせる――
九.髪を束ねているリボンを解く――の四つ同時です。
はずれてしまったので、あるものを縛り直したいのです。
ふたりの斜め上で、風に揺れるカーテンは真ん中のあたりで、縄状のものが波を打つようにひらひらと舞っていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる