明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
633 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Time for thinking/4

しおりを挟む
 サングリアの柑橘系の香りが、聖霊師の臭覚と味覚の両方へ酔いという甘美な刺激をもたらす。

 まずは、恩田 元が見ている過去世の夢です――
 こちらの筋が通る順番は以下の通りです。
 一.うめき声と悲鳴が、男性と女性の声の両方で、複数聞こえてくる。
 二.悲鳴と断末魔が、男性と女性の声の両方で、複数聞こえてくる。
 三.血の匂いがした。
 四.血で視界が真っ赤になる。
 五.『いい……だ」と言った。
 こちらまでが過去世の記憶であるという可能性が76.56%――

 サングリアを一口飲んだ。水色の瞳の端では、聖女が桃色の湯呑みへ小さな手を伸ばし、少し不味な玉露を口にしている姿があったが、

「…………」

 瑠璃は何も言葉を発しなかった。

 イコール、事実として確定、100%――

 この作業がこの先、何度となく繰り返される。

 茶色のロングブーツは優雅に組まれ、元の夢を整理し続ける。

 六.『返して……』と言われる。
 七.自分自身が斬られる。
 八.体をつかまれる。
 以上が正しい順番であるという可能性が99.99%――
 これらから導き出せること、そちらは……。
 恩田 元が過去世で複数の人間を殺し、恨みなどをもたれ、他の人たちが自分たちと同じ目に遭わせようとし、恩田 元自身が斬られるという夢を、悪霊によって見せられたという可能性が87.96%――

 鉄槌を喰らわすかのように、ドガーンと雷鳴が地鳴りをともって背後から襲ってきた。しかし、聖女の小さな唇からは何も聞こえなかった。

 事実として確定――

 床につけたままの片足で反動をつけ、ロッキングチェアを心地よく揺らす。冷静な水色の瞳は閉じられ、昼間、三沢岳で見た転落事故、三件へと迫った。

 恩田 元の一番目の妻――真里。没二十三歳十ヶ月。
 死亡時刻は二十年前、四月十二日、日曜日、十七時十六分二十五秒。
 男の霊によって右肩をつかまれ、肉体から魂が抜ける――幽体離脱をさせられた。
 その後……

 庭崎市を一望できる山頂で、恐ろしく奇怪な事実が、聖霊師と聖女の前で如実に繰り広げられていた。

 真里の霊体と男の霊は崖下へ行き……。
 真里の肉体の足をふたりでつかみ、彼女を谷底へ落とした――
 
 ガス灯の輝きよりも強く青白い雷光が、百年の重みを感じさせる若草色の瞳の中で、爆発的に発光したが、聖女はただ玉露を飲んだだけだった。

 二番目の妻――霧子。没二十五歳七ヶ月。
 死亡時刻は十四年前、四月十一日、日曜日、十七時十六分十二秒。
 男の霊によって右肩をつかまれ、肉体から魂が抜ける――幽体離脱をさせられた。
 その後、霧子の霊体と男の霊は崖下へ行き……。
 霧子の肉体の足をふたりでつかみ、彼女を谷底へ落とした――

 殺した犯人が誰なのか。いや、殺したという言葉がある意味違っている事件だった。まだ途中の崇剛は、感情など乗せずに、サングリアを優雅に飲んで先に進む。

 三番目の妻――涼子。没二十四歳四ヶ月。
 死亡時刻は六年前、四月十五日、日曜日、十七時十六分四十七秒。
 男の霊によって右肩をつかまれ、肉体から魂が抜ける――幽体離脱をさせられた。
 その後、涼子の霊体と男の霊は崖下へ行き……。
 涼子の肉体の足をふたりでつかみ、彼女を谷底へ落とし殺した――

 さっきからずっと閉じられていた、冷静な水色の瞳はまぶたからさっと解放され、ひとつの結論に達した。

 すなわち、彼女ら三人は己自身で故意に死んでいったのです。
 いわば、霊的な自殺です。

 三沢岳の穏やかな春の日差しと小鳥たちのさえずり。そこに似つかわしくない、転落事故の真相。彼女たちの動機を考えると、死の尊厳はやはりどこにもなかった。

 聖霊寮で、国立が崇剛へとミニシガリロとジェットライターを、埃で濁ったローテーブルを滑らせてきた時の、やり場のない気持ち。

 それにまた襲われそうになったが、

 ですが……

 揺れていたロッキングチェアは不意に止まり、崇剛の瞳は涙で少しにじんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

黒騎士団の娼婦

星森 永羽
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

処理中です...