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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/8
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その頃、土煙ひとつ上げずに、走り続けていたカミエが敵陣とぶつかる寸前へと迫っていた。
(縮地――正中線、腸腰筋、腸骨筋、足裏の意識を高める)
そればかりがさっきから、カミエの頭の中で繰り返されていたが、流れるような仕草で日本刀の柄へと右手を伸ばす。
氷上を滑るが如く、白い袴姿の天使は武術の技を美しいまでに駆使し走り続ける。
間合いゼロになるまで迫っても、カミエは刀を抜く気配を見せなかった。敵にしてみれば、隙だらけの恰好の餌食といったところだった。
カミエの草履が一歩とうとう敵軍へ入り込む。
(無住心剣流――重力に逆らわず、刀を上げる)
カミエの刀は鞘から抜きざまに、敵を押し切りするように斬りつけられた。
「うぎゃぁ~」
抜いてから一旦、頭上で構えてから剣を下ろしてくるものだと思った敵勢は、完全に意表をつかれて、綺麗に真っ二つに縦に斬れ、浄化して消え去った。
ほんの数コンマの出来事。
上げたまま構えた剣では、脇に隙ができてしまうが、
(刀の重さだけで降ろす)
鞘に戻すような仕草で、もう一度日本刀の刃先は敵に鋭く襲いかかった。
「ひゃぁ~!」
煙がゆらゆらと揺れるように、浄化されて敵はまた一人消え去った。
カミエの刀は、振り上げて叩き下ろすという通常の動きとはまったく違った。刃物は刃に触れされすれば、相手を切れるという武術の理論から、尖ったほうを地面に向けたまま、上下に動かすだけで次々と敵を切ってゆく。
短時間で長距離を移動する縮地を、走りに応用したスピードには敵の誰もがついていけないどころか、目にも止まらぬ速さで、敵陣のあちこちに悲鳴と鋭い鉛色の線が描かれ続ける。
カミエの攻撃があまりにも早く、敵は切られたことも気づかず、武道家の重厚感のある体だけが前へ進む。そうして、数秒遅れてから背後で、
「うわぁっ!」
「うぎゃ~っ!」
攻撃の衝撃で、モーセが海を割いたが如く、敵がカミエを中心にして宙を反り返り吹き飛ぶ。まるで、水面に落ちた水滴が跳ね上がるかのように。
カミエの呼吸は乱れず、深緑の短髪が走る風圧に揺れ、頬にかかる横顔は男らしいシャープな面差しだった。
*
一方、先遣隊にされたクリュダはシャベルだけで、敵陣を縦に突っ切り終えていた。邪神界軍の背後の荒野で、存在し得ないナスカの地上絵をあちこち探し回っている。
「こちらでしょうか?」
戦争中であることはなどすっかり忘れて、発掘作業に精を出す。長身を生かして、あたりを見渡す。
「ありません。それでは、あちらでしょうか?」
砂埃だらけのひび割れた真っ平らな大地がどこまでも続くだけ。両翼を羽ばたかせて、敵軍の背後を横へ悠々と飛んでゆく。
「こちらにもありませんね。どちらにあるんでしょう?」
ずいぶん長い間探し回ったが、どうにも見つからなかった。クリュダはあごに握り拳を当てて、難しそうな顔をしていたが、ふと背後――邪神界軍が背を向けている方向へ振り返った。
「一度戻って、ラジュさんに詳しい場所を――」
敵陣の背後で、トントンと背中を何者かに叩かれた。
「はい?」
ふと振り返ると、そこには誰かの手のひらに乗っている、茶色をした雪だるまのような曲線を描くものがあった。
それが何だかわかると、クリュダの蒼色の瞳はみるみる輝いてゆく。「こちらはっ!」研究バカはガバッとそれを、衝動的に両腕で抱きしめた。
(縮地――正中線、腸腰筋、腸骨筋、足裏の意識を高める)
そればかりがさっきから、カミエの頭の中で繰り返されていたが、流れるような仕草で日本刀の柄へと右手を伸ばす。
氷上を滑るが如く、白い袴姿の天使は武術の技を美しいまでに駆使し走り続ける。
間合いゼロになるまで迫っても、カミエは刀を抜く気配を見せなかった。敵にしてみれば、隙だらけの恰好の餌食といったところだった。
カミエの草履が一歩とうとう敵軍へ入り込む。
(無住心剣流――重力に逆らわず、刀を上げる)
カミエの刀は鞘から抜きざまに、敵を押し切りするように斬りつけられた。
「うぎゃぁ~」
抜いてから一旦、頭上で構えてから剣を下ろしてくるものだと思った敵勢は、完全に意表をつかれて、綺麗に真っ二つに縦に斬れ、浄化して消え去った。
ほんの数コンマの出来事。
上げたまま構えた剣では、脇に隙ができてしまうが、
(刀の重さだけで降ろす)
鞘に戻すような仕草で、もう一度日本刀の刃先は敵に鋭く襲いかかった。
「ひゃぁ~!」
煙がゆらゆらと揺れるように、浄化されて敵はまた一人消え去った。
カミエの刀は、振り上げて叩き下ろすという通常の動きとはまったく違った。刃物は刃に触れされすれば、相手を切れるという武術の理論から、尖ったほうを地面に向けたまま、上下に動かすだけで次々と敵を切ってゆく。
短時間で長距離を移動する縮地を、走りに応用したスピードには敵の誰もがついていけないどころか、目にも止まらぬ速さで、敵陣のあちこちに悲鳴と鋭い鉛色の線が描かれ続ける。
カミエの攻撃があまりにも早く、敵は切られたことも気づかず、武道家の重厚感のある体だけが前へ進む。そうして、数秒遅れてから背後で、
「うわぁっ!」
「うぎゃ~っ!」
攻撃の衝撃で、モーセが海を割いたが如く、敵がカミエを中心にして宙を反り返り吹き飛ぶ。まるで、水面に落ちた水滴が跳ね上がるかのように。
カミエの呼吸は乱れず、深緑の短髪が走る風圧に揺れ、頬にかかる横顔は男らしいシャープな面差しだった。
*
一方、先遣隊にされたクリュダはシャベルだけで、敵陣を縦に突っ切り終えていた。邪神界軍の背後の荒野で、存在し得ないナスカの地上絵をあちこち探し回っている。
「こちらでしょうか?」
戦争中であることはなどすっかり忘れて、発掘作業に精を出す。長身を生かして、あたりを見渡す。
「ありません。それでは、あちらでしょうか?」
砂埃だらけのひび割れた真っ平らな大地がどこまでも続くだけ。両翼を羽ばたかせて、敵軍の背後を横へ悠々と飛んでゆく。
「こちらにもありませんね。どちらにあるんでしょう?」
ずいぶん長い間探し回ったが、どうにも見つからなかった。クリュダはあごに握り拳を当てて、難しそうな顔をしていたが、ふと背後――邪神界軍が背を向けている方向へ振り返った。
「一度戻って、ラジュさんに詳しい場所を――」
敵陣の背後で、トントンと背中を何者かに叩かれた。
「はい?」
ふと振り返ると、そこには誰かの手のひらに乗っている、茶色をした雪だるまのような曲線を描くものがあった。
それが何だかわかると、クリュダの蒼色の瞳はみるみる輝いてゆく。「こちらはっ!」研究バカはガバッとそれを、衝動的に両腕で抱きしめた。
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