明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

お礼参り/6

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 ふたりの距離がまた少し縮まる。

「ガキの頃、てめえのこと何っつってたんだ?」
「僕です」
「生まれた時から上品でいやがる」

 住んでいる世界が違う――

「学校には行かなかったのかよ?」

 大富豪のラハイアット家だ。家庭教師でも雇っていたのかと、彰彦はにらんだ。

「最初は行っていましたが……」そこまで言ったが、崇剛は瞳を曇らした。

 らしくないことをする――。

 冷静な水色の瞳は、他の誰よりも物事をよく見ることができる。敏腕刑事と呼ばれて、数々の事件の裏に隠された人の心の闇に出会ってきた、彰彦には予測がついた。

「仲間はずれにされたってか? メシア持ってっから、人と違うってよ」
「そうかもしれませんね」

 ルビー色のワイングラスを傾ける男は、全てを記憶する頭脳も持ち合わせている。過去の辛い出来事も昨日のように覚えている。

 ラハイアット夫妻のたくさんな愛の元で、大きな屋敷で生きてきた。社会へ出た途端、幽霊を見たと言えば、嘘つき、気味が悪いと言われる日々。何度も挑戦し続けたが、人の恐怖心を、人間である崇剛は拭い去ることはできなかった。

 激情の獣が胸の内で牙を剥き、雄叫びを上げているだろうに、崇剛は冷静という名の盾でしっかりと抑え込んだ。

「そのクールな考え方はガキの頃からか?」

「そうですね」神経質な指先で取り上げたミニシガリロを、崇剛はひと吹かしして、
「ですが、幼い頃は可能性の導き出し方をよく間違って、失敗していましたよ」

 数々の子供らしい失態を思い返して、優雅な笑みが戻った。

 完璧なまでに、彰彦の恋心を情報として持っていって、デジタルに切り捨てた男が、誤って立ち止まったり、痛い目にあっているとは――。

「失敗か……。無縁に見えんのにな、お前さんにはよ」彰彦は青白い煙を吐いた。

「そんなことはありませんよ。今でも失敗することはあります」

 神ではあるまいし――。口外しないだけで、可能性の導き出し方など間違えることはある。ただ、年々、訂正の仕方が上達してきているのは確かだが。

「あなたはどのような子供だったのですか?」

 優雅な心霊探偵からすれば、心霊刑事はミステリアスだった。

「オレか?」灰皿になすりつけていたミニシガリロを置いて、彰彦は崇剛の顔を見た。

「えぇ」

 崇剛に促されて、彰彦はショットグラスを少しだけ傾けた。カウンターの奥に並ぶ酒瓶を眺めながら、しゃがれた声で言う。

「オレの家はよ。放任主義――今考えりゃ、育児放棄だったんだろうな」
「そうですか」

 素っ気ない相づちだったが、親の愛情を知らない、崇剛とダルレシアンに、彰彦。共鳴する感情が視界をにじませるが、どこまでもクールに崇剛は切り捨てた。

 太いシルバーリングは過去をたどるように、ミニシガリロに伸びてゆく。

「まぁ、ガキの頃から野郎どもには好かれてたからよ、何とかやってこれたぜ」
「えぇ」

 何か困ったことが起きても助けてくれる大人がいない。食べ物がない。着る物がない。暖を取るものがない。生きてゆくために必要なものが手に入らない。そんな幼少期を過ごして、彰彦の心はすさんだ。

「ずいぶん憎んで恨んだぜ、親のことをよ」

 崇剛の細い指先はコースターの丸みをなぞる。

「そうですか。本で読みましたが、子供は十歳までは手がかかるそうです。それより前に手がかからなくなり、いい子・・・になるのはもうすでに何らかの理由で傷つき、心を閉ざしてしまった子だそうです。そのような幼少期を送った人は、心が欠けたまま大人として生きてゆくことになるそうです」

 彰彦が望むのなら、崇剛は故ラハイアット夫妻からもらった愛を分けようと思った。

 他人と同じスタートラインに立てないまま、がむしゃらに生きてきた三十八年間。憎しみも悲しみも全て噛みしめるように、彰彦はジンの熱を体の中へ落とす。

「そうか」
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