明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

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以心伝心?

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 子供からこんな話しかけられ方よくする。

「パパが言ってたよ」

 うちは10人いるのだ。わからない。

 はずだが、わかるのである。誰のことを言っているのか。
 雰囲気。オーラ。はたまた以心伝心か。不思議なことに、

 漆黒の長い髪を持ち、聡明な瑠璃紺色の瞳の夫。
 昼間に言ってたな、外出先で。

「倫ちゃん、ボク、アイス食べたいんだよね」

 アイス好きだよね。孔明さん。
 毎日食べてる気がする……。

 回想シーンから帰還して、子供たちと話の続きをする。

「アイス食べたいって?」
「そう」
 
 こんなことがよく起きる。
 これを旦那さんたちに置き換えるとこうだ。

 昼間、外食に行った時、子供の誰々が話していた――
 
 一緒に外出に行っていない旦那さんには、きちんと説明しないと通じない。

「昼間、どこどこに食べに行った時、誰々が言っていた」

 だが、

「さっき、子供が言ってたよ」

 これだけで、OKなのである。
 いつのことで、どの子供のことを話しているのか、旦那さんにはきちんと伝わっている。(言葉を話す我が子は、50人近くもいるのに)
 不思議なのである。

 以前も書いたが、月命るなすのみこととは、彼のことを思い浮かべるだけで、

「おや~? 呼びましたか~?」

 と、すぐにそばに瞬間移動してくるのである。

 あとは、ある旦那さんと会話をしているのだが、話し始めは違っても、途中からまったく同じ言葉になる。一字一句同じことを、同じタイミングで話す人がいる。
 それは、焉貴これたかである。

 私の未来は、旦那さんたちには予測済みだ。

 だから、同じことを言える? 疑問に思って聞いてみた。

「そうね……」

 ちょっと肯定が弱いなぁ。

「でも、いつものあれかもよ?」
「無意識の直感?」
「そう」

 ということは、意識してやっていないということだ。それなのに、彼とは言葉が重なる。不思議現象である。

 そうして、こうやって書いていると、
 私の目の前に焉貴がいる。
 私の前は机に乗ったPCと壁だけなのに、物理的におかしい。
 わかった!

「どこかに瞬間移動したでしょ?」
「そう」

 真正面から抱きしめられて、別の場所へ連れてこられているのである。

 焉貴の部屋?

 これも聞かなくても、何となくわかるのである。焉貴の雰囲気というか、カラー? とかいうか。そんな感じである。しかし、

 初めて来た。これは是非拝見。
 
 女子高生に大人気の高校教師。
 純真無垢でR17のミラクル風雲児。
 ホストみたいな格好で、友だちに会いに行く旦那。
 下着を履いていない旦那。
 普段着の白いシャツはボタンひとつ止めで、はだけている旦那。
 眠る時は全裸の旦那。

 そんな彼の部屋は……何もないなぁ。装飾品がない。
 かなりの田舎で育ったから、色々物を置くのが好きじゃないんだな。

 日が沈んでもレースのカーテンのままの窓を見上げて、

「ん? あれってすだれ?」
「似たようなもん」

 立位みたいに抱き上げられたまま、何となく気まずく……。このまま始まるような――というか、何か意味があってここに来たような……!

「あっ! いいこと思いついた!」
「何?」

 地球とかじゃなくて、別の惑星でもいいが、青紫のホログラムみたいなものが浮かぶ自室に、焉貴が立っていると、

「――綺麗だと思う」

 夫婦ふたりきりの部屋で言ってしまった。当然、旦那からはこう返ってくるのである。

「何? お前、俺としちゃいたいの?」
「いや、それはちょっと脇へ置いておいて、放置はしないけど……。あとで拾いますけど……。今はピピッときたから言ったの」
「そう」

 さっそく注文である。この世界は限りなくストレスレスで、どんな品物でも頼んで、30分で配達される。

 彼は197cm。私は160cm。断然、私は小さいわけで、彼の腕の中にすっぽりはまるわけで、そのままシュッと書斎机の前に瞬間移動。対面で椅子に座る。
 机に背を向けている私の両脇から手を回して、何かをしている焉貴。少し振り返ると、

「え……? PCなんてやるんだね」
「お前、俺もデジタル頭脳なんだけど……」

 そうだった。忘れてた。数学教師だった。
 注文している間、部屋を見る形になっている私は見渡して、

「焉貴さん、自分の部屋のベッドで寝ることあるの?」

 子持ちのパパである。自室では寝ないだろう。
 だが、焉貴から返ってきたのは、こんな返事だった。

「別の寝るね」
「あぁ、そっちか」

 鋭利なスミレ色の瞳の右だけを、針のような輝きを持つ黒の前髪で隠している夫が、ふと脳裏に浮かんだ。他人の空似の元友人。

「蓮と?」
「そう」

 こんな会話が普通なのだ。バイセクシャルの複数婚は。
 そうして、今の会話も以心伝心。

 2019年7月25日、木曜日

 おまけ。
 逆もある。思いも寄らない言葉が返ってくることも。
 この間、アイスクリームが夜食としていきなり登場。

 子供たちが嬉しそうに、私の部屋やって来た。

「誰にもらったの?」

 そうして、こう返ってきたのである。

「パパの仕事の人」

 意味不明である。
 しかし、言いたいことはわかる。

 ――パパと仕事が同じ人。

 大爆笑だ。
 そうして、どの旦那さんだかわからなかった。

 え~っとね、この時間帯に帰ってくる人……?
 国家公務員だ。
 どっち?

 後ろに立っていた光命ひかりのみことに聞いた。

貴増参たかふみさんと独健どっけんさんどっちですか?」
「…………」

 くすくすという笑い声しか聞こえてこなかった。

 ん? 何で、光さんは笑ってるんだ?
 聞き間違った?

「……独健です」

 そうして、数日後に気づくのである。理論で考えれば、答えは簡単に出たと。

 国家公務員はふたりしかいない。
 貴増参は育児休暇中だ。独健しか残らないのである。

 以心伝心じゃない時もある。人生は厳しいのだ。
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