35 / 80
蓮と光命
しおりを挟む
蓮と光命。
バイセクシャルの複数婚に、最初に踏み切った夫たちだ。
ふたりは同じ音楽家。事務所も一緒。
結婚後に聞いた話だが、仕事帰りに、食事によく一緒に行ったそうだ。すると、話は他の誰よりも弾む。夜も更けてきて、別々の家に帰る時間が迫る。
このまま、夜の街にふたりで消えたい――
何度も思ったそうだ。もちろん、結婚するまでは、行動に移したことはないが。不倫になってしまうからね。
本編でも出てきたが、蓮と光命がセックスをし終わって、蓮が気分がよくなり、スーパーを全裸で走った。とあったが、このふたりは結構仲がいい。貴族的でおしゃれ感があるカップルである。例えていうなら、
不機嫌な王子と優雅な王子。鋭利なスミレ色の瞳と冷静な水色の瞳が一直線に交わる、ふたりきりの舞踏会――
こんな感じだ。
結婚したばかりのある日、ふたりで妻の部屋にやってきた。光命が、
「明日、蓮とふたりで出かけます」
最初何を言っているのかわからなかったが、
「あぁっ! デートに行くんですね!」
と言ったら、蓮に後頭部を思いっきりひっぱたかれた。
「図星で、恥ずかしいからって、叩くことはないと思うんだけど……」
「おかしな人たちですね」
光命がくすくす笑っていた。
最初の頃はよく、というか、旦那さんはふたりしかいなかったから、蓮と光命のペアはよく見かけた。しかし、最近ほとんど一緒にいないのである。
たま~に、蓮が私のそばに来る時がある。その時は、よく光命の話をする。
「蓮は、光さんとの子供はいいの?」
「………………………………」
ノーリアクション、返事なし。すなわち、肯定。
しかし、ここで、
言ってくれば?――などと言ったら、ひねくれ蓮は怒る。ということで、こう言う。
「光さんにその話したら、喜ぶと思うんだけどなぁ~」
「………………………………」
どこまでも続きそうな沈黙だったが、すっと椅子から立ち上がって、部屋から出ていった。
行った、行った!
慌ててあとを追って、食堂のドア前で、妻は息を整える。そうっと扉を開けると、
あぁっ!?!?
こんな光景が広がっていた。
蓮と光命が手を取り合って、舞踏会のワルツを踊るようにくるくるとダンスのステップを踏んでいる。そのまわりで、子供たちが嬉しそうにくるくる回っている。
妻はやってられるか的に、ドアをぴしゃんと投げやりに閉めたくなった。
何だよ! ラブラブなんじゃないか!
そうして、今日。蓮がまたそばにやってきた。彼はエロ話を、そのままの言葉で言うのも聞くのも嫌な人でる。
光さんと最近セックスしてないよね?――
などと言ったら、火山噴火ボイスが浴びせられるのは目に見えている。だから、
「最近、光さんとペア組んでないよね?」
「………………………………」
ノーリアクション、返事なし。すなわち、考え中――最近の記憶を探り中。
鋭利なスミレ色の瞳はあちこちに向けられていたが、やがてポケットから携帯電話を取り出した。
誰かに電話をかけている。すぐに、相手が出て、
「どうしたのですか?」
光命の声だ。そうして、奥行きがあり少し低めの蓮の声が、
「今夜……」
それっきり何も言わない。
それで通じるの? 光さんに。
しかし、遊線が螺旋を描く優雅で芯のある男の響きが、電話の向こうから返ってきた。
「えぇ、構いませんよ」
だって。
テーブルの上にあった紙ナプキンを、やってられるか的に、妻はぴしゃんと投げつけたくなった。
何だよ!
やっぱり、ラブラブじゃないか!
以心伝心夫夫だね。
実は罠なのだ、光命の。
こういうことである。
光命が蓮を誘うことはあるだろう。こんな感じで、
「蓮、私としませんか?」
これだったら、潔癖症の蓮も怒らないし、基本的にプロポーズした男からの誘いだ。断ることもないだろう。しかし、逆が発生しないのだ、ただ待っているだけでは。
蓮が誘ってくるなんて、妻もそんなシチュエーションに出会ったことが一度もない。光命みたいにスーパーエロじゃないしね。自分の立場が劣勢になる――誘うほうにはまずならない。
かと言って、罠を張ったなんて蓮に知れたら、いくら愛する夫――光命でも、小規模噴火は免れない。
ということで、光命は、勘を持っている私を間に通すのだ。
すると、今のように、私が気になるなと直感して、蓮を促し、光命は自身望んだ通り、蓮から誘われるということである。つまりは、誰も傷つかずに、お互いが仲良くなれるということだ。
2019年8月23日、金曜日
バイセクシャルの複数婚に、最初に踏み切った夫たちだ。
ふたりは同じ音楽家。事務所も一緒。
結婚後に聞いた話だが、仕事帰りに、食事によく一緒に行ったそうだ。すると、話は他の誰よりも弾む。夜も更けてきて、別々の家に帰る時間が迫る。
このまま、夜の街にふたりで消えたい――
何度も思ったそうだ。もちろん、結婚するまでは、行動に移したことはないが。不倫になってしまうからね。
本編でも出てきたが、蓮と光命がセックスをし終わって、蓮が気分がよくなり、スーパーを全裸で走った。とあったが、このふたりは結構仲がいい。貴族的でおしゃれ感があるカップルである。例えていうなら、
不機嫌な王子と優雅な王子。鋭利なスミレ色の瞳と冷静な水色の瞳が一直線に交わる、ふたりきりの舞踏会――
こんな感じだ。
結婚したばかりのある日、ふたりで妻の部屋にやってきた。光命が、
「明日、蓮とふたりで出かけます」
最初何を言っているのかわからなかったが、
「あぁっ! デートに行くんですね!」
と言ったら、蓮に後頭部を思いっきりひっぱたかれた。
「図星で、恥ずかしいからって、叩くことはないと思うんだけど……」
「おかしな人たちですね」
光命がくすくす笑っていた。
最初の頃はよく、というか、旦那さんはふたりしかいなかったから、蓮と光命のペアはよく見かけた。しかし、最近ほとんど一緒にいないのである。
たま~に、蓮が私のそばに来る時がある。その時は、よく光命の話をする。
「蓮は、光さんとの子供はいいの?」
「………………………………」
ノーリアクション、返事なし。すなわち、肯定。
しかし、ここで、
言ってくれば?――などと言ったら、ひねくれ蓮は怒る。ということで、こう言う。
「光さんにその話したら、喜ぶと思うんだけどなぁ~」
「………………………………」
どこまでも続きそうな沈黙だったが、すっと椅子から立ち上がって、部屋から出ていった。
行った、行った!
慌ててあとを追って、食堂のドア前で、妻は息を整える。そうっと扉を開けると、
あぁっ!?!?
こんな光景が広がっていた。
蓮と光命が手を取り合って、舞踏会のワルツを踊るようにくるくるとダンスのステップを踏んでいる。そのまわりで、子供たちが嬉しそうにくるくる回っている。
妻はやってられるか的に、ドアをぴしゃんと投げやりに閉めたくなった。
何だよ! ラブラブなんじゃないか!
そうして、今日。蓮がまたそばにやってきた。彼はエロ話を、そのままの言葉で言うのも聞くのも嫌な人でる。
光さんと最近セックスしてないよね?――
などと言ったら、火山噴火ボイスが浴びせられるのは目に見えている。だから、
「最近、光さんとペア組んでないよね?」
「………………………………」
ノーリアクション、返事なし。すなわち、考え中――最近の記憶を探り中。
鋭利なスミレ色の瞳はあちこちに向けられていたが、やがてポケットから携帯電話を取り出した。
誰かに電話をかけている。すぐに、相手が出て、
「どうしたのですか?」
光命の声だ。そうして、奥行きがあり少し低めの蓮の声が、
「今夜……」
それっきり何も言わない。
それで通じるの? 光さんに。
しかし、遊線が螺旋を描く優雅で芯のある男の響きが、電話の向こうから返ってきた。
「えぇ、構いませんよ」
だって。
テーブルの上にあった紙ナプキンを、やってられるか的に、妻はぴしゃんと投げつけたくなった。
何だよ!
やっぱり、ラブラブじゃないか!
以心伝心夫夫だね。
実は罠なのだ、光命の。
こういうことである。
光命が蓮を誘うことはあるだろう。こんな感じで、
「蓮、私としませんか?」
これだったら、潔癖症の蓮も怒らないし、基本的にプロポーズした男からの誘いだ。断ることもないだろう。しかし、逆が発生しないのだ、ただ待っているだけでは。
蓮が誘ってくるなんて、妻もそんなシチュエーションに出会ったことが一度もない。光命みたいにスーパーエロじゃないしね。自分の立場が劣勢になる――誘うほうにはまずならない。
かと言って、罠を張ったなんて蓮に知れたら、いくら愛する夫――光命でも、小規模噴火は免れない。
ということで、光命は、勘を持っている私を間に通すのだ。
すると、今のように、私が気になるなと直感して、蓮を促し、光命は自身望んだ通り、蓮から誘われるということである。つまりは、誰も傷つかずに、お互いが仲良くなれるということだ。
2019年8月23日、金曜日
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる