明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

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キノコ狩り

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 *この章は少々下品な話になっております。ご了承ください。

 妻は今日、病院の日だった。病気は治らないけれども、旦那さんたちがついてきてくれるのは、ありがたいことだ。

 最初の同行者は、光命ひかりのみこと孔明こうめいだけだったのだが、帰りにファミレスに寄ろうと言うことになり、さらに参加者を募ると、

 明引呼あきひこ夕霧命ゆうぎりのみこと月命るなすのみことが行くことになった。貴増参たかふみは、

「僕は家で、子育てをしてます」

 とのことだった。れん独健どっけんは仕事で留守。

 今日は学校の日。我が家は夫婦21人だが、そのうち、教師は10人いる。小学校に上がっていない子供は49人。

 旦那さんたちが全員、妻と一緒に出かけてしまったら、子育てができなくなってしまう。ということで、旦那さんたちは分身して、いざ病院へ。

 孔明と隣の席で電車に乗って、まったりとしていると、

りょうちゃん? ボク、子供たちと一緒に、キノコ狩りに行きたいんだよね?」
「あぁ、いいね。ひかりさん? 一年中季節が秋で、キノコ狩りできる場所ってありましたよね?」

 夕霧命と仲良く乗っている光命が優雅に微笑む。

「えぇ」
「あれって、日帰りで行けるところですか?」
「えぇ」

 泊まるとなると、また大変だ。しかも今は学校も始まっているから、そうそう遠くに行けるわけでもない。

「孔明さん、そこでいいんじゃないんですか?」
「でも、果物狩りもいいよね?」

 去年の今頃はまだ結婚していなかった孔明は、携帯電話で色々見ながら話しかけてくる。フルーツといったら、あの夫の特権である。

「それだったら、焉貴これたかさん、間違いなく喜ぶと思います」

 そこで話は一旦終わり、妻は秋の味覚に想いを馳せる。

 果物だと使い道がないから、キノコのほうが重宝するよね? でも、食べ物は腐らないから、いいのかな?

 そうして帰り道、ファミレスで食事をしていると、教師をしている他の旦那さんたちが帰ってくる時刻となった。

 孔明は何も言わずに、携帯でさっそく誰かに電話をしていた。どうやら、張飛ちょうひらしい。月命が、

「張飛はまだクラブの顧問になっていないんです~。ですから、帰ってくるのが早いんです~」

 月命はクラブの顧問があったのだが、今日は別のイベントのために、急遽クラブ活動はなしになり、非常勤らしく午前中で帰ってきた。また知らない人から、ゼリーを大量にもらって。

 そうこうしているうちに、我が家の風雲児が自宅に帰ってきた。留守番をしていた覚師かくしに、

「みんな、どこ行ったの?」
「すぐ近くで食事してるよ」
「そう」

 少しののち、焉貴がファミレスにやってきた。超ハイテンションで、こんなことを言いながら、

「分身なかなかできなかったよ」

 孔明は張飛に夢中で、焉貴が来たことさえ気づいておらず、ペチャクチャと楽しそうに話している。妻は焉貴にあきれた顔をした。

「はぁ? どういう意味? 守護神の資格の中に、分身するがあったでしょ?」
「あったけどね。久しぶりでさ」

 妻は心の中で密かに思った。

 それは嘘だ。いや、無意識の策略だ。ひらめいてたけど、知らないうちに試験パスしちゃったから、分身の仕方よくわからないんじゃないのかな?

 夕霧命が武道という見地から、

「正中線があるから、しづらいのかもしれん」

 気の流れが1本きちんと通ってるから、ずらして分身できないということか。

 そうして、フルーツを食べ出した焉貴に、妻はさっきの話をしてみた。

「孔明さんが言ってたんだけどね。果物狩りに子供たちと一緒に行こうって」
「そう」

 好きなのに、ずいぶんと無機質な返事だった。これが焉貴なのである。孔明は張飛に夢中で話に参加していない。妻は真面目に、ごく真面目に、

「それかさ、キノコ狩りとか、どうかな?」
「キノコ狩り? これのこと?」

 焉貴が自分の股間に手を当てた。妻は少しだけ微笑んで、

「そうね。そのキノコ狩り」

 一人ボケツッコミをする。

「っていうか、それはどちらかというと、松茸まつたけだね」

 旦那さんは誰も反応してくれなかった。
 もちろん、張飛に夢中な孔明にもスルーされていた。

 いたたまれない気持ちになって、妻は、

「今の発言はなかったことにしてください!」

 と顔をそむけると、そこに光命がいた。彼は神経質な手の甲を中性的な唇につけて、くすくすと上品に笑っていた。

 そうして、そろそろ日も暮れるということで、ファミレスを出た。そこで、妻はまたぶり返してしまった。大人のキノコ狩りの話を。

「それって、奥さんたちにみんなが狩られるってことだよね?」
「そうね」

 焉貴が何の色欲もなく返事をしたあとで、意外な人が反応を示した。

「僕たちが奥さんに狩られるんですか~?」

 るなすさん、意味がわかってて、会話に参加してますよね? 今日は女装で、さっきあきにお姫様抱っこされてましたけど……。

 しかし、みんなで楽しみたい妻は、大人のキノコ狩りがミスっていることに気づいてしまった。

「それじゃダメだ。うちは奥さん11人で、旦那さん10人だから、奥さんひとり余っちゃう」
「そう?」

 焉貴が聞き返す隣で、今だに張飛とラブラブで話している孔明は話に参加していなかった。そこで、妻は参加者――キノコ狩りの奥さんが余らない方法をひらめいてしまった。

「大丈夫だ! 孔明さんがいるから。だって、ペニス7本あるでしょ? だから、奥さんふたりの相手はできる!」

 そこで初めて、孔明が私たちの話に耳を傾けた。

「ボクの何の話~?」

 焉貴の器用さが目立つ手は、今度孔明の股間に向かっていった。

「これの話」

 そうして、夫に性器を触られた孔明が、妻を見て、

「颯ちゃんのエッチ!」
「えぇっ!?!?」

 綺麗な夕暮れの空に、妻のびっくりした大声が響き渡った。オレンジ色がやけに目にむ。

 ことの発端は私じゃないんですけど……。
 そこの高校の数学教師で、無意識の策略家なんですけど……。
 っていうか、孔明さんの元恋人なんですけど……。
 っていうか、焉貴さんなんですけど……。

 釈然としない日だった。

 2019年10月17日、木曜日


 おまけ――

 昨日の夜、蓮がデモテープを焉貴に渡した。それを聞いて、しばらくすると、ふたりともいなくなっていた。

 他の旦那さんが、ふたりでどこかの部屋に行ったと言う。ラブラブでもしているのだろうと思って、放っておいたら、焉貴が先に戻ってきた。

 そこへ、蓮が遅れてやってきて、音楽再生メディアを差し出した。

「…………」

 しかし、何も言わず目線も合わせず、長年連れ添った夫夫ふうふみたいな、阿吽あうんの対応で、去年結婚したばかりの焉貴は、

「何? お前」
「…………」

 それでも何も言わず、

「お前、何も言わないと、俺わかんないんだけど……」
「…………」

 それでも何も言わずに、蓮は部屋から出ていった。焉貴が妻に、

「何? あれ?」

 妻も少々理解しかねる。蓮のことならよく知っている、焉貴と妻。このふたりがわからないのだから、誰もわかるはずもなく。

 しばらくしてから、

「わかった! さっきの曲を直したから、聞いてってことだよ」

 いくら夫夫でも言ってほしいものである。
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