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夢は叶うのだな
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BLは私にとっては、ギャグにしか思えなかった。同性愛など、笑い話だった。しかし今は、それもあるのだと思うようになったのだ。だからこそ、バイセクシャルの複数婚をしているのだ。
十五年前に、私は光命を好きになった。最初、彼の出生ついて何も知らなかった。その後に告げられたのだ。私と彼は、母と息子の関係で、恋愛関係にはなれないのだと。
肉体の欲望がない世界で生きてゆくためには、親子間、兄弟間の恋愛感情があるのは何かの間違い――いや、醜い色欲に溺れているのだ。ひどく自身を詰ったものだ。
そうこうしているうちに、光命は知礼と出会い。永遠に続く愛が普通の神界で、私の存在も知らず、彼は生きてきた。
私は魂が入れ替わり、光命とは他人になったが、もう彼は振り向かないのだと思い込んでいた。
そのあと、蓮に出会って、それは代替えでもなく、本当に好きになって、幸せな日々を送った。子供も生まれて、例え同じ世界にいれなくとも、暖かな家庭はそこにきちんとあった。
しかし、十四年も経って、蓮が光命を私のそばへ連れてきて、彼は私に言ったのだ。
「明日、あなたと結婚します」
ピンときた。
蓮が光命を好きになったのだと。そこには同性愛が存在していた。しかし、私は何の抵抗もなく受け入れられた。十五年の月日が、病気が、私の価値観を変えたのだろう。
光命は勘では決して動かない人だ。事実から可能性を導き出す。0.01%の単位で、好きな気持ちも測る人。そうなると、前から私を知っていたことになる。
三年前から、私から見えない場所で、私を見ていたそうだ。
その頃の私は病気がひどくなり、手足が正常に動かせず、寝たきりの生活に近くなり、少し歩くだけも息切れするようになり、最後には精神病棟へ入院した日々だった。
喜怒哀楽が激しくなる病気で、まわりの人も、自分さえもそれが病気だとは知らなかった。だから、自然と人は離れていき、友達も家族も誰もいなくなった。
精神障害者となり、素の自分を見ている人はもう誰もいないのだと思った。霊感もなくしてしまい、世界で本当に一人になったような気がした。
それでも、光命の思考回路をお手本にして、私は一分も泣かず、理論で物事をとらえるんだ。そこに感情はいらない。
泣いている暇があるのなら、今の自分にできることをしよう。そう言い聞かせて、病気について学ぼうと一歩踏み出した。
退院後は、引越し鬱という言葉がある通り、環境が激変してしまったことに、病状は悪化し、建物の二階に立っていることが怖くてできなくなった。家が崩れてしまうのではないかという、ありえない恐怖を抱いて。
長距離を走る電車にも乗れず、閉鎖される映画館やコンサート会場にも行けなくなった。
シンガーソングライターを目指していたほど、音楽は得意中の得意だったが、音がよく聞こえなくなり、リズムの強弱がめちゃくちゃになっていた。
もう、今までと同じ暮らしは戻ってこないのだと思った。それでも、一人きりで、不安をかき消して、自分の心のメカニズムを知ろうと奮闘していた。
そんな三年間だった。
それを、私が好きで仕方がなかった人は、十四年後に突然やって来て、
「あなたはいつでも一生懸命。何事からも逃げ出しませんでした。ずっと見ていましたよ」
光命はそう言った。奇跡が起きたのだと思った。あの日のことは、一生忘れないだろう。もう奇跡が起きなくても、これで私は十分だ。
いろいろ失って、この世界で誰にも理解されなくても、それでいいと思う。永遠に続く愛はもうそばにある。死んでも続いてゆくのだ。真実の愛は人よりも多い。二十人分もあるのだから。
2020年3月1日、日曜日
十五年前に、私は光命を好きになった。最初、彼の出生ついて何も知らなかった。その後に告げられたのだ。私と彼は、母と息子の関係で、恋愛関係にはなれないのだと。
肉体の欲望がない世界で生きてゆくためには、親子間、兄弟間の恋愛感情があるのは何かの間違い――いや、醜い色欲に溺れているのだ。ひどく自身を詰ったものだ。
そうこうしているうちに、光命は知礼と出会い。永遠に続く愛が普通の神界で、私の存在も知らず、彼は生きてきた。
私は魂が入れ替わり、光命とは他人になったが、もう彼は振り向かないのだと思い込んでいた。
そのあと、蓮に出会って、それは代替えでもなく、本当に好きになって、幸せな日々を送った。子供も生まれて、例え同じ世界にいれなくとも、暖かな家庭はそこにきちんとあった。
しかし、十四年も経って、蓮が光命を私のそばへ連れてきて、彼は私に言ったのだ。
「明日、あなたと結婚します」
ピンときた。
蓮が光命を好きになったのだと。そこには同性愛が存在していた。しかし、私は何の抵抗もなく受け入れられた。十五年の月日が、病気が、私の価値観を変えたのだろう。
光命は勘では決して動かない人だ。事実から可能性を導き出す。0.01%の単位で、好きな気持ちも測る人。そうなると、前から私を知っていたことになる。
三年前から、私から見えない場所で、私を見ていたそうだ。
その頃の私は病気がひどくなり、手足が正常に動かせず、寝たきりの生活に近くなり、少し歩くだけも息切れするようになり、最後には精神病棟へ入院した日々だった。
喜怒哀楽が激しくなる病気で、まわりの人も、自分さえもそれが病気だとは知らなかった。だから、自然と人は離れていき、友達も家族も誰もいなくなった。
精神障害者となり、素の自分を見ている人はもう誰もいないのだと思った。霊感もなくしてしまい、世界で本当に一人になったような気がした。
それでも、光命の思考回路をお手本にして、私は一分も泣かず、理論で物事をとらえるんだ。そこに感情はいらない。
泣いている暇があるのなら、今の自分にできることをしよう。そう言い聞かせて、病気について学ぼうと一歩踏み出した。
退院後は、引越し鬱という言葉がある通り、環境が激変してしまったことに、病状は悪化し、建物の二階に立っていることが怖くてできなくなった。家が崩れてしまうのではないかという、ありえない恐怖を抱いて。
長距離を走る電車にも乗れず、閉鎖される映画館やコンサート会場にも行けなくなった。
シンガーソングライターを目指していたほど、音楽は得意中の得意だったが、音がよく聞こえなくなり、リズムの強弱がめちゃくちゃになっていた。
もう、今までと同じ暮らしは戻ってこないのだと思った。それでも、一人きりで、不安をかき消して、自分の心のメカニズムを知ろうと奮闘していた。
そんな三年間だった。
それを、私が好きで仕方がなかった人は、十四年後に突然やって来て、
「あなたはいつでも一生懸命。何事からも逃げ出しませんでした。ずっと見ていましたよ」
光命はそう言った。奇跡が起きたのだと思った。あの日のことは、一生忘れないだろう。もう奇跡が起きなくても、これで私は十分だ。
いろいろ失って、この世界で誰にも理解されなくても、それでいいと思う。永遠に続く愛はもうそばにある。死んでも続いてゆくのだ。真実の愛は人よりも多い。二十人分もあるのだから。
2020年3月1日、日曜日
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