80 / 80
一緒に縛りたい
しおりを挟む
明日から、光命のツアーは、他の宇宙へ行くこととなる。これは銀河が違うのではなく、宇宙に果てがあり、まったく別の宇宙へ行くという意味だ。
別作品『幽霊と神様にこんにちは』の中でも書いたが、宇宙は、東西南北に四つあり、その真ん中に中央の宇宙というものがあり、五つで総合宇宙と呼ぶ。これが同じ次元に九十九個ある。
つまり、光命はまったく別の総合宇宙へツアーをしに行くのである。ここは南の宇宙で、総合宇宙内はリムジンに乗っていけたが、他の宇宙は宇宙船に乗り、ワープを何度もしてたどり着けるわけで、当然泊まりがけとなる。
少しは慣れたかと思ったが、まだまだ慣れないものだ。光命がいない夜があるなど考えられないのである。守護神の資格を取りに、二週間連絡ができず、会うこともできないという時があったが、他の旦那なら、
「二週間なんてすぐすぐ!」と思えるのに、光命になると、どうしてもそう思えず、涙涙の日々を送ったものだ。
今回は、携帯電話で連絡はつくので、それほど寂しくはないが、娘の愛来は少し寂しがっていると言う。彼女は光命が大好きなのである。
私のそばに光命がいないとなると、仕事で出かけているか、愛来と話しているのどちらかだ。
新しい小説の設定やプロットを考える毎日で、子供が学校へ行く見送りに出ても、妻や旦那たちに相談へ行っても、気づくと、パソコンの前に座っているのである。知らぬ間に、瞬間移動しているのだ。
そうして、いつも大きくため息をついて、
「また、やっちゃったよ。みんなと話してる間に、小説に夢中になって忘れて、自分の部屋に戻ってきしまったあ!」
何度やっても、失敗してしまうのだった。
さっきも、孔明をモデルにしたキャラクターについて、少々本人の意見が聞きたいを思い、瞬間移動すると、なぜか、夕食を食べている孔明の膝の上に移動してしまい、
「颯ちゃん、どうしたの?」
「あぁ、ごめん。今どくから――」
「いいの、このままで」しっかり孔明の膝の上に座らされて、「はい、あ~ん」
今の状況を、妻はコメントした。
「二人羽織ですね」
「そう」孔明の手で運ばれてくる夕食をじっと見ていると、私の食べるべき料理が、誰かの瞬間移動のお陰で、シュッと目の前のテーブルへ並べられた。
「どうも、ご親切に」
夫婦の素晴らしい連携プレイに感心していると、
「颯ちゃん、明日からボクが見るよ」
光命が心配して、守護神の役目を孔明へと託したようだった。
「ありがとうございます」
その後、小説の話をしている間に、勝手に自分の部屋へと戻ってしまった。すると、光命がやって来て、
「あなたを連れて行けないのが心苦しいです」
と言われたが、
「いや、私の本体は一緒に行きますから、安心してください」
地球で小説を書いているのは分身している颯茄である。
それなのに、「あなたの全てを取り逃したくないのです」悲哀の色濃く、光命は悩ましげに言った。
やっぱり、私と光命はいつまで経っても色あせない恋の中で生きている――
氷のうちに秘めたる業火みたいな光命を前にして、ぼうっとしていると、
「あなたと私の手首を縄で縛ってしまいましょうか?」
SM――! 妻は慌てて現実へと戻ってきて、しっかりと諭した。
「ツアーが終わってからにしてください。今から縛っても、明日の朝、とかなくてはいけなくなるではないですか」
「それでは、そのようにしましょうか」
私はそこではたと気づいた――罠だった! 約束してしまった。
「はあ、ツアーが終わっても忘れてたら、教えてください」
「えぇ、構いませんよ」
光命は涼しげに言って、優雅に微笑んだ。
私は光命のコンサートツアー最終日の翌日から、光命と常に行動を共にしないとけないこととなったのだった。どうなることやら……。
――っていうか、守護神はいつもそばにいるのではないか。それでも足りないとは、やはり私の王子様はどこまでもどこまでも深く恋に落ちてしまっているようだ。何もかも投げ打って、底なしの海へと沈んでゆくように――
2020年6月9日、火曜日
別作品『幽霊と神様にこんにちは』の中でも書いたが、宇宙は、東西南北に四つあり、その真ん中に中央の宇宙というものがあり、五つで総合宇宙と呼ぶ。これが同じ次元に九十九個ある。
つまり、光命はまったく別の総合宇宙へツアーをしに行くのである。ここは南の宇宙で、総合宇宙内はリムジンに乗っていけたが、他の宇宙は宇宙船に乗り、ワープを何度もしてたどり着けるわけで、当然泊まりがけとなる。
少しは慣れたかと思ったが、まだまだ慣れないものだ。光命がいない夜があるなど考えられないのである。守護神の資格を取りに、二週間連絡ができず、会うこともできないという時があったが、他の旦那なら、
「二週間なんてすぐすぐ!」と思えるのに、光命になると、どうしてもそう思えず、涙涙の日々を送ったものだ。
今回は、携帯電話で連絡はつくので、それほど寂しくはないが、娘の愛来は少し寂しがっていると言う。彼女は光命が大好きなのである。
私のそばに光命がいないとなると、仕事で出かけているか、愛来と話しているのどちらかだ。
新しい小説の設定やプロットを考える毎日で、子供が学校へ行く見送りに出ても、妻や旦那たちに相談へ行っても、気づくと、パソコンの前に座っているのである。知らぬ間に、瞬間移動しているのだ。
そうして、いつも大きくため息をついて、
「また、やっちゃったよ。みんなと話してる間に、小説に夢中になって忘れて、自分の部屋に戻ってきしまったあ!」
何度やっても、失敗してしまうのだった。
さっきも、孔明をモデルにしたキャラクターについて、少々本人の意見が聞きたいを思い、瞬間移動すると、なぜか、夕食を食べている孔明の膝の上に移動してしまい、
「颯ちゃん、どうしたの?」
「あぁ、ごめん。今どくから――」
「いいの、このままで」しっかり孔明の膝の上に座らされて、「はい、あ~ん」
今の状況を、妻はコメントした。
「二人羽織ですね」
「そう」孔明の手で運ばれてくる夕食をじっと見ていると、私の食べるべき料理が、誰かの瞬間移動のお陰で、シュッと目の前のテーブルへ並べられた。
「どうも、ご親切に」
夫婦の素晴らしい連携プレイに感心していると、
「颯ちゃん、明日からボクが見るよ」
光命が心配して、守護神の役目を孔明へと託したようだった。
「ありがとうございます」
その後、小説の話をしている間に、勝手に自分の部屋へと戻ってしまった。すると、光命がやって来て、
「あなたを連れて行けないのが心苦しいです」
と言われたが、
「いや、私の本体は一緒に行きますから、安心してください」
地球で小説を書いているのは分身している颯茄である。
それなのに、「あなたの全てを取り逃したくないのです」悲哀の色濃く、光命は悩ましげに言った。
やっぱり、私と光命はいつまで経っても色あせない恋の中で生きている――
氷のうちに秘めたる業火みたいな光命を前にして、ぼうっとしていると、
「あなたと私の手首を縄で縛ってしまいましょうか?」
SM――! 妻は慌てて現実へと戻ってきて、しっかりと諭した。
「ツアーが終わってからにしてください。今から縛っても、明日の朝、とかなくてはいけなくなるではないですか」
「それでは、そのようにしましょうか」
私はそこではたと気づいた――罠だった! 約束してしまった。
「はあ、ツアーが終わっても忘れてたら、教えてください」
「えぇ、構いませんよ」
光命は涼しげに言って、優雅に微笑んだ。
私は光命のコンサートツアー最終日の翌日から、光命と常に行動を共にしないとけないこととなったのだった。どうなることやら……。
――っていうか、守護神はいつもそばにいるのではないか。それでも足りないとは、やはり私の王子様はどこまでもどこまでも深く恋に落ちてしまっているようだ。何もかも投げ打って、底なしの海へと沈んでゆくように――
2020年6月9日、火曜日
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる