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9章
9-5
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「嫌だったら、殴ってくれ」
瞼を閉じた青は、叶太の頬を挟んだままゆっくりと顔を近づけてきた。息を止め、叶太もきゅっと目を閉じる。
目を閉じたあとに、すぐ唇に何かが触れる。青の唇だと気づくのに、時間はかからなかった。優しく触れただけのキスは、長いようで短く感じた。
青の顔と手がゆっくりと離れていく。名残惜しかったけど、これ以上長かったらきっと自分は極度の緊張と酸欠でぶっ倒れていたかもしれない。
目を開けると、戸惑いがちな目が叶太を出迎えた。コロコロと忙しなく変わる表情が愛おしくて、叶太は脱力して笑った。
「わがままはどっちだよ」
叶太のツッコミに対して、青は遅れて苦笑する。
「それな」
そのあとは特に言葉を交わすこともなく、気まずい雰囲気が流れた。少し経つと、一階から舞子さんの叶太を呼ぶ声がしたので急いで降りた。
顔が赤くなっていないだろうか。不安でお土産を受け取るときも、俯き加減のまま舞子さんの顔を見ることができなかった。
家に帰って母親に舞子さんからのお土産を渡したあとは、逃げるように自分の部屋へと戻った。ベッドにダイブし、苦しいぐらい枕に顔を埋めた。
一人になると、恥ずかしさがじわじわとこみ上げてくる。
やばいやばいやばい。青とキスしちゃったんだけど。ていうかめっちゃ柔らかかった。気持ちよかった。
キスを思い返すと、全身がうずうずしてくる。じっとしていられなくて、体のどこかを動かしていないとどうにもこうにも落ち着かなかった。
青は詩乃とは付き合っていないと言っていた。それだけじゃない。おそらく青が好きな相手というのは自分……の可能性が高い。
そう思った瞬間、「わーっ!」と叶太は壁に頭をゴンッと打ち付けた。落ち着け落ち着け……と何度も自分に言い聞かせるが、バクバクする心臓はなかなか落ち着いてくれない。
青本人から直接言われたわけじゃない。でも青が自分を見つめる目や、恐々と触れてくる手。そしてためらいがちにキスしてきた唇を思い返すと、そう考えられずにはいられなかった。
――関係あるんだよ。
先ほどの獲物を捉えた豹のような目を思い出し、ゾクッとする。最初はあんな顔をする青を見たのは初めてだと思った。でも……思えばこれまでも、似たような目でこちらを睨んでくることがあったような気がする。
「……オレが好きって言ったら、どんな顔するんだろ」
ぽつっとこぼした独り言が空気に溶けていく。
ふわふわした気持ちは、その夜、眠りにつくその瞬間まで叶太の中で踊っていた。
瞼を閉じた青は、叶太の頬を挟んだままゆっくりと顔を近づけてきた。息を止め、叶太もきゅっと目を閉じる。
目を閉じたあとに、すぐ唇に何かが触れる。青の唇だと気づくのに、時間はかからなかった。優しく触れただけのキスは、長いようで短く感じた。
青の顔と手がゆっくりと離れていく。名残惜しかったけど、これ以上長かったらきっと自分は極度の緊張と酸欠でぶっ倒れていたかもしれない。
目を開けると、戸惑いがちな目が叶太を出迎えた。コロコロと忙しなく変わる表情が愛おしくて、叶太は脱力して笑った。
「わがままはどっちだよ」
叶太のツッコミに対して、青は遅れて苦笑する。
「それな」
そのあとは特に言葉を交わすこともなく、気まずい雰囲気が流れた。少し経つと、一階から舞子さんの叶太を呼ぶ声がしたので急いで降りた。
顔が赤くなっていないだろうか。不安でお土産を受け取るときも、俯き加減のまま舞子さんの顔を見ることができなかった。
家に帰って母親に舞子さんからのお土産を渡したあとは、逃げるように自分の部屋へと戻った。ベッドにダイブし、苦しいぐらい枕に顔を埋めた。
一人になると、恥ずかしさがじわじわとこみ上げてくる。
やばいやばいやばい。青とキスしちゃったんだけど。ていうかめっちゃ柔らかかった。気持ちよかった。
キスを思い返すと、全身がうずうずしてくる。じっとしていられなくて、体のどこかを動かしていないとどうにもこうにも落ち着かなかった。
青は詩乃とは付き合っていないと言っていた。それだけじゃない。おそらく青が好きな相手というのは自分……の可能性が高い。
そう思った瞬間、「わーっ!」と叶太は壁に頭をゴンッと打ち付けた。落ち着け落ち着け……と何度も自分に言い聞かせるが、バクバクする心臓はなかなか落ち着いてくれない。
青本人から直接言われたわけじゃない。でも青が自分を見つめる目や、恐々と触れてくる手。そしてためらいがちにキスしてきた唇を思い返すと、そう考えられずにはいられなかった。
――関係あるんだよ。
先ほどの獲物を捉えた豹のような目を思い出し、ゾクッとする。最初はあんな顔をする青を見たのは初めてだと思った。でも……思えばこれまでも、似たような目でこちらを睨んでくることがあったような気がする。
「……オレが好きって言ったら、どんな顔するんだろ」
ぽつっとこぼした独り言が空気に溶けていく。
ふわふわした気持ちは、その夜、眠りにつくその瞬間まで叶太の中で踊っていた。
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