【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

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10章

10-3

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「私がとっくにフラれてるって言いたいの?」

 低い声で尋ねられ、叶太はごくりと唾を飲んだ。コクッと頷く。

「キツいこと言うようだけど、そう思う」

 恐る恐る、だけど正直に言った。

 詩乃はすぐには答えず、こちらをじっと睨みつけていた。以前は平面的に可愛いと思っていた顔が、立体的に険しいものに変わっていく。目の縁下に光るものが見えたとき、表面ではない本来の詩乃と対峙した気がした。

 長く感じた沈黙を破ったのは、ぽつぽつと降りだした雨粒だ。頬にポタッと重みのある雨粒が一つ落ちたと思ったら、一気に辺りは土砂降りに包まれた。

 急いで近くの外廊下まで走る。あとから続いた詩乃と一緒に、トタン屋根の下に避難する。長年雨風に晒された色褪せた水色のトタン屋根。土砂降りの大雨に叩かれる音が、叶太たちの頭上でけたたましく踊っている。

 雷が轟く灰色の空からふと目を足先にやった瞬間、詩乃が叶太の耳元でそっと囁いた。

「私ね、昨日青くんとキスしちゃった」

 一瞬、何を言われているのか理解できなかった。ドクン、ドクン、ドクン――……とうるさく鳴りだす心臓の音。自身の鼓動に飲み込まれ、雨の音がかき消されていく。

「……は?」

 鈴の音のように頼りない声が、きつく絞られた喉をより強く締め上げる。

「噓だと思ってる? でもごめんね。本当のことなの」

 詩乃は眉尻を下げて、口の前で両手を小さく合わせた。ごめんだなんて、微塵も思っていない顔だ。

「青は……そんなことしない」

「認めたくないんだよね? わかるよ」

 同調するふりをしながらも、詩乃は体操着のズボンのポケットからスマホを出した。

「こういうの私も好きじゃないんだけど、誰かが勝手に撮ってたみたい」

 詩乃が見せてきたスマホの画面。そこに写っていたのは、窓から射し込む夕陽に照らされてオレンジ色に染められた教室の短い動画だ。

 一見何を見せられているのか不明だったが、詩乃が形のいい人差し指と中指で、揺れる画面の中央上をズームしていく。するとそこには、窓側の机に座って目の前の相手を見上げている女子と、その前に立つ男子の後ろ姿があった。

 こちらを向いている女子は詩乃で間違いないだろう。見上げている頬は笑顔に緩み、瞳をうるうるさせていた。対して男子の方に注目して、叶太は絶句した。

「これ、昨日の放課後だよ。椿くんたちと会うちょっと前」

「……っ」

 横で詩乃が説明する中、画面の中の『青』が詩乃の小さな頭を華奢な肩ごと抱きしめていた。信じられない。信じたくない気持ちが、勢いよく崖に叩き落とされる気分だった。

「私、知ってたよ。青くんがずっと好きだった人のこと。でも二番目でいいから付き合ってほしいってお願いしたの。そしたら青くん、お願い聞いてくれたんだぁ」

 詩乃の言葉が頭に入ってこない。認めたくない。そうこうしているうちに、画面の中で二人は頭を傾け合い、キスをしていた。ズームしたことで画質が多少荒かったものの、シルエット的にも構図的にも、その姿はキスをしている以外には見えなかった。

「なん、で……っこれを、オレに……?」

 叶太はガタガタと声を震わせながら、やっとのことで尋ねた。

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